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めお
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リバースフロー - めおの小説 - pixiv
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51,100文字
リバースフロー
降新前提の安→←コからの安コ話になります。
途中安新のようにも見えますが。心は降新です。
ぬるい事件風な展開もあり、全体糖度低めですが最後二人はハッピーエンドです。
いつも以上に妄想とねつ造で溢れています。そして長いです。ご注意ください。

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2018年6月8日 12:58

どんなゲームでも勝ち方より負け方が難しい。

無論、勝ち続けることも難しいが、適度に負ける方がよりテクニックを求められる。 相手に不信感を抱かせない程度に勝ち負けを挟みゲームを進ませるためには、高度な先読み能力や采配力が必要だ。ましてや相手が子供の場合、相手が本気かどうか直感的に見破るため、さらに難易度があがる。

喫茶店ポアロの窓側の席から「やったー! 歩美の勝ちー!!」と可愛らしい声があがった。 「ちぇ。オレだっていいところまでいってたのに」 「あと少しでしたね。元太くん。ボクは今回はいい手札に当たりませんでした」 子供たちがおのおのトランプゲームの勝負の感想を言い合っている中に、一人だけ大人の声が混ざる。 「光彦くんは相手を騙すのが上手だ。元太くんは思い切りがよかったね。でも今の勝負は歩美ちゃんの圧勝だったな」 ちょうど他の客が途切れた間に、安室が子供たちと一緒にゲームに混ざっていたのだ。 「安室の兄ちゃん、もっと上手いかと思ってたら意外にヘタクソだよな!」 「元太くん! そんなこと言ったら失礼ですよ!!」 元太からのツッコミにも安室は笑っている。 「本当に僕よりも君たちのほうが上手だよ。じゃあそろそろ僕は仕事に戻らないと」

「えー! 安室さんもう戻っちゃうの?」 「そうだよ! もう一回くらいつきあえよ!!」 歩美と元太からの誘いにも安室は「お客さんが来るから」と涼しい顔だ。 「お客さん?」 「なに言ってるんですか、安室さん。今は他のお客さんはいないのに…」 子供たちが目を丸くしていると、本当にドアベルが鳴り男性客が二人姿を見せて。 「相手できないお詫びにジュースをもう一杯サービスしてあげるよ」と子供たちに言いながら、安室は男性客を席まで案内した後、コナンが座っているカウンターまで戻ってきた。

「…君はゲームに参加しないのかい? コナンくん」 「相手に主導権を取られた挙句、勝ちを譲られて喜ぶなんてまっぴらゴメンだ」 カウンター席で一人携帯をいじりながらそう呟けば、安室が小さく笑った気配がした。 「いつもは君がやってることだろう?」 「…わざと負けてなんてやらないよ」 「へぇ。そうなんだ」 安室はコナンには何も聞かず、もう飲み終わっていたオレンジジュースのグラスを下げてアイスコーヒーをコナンの前に置いている。 そして子供たちにはオレンジジュースを用意して持っていった。

コナンが幼児化した工藤新一だと、今まで安室には明かしたことはない。 だが毛利小五郎が関わった事件やその他の事件で協力しあってからというもの、もう安室は気が付いているんじゃないかと思うことが時折ある。 彼は以前ほどコナンを子供扱いしない。今でも事件の際には『お手柄だね!コナンくん』とやたらと大袈裟に扱うが、かなりわざとらしい。

ギターや料理もできる器用な男は、ボードゲームだって大した腕前だった。 ついこの前、蘭が帰ってくるまでの暇つぶしに探偵事務所で安室と始めたチェスは、お互い勝ちをすんなりと譲らなかったが最後は結局コナンが勝って終わった。 『すごいね。君は。その年でこんな勝負ができるなんて』 穏やかな顔で笑うその態度が心底憎らしかった。 『安室さん…わざと負けたでしょ』 『そんなことはないよ』 こちらの機嫌を損ねたくないのか知らないが、その子供扱いがたまらなく嫌だった。 …本当に今の自分は子供だというのに。

安室の正体が黒の組織に潜入している公安警察だとわかってから、彼にならコナンの事情を話してもいいとすでに覚悟は決めている。 だが確実に味方どうかの保証はまだないのが現実だった。 彼はベルツリー急行の車中で灰原を捕まえ、組織に連れ帰ろうとしていた。 今はまだ黒羽の協力もあって彼女は死んだものと騙せているが、コナンが新一だと知れた日には、安室は確実に灰原の正体にも気が付くだろう。 潜入スパイだとバレないためには、組織の中での信用度をあげる必要がある。それにはどうしたって手を汚すことが必要だ。刑に問われる犯罪行為も、その任務を遂行中に限り不問に処されると聞いたことがある。 目の前で穏やかに笑う男がこの数年間にどんな環境で暮らし、組織で何をしてきたのか想像もできなかった。

コナンの姿である新一にはこんな姿であっても、こんな姿だからこそ譲れないものがある。 それは多分安室にとっても同じはずで。今の彼の任務にコナンという存在がもしも邪魔なのであれば、彼はきっと容赦しないに違いないのだ。 ただ自分はともかく、灰原まで巻き込むことはできない。 彼女があの薬を作ったことをどれだけ後悔しているか知っている今は、何があっても組織に戻すつもりはなかった。

