First world パターン:救世主補佐
第十七話 空想は知識より重要である。知識には限界があるが、想像力があれば意中のアノコとあんなことやこんなことがぐっへっへっへっへwww…………まあ、所詮空想なんだけどね……はぁ
キンクリやおっさんにされた話を要訳してみる。
・約千年前封印した邪神が復活しそうである。これは聞いた。
・邪神が封印されている場所は、休みながらも馬車で頑張って
飛ばせば、王都から二週間弱ぐらいで着くぐらいの距離らしい。
・偵察隊とやらは転移魔法でその距離をショートカットしたらしい。
しかし、
なんか転移魔法は自分より魔力の高い者を運ぶことができない
とかなんとか。
その時点で私がアウトだし、レベ上げしたノアも正直微妙。
よって馬車での行動は決定事項。
やれやれ、異世界の魔術師は軟弱な。
・具体的にどう復活しそうなのかというと、邪神が封印されている
場所から、瘴気と呼ばれる魔力の禍々しい版みたいなのが
溢れ出していたとのこと。
ちなみに瘴気に触れると、人は発狂し、草木は枯れ、
魔物が凶暴化するとか。
よく無事だったな偵察隊。
・肝心のどうやって再封印するかだが、これがいまいちあやふやである。
千年前の救世主君は自分の魔力を剣に込めて邪神にぶっ刺した
とゆうテンプレな封印の仕方をしたらしいのだが、
いかんせん情報が古い。
三十枚程のオブラートに包まれてはいたが、要訳すると自分で
画策してなんとかしてくれとゆうことらしい。
ふざけんなし。
そういった内容の話が、実にもったいぶって、遠まわしに、長々と話されたわけで、邪神再封印に積極的なノアはともかく、飽きる程勇者的活動をして来た私は、実際飽きていた。
あーこれはあの世界で似たようなことがあったな、とか、この展開はしょっちゅう出くわすなウゼェ、とか、何ィ!?貴様が北斗●拳の継承者だとぅ!?とか、途中からそんなんばっか考えてた。
これ以上あまり目立たないためと、王宮サイドの態度とノアの反応を観察するため、自重と称して黙って話を聞いているつもりだったのだが、私に興味を持ったキンクリがやたらと話を振ってきて鬱陶しいのなんの。
もう手遅れかもしれないが、これ以上頭が回ることを披露して馬鹿を見る気などさらさらない。
キンクリからの質問や振りは、日本人特有の曖昧な返事で適当に受け流した。
その度にキンクリは不満そうな顔をし、おっさんは殺気の籠もった目を向けてきたが。
まあ、そんなわけで。
ノアが真摯な表情で王宮サイドの話に聞き入っている間、私は心底うんざりな顔をしていたのである。
「わかりました。それでは、必要な物はそちらで揃えてもらえるということですね?」
「うむ、あくまでもこちらは“依頼する側”ということになるからな。できる限りの援助はさせてもらおう」
ノアの問いに、相変わらず重厚ぶって答えるキンクリ。
いや、
てゆうか、“依頼する側”とか言っておきながら
ぶっちゃけ恩着せがましい。
あーもう、交通手段と経費だけもらってさっさと出て行こうかな……。
「ありがとうございます」
「当然のことだ。邪神の再封印にて気を付けることだが、やはり道中の瘴気による影響だろう。魔物の凶暴化により、近隣の町や村に被害が出ているとの報告がある」
経費から武器も買うんだよな……もしくは向こうで用意してくれるか……後者かな。
キンクリも乗り気だから、おそらく結構手の込んだ物を渡してくれることだろう。
国宝級の伝説の剣とかだったら少し興味あるな。
割りとそうゆう物にはしょっちゅう出くわしているわけだけど、もし精霊とか宿ってる武器だったら、少し話しておきたいし。
その場合、精霊は女だな。
ノアが男だから、これはお約束とゆうやつだ。
「魔物の凶暴化のように、目に見える問題であればこちらとしても対処のしようはあるが、原因である瘴気をどうにかできなくば、根本的な解決にはならん。魔物の討伐隊を編成し度々派遣してはいるのだが、全てに手が行き届いているわけではなく、さらに瘴気を浴びた魔物は通常よりも遥かに危険だ。討伐隊も無事ではない。人材不足も如実に現れてきており、今は現状維持だけでも手一杯になりつつある」
