子どもの前で家族に暴力を振るう心理的虐待「面前DV」の深刻度の高い事案を見極めるため、厚生労働省が、悪化や再発のリスク要因に応じた分類を設けることが29日、同省への取材で分かった。近く有識者らによる検討委員会を設置する方針。リスクを判別しやすくすることで重点対応すべき事案の見落としを防ぎ、児童相談所の負担も軽減する狙い。

全国の児相の虐待対応件数は年々増加し2020年度は約20万5000件。近年は面前DVの対応件数が目立つことから対策を強化する。

検討委では、複数自治体にアンケートやヒアリングを実施してこれまでの事例を分析。家族構成や児相通告頻度、暴力の度合い、子どもの様子、保護者のアルコール依存症の有無といったリスク要因を確認し、児相や警察などの関係機関が対応する際の留意点を整理する。子どもの支援の在り方も含めた報告書を本年度内にまとめる。

面前DVは04年の児童虐待防止法改正で心理的虐待の1つと認められた。子どもにストレスやトラウマ(心的外傷)が生じて日常生活や成長、対人関係に影響が出ると指摘される。

暴力の現場に子どもがいれば、対応した警察などは児相に通告しなければならない。一方で、軽微な夫婦げんかのような事案で子どもへの影響が少ないとみられるケースも一律の対応をしていると、現場の負担が増え、必要な事案に注力できなくなる恐れもある。

リスク判別の結果、専門性が必要ない軽微な事案であれば、市区町村の担当部署が安全確認などの対応をする方法もあり、検討委は児相の負担を減らす新たな枠組みも議論する。

警察庁の統計では、21年に警察が児童虐待の疑いで児相に通告した児童数は10万8059人。うち面前DVは4万5972人に上り、統計で数字を取り始めた12年の約8倍となった。(共同)