工藤家に暮らしている赤井にはコナンの事情に勘づかれ、一足先にすべて説明したある。 問題は小五郎や蘭。子供とたちとも交流を深め、コナンの周囲にいつの間にか溶け込んでいる、嘘の上手な安室透の存在だ。 どうしたら安室をうまく自分たちの協力者として納得させるか。それが最近のコナンにとっての課題だった。

「コナンくん」 考えごとをしていたせいか、背後からの声に反応が遅れた。

「…コナンくん?」 「なに? 安室さ……」 「工藤新一くん」 「………え?」 コナンの前に身体を屈め顔を近づけてきた安室に慌てている間に、続けられた名前にしばし固まってしまった。

「…し、新一兄ちゃんがどうかした?」 無理やり明るく笑えば、安室もいつもでの笑顔で首を傾げている。 「最近工藤くんと連絡をとったのかな? 君のところにはよく彼から電話がくるって蘭さんから聞いたから」 「どうしてそんなことを聞くの?」 「ほら。最近京都で目撃情報がたくさん出てただろ? ずっと姿を消していたから気になってたんだ。もう現場に復帰できるのかな?」 安室はなんでもないことのように話しながら、先ほどの客から注文を受けたコーヒーを淹れている。

「…安室さんはさ。新一兄ちゃんに……会いたいの?」 「そりゃ会いたいさ。伝説の高校生探偵なんだろう? 毛利先生よりすごいって話じゃないか。ぜひ一度会って話がしてみたい」 「そうなんだー」 アイスコーヒーをストローでわざと音を立て行儀悪く飲みながら棒読みで返事をすれば、彼が意地悪く笑った気配がした。 「コナンくん。今度電話があったら彼に頼んでみてよ。憧れの工藤くんに会いたいってね」 「えーと。機会があったらね…」 これ以上藪蛇になる前に帰ろうと思い、カウンター席から降りたコナンが子供たちにも帰宅を勧めようと口を開きかけた時、少し前に入ってきた二人連れの男性客の会話が耳に入った。

「…でさ、この前清掃のバイトをしてた時に気味悪いもの見ちまってよ。頭から靴まで黒ずくめの服着た男たちが四人なんだけど」 「別に黒い服くらい、今時誰でも着るじゃねぇか」 「いや違うんだよ。問題は着てる服より去った後でさ。奴らは大きいスーツケースを軽自動車の中にたくさん積んで車で去っていったんだけど。  ちょうどビルの外の花壇を俺が手入れしてた時でさ。何気なく男たちが出ていった隣のビルの入り口の前を通ったら、こう赤い血みたいなものが点々と地面や外階段についててな」 「おいおい。小説かドラマの見すぎじゃねーか? あれだろ? それは泥か何かの汚れでしたってオチだろう?」 身体つきが大きい男が必死に訴えるも、仲間の男性は真剣に取り合ってない。 「それが不思議なんだよ。慌てて警備員を探して一緒に戻ってきたら、もうその痕が残ってなくて」 「ほらやっぱり…それは……」 「ねぇねぇ。おじさん! 黒い服ってさ。お葬式の時着る服なんでしょ! ボク知ってるよ! そこでお葬式でもあったのかなぁ」 ワザとらしく子供特有の甲高い声で会話にはいっていくと、突然現れた子供に当然男性客は困惑しているようだった。

「こら。邪魔したらダメだろう? コナンくん。すみません。この子この前初めて親戚のお葬式を見たところで…黒い服が印象的だったみたいなんです」 すると安室が背後から男性客の前にコーヒーを置きつつ、すかさずフォローをいれた。 「…あ、ああ。そうなのか。だけどな坊主。俺が見たのは葬式じゃないと思うぞ」 「どうして?」 「だって皆目深に帽子を被って、サングラスもしてたからな。あの雰囲気は葬式には見えねーよ」 「その後も続けて掃除のお仕事をされているんですか?」 安室からの質問に男は頷いている。 「ああ。週三回。続けてるよ」 「おじさん。その時以外にもその黒い服の人たち見たことあるの?」 「……いや? 初めてだな。おまけに先週は仕事仲間の女の子が、隣のビルから変な動物の鳴き声が聞こえたとか言い出すし。あのビルは祟られてんじゃないかと思ってな」 「うわー!お化けの話? ボクもお化け見てみたいなー!! それってどこのビルなの? ここの近く?」 大袈裟に好奇心で目を輝かせれば、子供の勢いに押されたのか男は「いや…東都じゃなくて。横浜なんだ。桜木町から少し歩いた場所にある…」と場所を口にし。 「あの輸入業者や、薬品会社の倉庫が多くある場所ですね」と安室が加えた説明を聞いたところで、コナンは子供の仮面のまま礼を述べた。

「ありがとう! おじさん。おもしろい話を聞かせてくれて!」 男性客に愛想よく手を振った後、子供たちに声をかけて店を後にしようとすると「コナンくん。忘れ物だよ」と皆の飲み物代をおごってくれた安室から声を掛けられた。 「え?」 「ほら。これ…」 しゃがみこんだ安室がコナンの手の中に渡してくれたものは、最近ポアロで売りはじめた焼き菓子の袋で、忘れ物でもなんでもない。 手渡しながら「一人で行こうなんて考えてないよね」と囁かれ、にっこりと笑顔を作る。

「大丈夫だよ。安室さん」

こんな話聞いたら。当然行くに決まってるじゃねーか。





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