あー、お腹空いてきたな……。
人間やめてから……正確には「これもう人間の域超えただろ」と認識してから、三ヶ月は何も食べなくても死にはしなくなったことに気付いたが、空腹という感覚は残っている。
あたりめでも食べようか。
ちなみに、ジョンからもらった『今日のあたりめ』とゆう能力は、一日一杯だけあたりめが出せるらしい。
何その無駄スキル。
だがそれがいい。
「先程の説明でも言ったが、人間が瘴気に触れれば、気を狂わせてしまう。魔力を持つ者であれば魔術によりシールドを張ることができるが、その魔術を使える者が限られているのだ。とても被害を受けた地域に派遣できる程ではない」
それにしても暇だなー。
オリジナル昔話でも考えてるか。
昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいました。
「このままでは、邪神を再封印しても被害が深刻になる……とゆうことですか?」
「そういうことになる。と言っても、既に深刻の域に入りつつあるのだが、な……もちろん、救世主一行には瘴気から身を守る術を持つ者を同行させる」
お爺さんとお婆さんは、お爺さんが山に竹を切りに行き、それで籠を編んで街に売りに行き、生計を立てていました。
ある日お爺さんがいつものように山で竹を切りに行くと、そこには黄金に光輝く――
――――伝説の
「わかりました。その同行する魔術師の方は、どんな人なんですか?」
「その人物なのだが……」
「私です」
おお、これはなんとゆうことぢゃっ!
驚いたお爺さんは剣を手に取り、試しに振ってみると、お爺さんの半径十メートル以内にあった竹は、軒並み斬り倒されました。
斬れる……こいつは斬れるぞ!
伝説の剣を手にしたお爺さんは、竹を取る仕事を放棄すると城下へ向かい、そこで悪さをしていた者達を片っ端から斬り伏せました。
悪どい奴らを全て倒したお爺さんは、やがて裏通りの
「!? な……なんでホワイトさんが!?」
「私が父にお願いしたんです。私は瘴気を防ぐ魔術が使えますし、少しでもノアの役に立ちたかったので……」
最早怖いものなしとなったお爺さんは、それはもう悪事を極めました。
着崩した黒いスーツに派手なシャツ。
襟元や手腕には高そうな貴金属。
そして顔には
アジトでは常に美女を侍らし、外では大勢のSPに囲まれて城下を
それが今のお爺さんでした。
「そんな、危険過ぎます!中半かな目的じゃないんですよ!?国王も自分の娘が危険に晒されるって言うのに、何故了承したんですか!」
何ぃ!?金が返せんだとぅ!?なら約束通り娘はもらって行くぞ。
そんな!せめて娘だけは……お許しください!
ならん。その娘を連れて行け!
はっ!
いやああああおとっつぁん!!
おキヨ!やめてくれ!娘を連れて行かないでくれ!おキヨおおお!!
「説得はしたのだが……この子は一度決めると聞かなくてな。どう説得されようとも、信念は揺るぎないそうだ。全ては救世主ノア、そなたの力になるためだと」
その辺におしよ、お主。
!? 誰ぢゃ!?
ふふ……久しぶりじゃのぅ、お爺さんや。
貴様は…………婆さん!?
「そんな……俺のため!?駄目ですホワイトさん。いくらなんでも危険過ぎます!」
「いいえ、私の決心は変わりません」
あの時の私は無力じゃった……伝説の剣を片手に闇に染まり行くお爺さんを、止められなかったのじゃ……。
しかし!今はその力を手に入れた!
今こそ、お爺さん!お主の悪行に終止符を打つ時じゃあああ!!
ふん……舐められたもんぢゃの。
来るが良い。わしのこの
八つ裂きになるのは、お主の方じゃぞお爺さん……!
くくっ、一丁前な口を利きおる……!いざ!
尋常に!
勝負!!
「駄目です。俺は自分の身を守ることに手一杯で、ホワイトさんを守ることができません。俺は……貴女に危険な目には遭って欲しくない……!」
「ノア……ありがとうございます。ですが、私自身が決めたことです。それに私は、自分の身ぐらい自分で守れます」
……くっ、何故当たらんのぢゃ!
ふふふ、遅い、遅いわお爺さんや!
この力は七つの玉で呼び出した龍から、お爺さんを倒すためだけに得た力!
名付けて『日本全国のお爺さんだけを倒す程度の能力』!
な、何ィ!?
闘いはまだ始まったばかりじゃよ、お爺さん!!
「全てをノアに……救世主様にゆだねるのではなく、私は王女としての責務を真っ当しなければなりません。そのために、この力は国民を救うため……そして、ノアのために使いたいのです」
「ホワイトさん……」
そこぢゃあっ!!
!! …………ぐぅっ……!
! 貴様……わざと避けなかったな……!?
ふふ……これでいいのじゃよ……これで……。
お爺さんや、これでお主も、今まで悪事を働き、奪って来た命や、無理矢理引き剥がした人達への罪の重さがわかるじゃろうて……
婆さん……そんなことのために、わざわざ……!
ふっ……最期まで……愛しておったよ……お爺……さん……
婆さ―――――――――ん!!!
「……わかりました。そこまで固い決心なら、俺はもう何も言いません。でも、これだけは約束してください。俺が危険だと判断したら、すぐその場から離れること」
「ええ、ノアの足を引っ張りたくはありませんから。その時は大人しく引き下がります」
とでも言うと思ったか馬鹿者めぇっ!!
何ぃ!?自爆だと!?
ふっはははは!!死なば諸共じゃ!死ねぃクソ爺ぃ!!
ば……馬鹿なああああああああああ!!
「そうしてもらえると助かります。……まだまだ頼りないですけど、精一杯、ホワイトさんのこと守りますから」
「ふふ、期待していますね」
こうして、お婆さんの捨て身の行動によりお爺さんは倒され、城下には平和が取り戻されたのでした。
そしてとある山奥。百二十年に一度しか咲かない、竹の花が咲き乱れていました。
まるで、あの世でようやく再び一緒になれた、年老いたある夫婦を祝福しているかのように……。
~Fin~
「ええ話や……グスッ」
「……お前、今絶対関係ないこと考えてただろ」
ノアの言葉に現実に引き戻されると、心底胡散臭そうな表情と目が合った。
この感動ストーリーを関係ないとは失礼な。
「おま、言いがかりはよせ。ちゃんと聞いてたぞ?」
「この短い付き合いでの判断だけど、瑠璃が今のやりとりで感動するとは思えない」
「チッ、バレたか。演出のための嘘泣きって発想はなかったのかよ」
「それはそれでどうかと思うけど……で、話は聞いてなかったんだな?」
「だから聞いてたって。白さんがパーティーメンバーに加わったんだろ?」
「なんだ、ちゃんと聞いてたんだ……そうゆうところに抜かりがないのはいいけど、なんだかなぁ」
「あの……ルリは何故泣いているのですか?」
突然涙ぐんだ私に驚いたのか、白さんがおろおろしながら訊いてくる。
ふっ、なら話してしんぜよう。この感動の物語を!
「ああ、あるところに一組の老夫婦がいてな……」
「なんと……心を打たれる物語であろうか……」
「くっ……このような奴の話に涙するとは……」
「なんてことだ……これは世界に残る傑作だろう……」
「あぁ……爺ちゃんと婆ちゃん最近会ってねぇなぁ……元気にしてるかなぁ……」
「うぅ……グスッ……いいお話です……私感動しました!」
「どこが!!?なぁ、今の話どこに感動要素あった!?なぁ!?」
応接間に感動の嵐が(ノア以外に)吹き荒れた正午だった。
元ネタの紹介
・北斗●拳
説明不要かもしれませんね。
某世紀末な漫画の技です。
・七つの玉で呼び出した龍
こちらも説明不要かもしれませんね。
某有名漫画です。龍玉(←英訳)です。
rsk(らすく)さんからご指摘いただきました。
・
「Fate」というゲームが元ネタだそうで。
作者はこのゲームをヒロインの名前で認識していたorz
・~程度の能力
某有名弾幕ゲーの能力の名前の最後には、必ずこれが付きます。
私としたことが、書き忘れとは……。
rsk(らすく)さん、ありがとうございました!