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観賞者で干渉者 作者:鷹村柚希

First world パターン:救世主補佐

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第十三話 薬も過ぎれば毒となる。愛も過ぎ去れば毒男となる

 


蘇芳「てか、ホーニッヒってなんなの」


鷹村「ああ、どっかで説明入れようと思ってるんだけど、どこで入れようか……てゆうか、あんたはホー↑ニッヒ↓って発音するんだね。私ホー↓ニッヒ↑だと思ってた」


蘇「ふーん……ねぇ、ポ●キー取って」


鷹「ほい(甘納豆渡す)」


蘇「(゜д゜)」



 



吾輩は瑠璃である。名前は今名乗った。

どこで生まれたかと言うと、異世界だ。

何でも目に痛い程真っ白な所で神をフルボッコにして居た事丈は記憶して居る。

吾輩はこゝで始めて脇役といふ役所(もの)を得た。


かくして吾輩は遂に脇役(これ)を自分の立ち位置(ポジション)()める事にしたのである。





そんなわけで、大河内瑠璃です。はい。



ノアが目覚めてから数時間後、現在私はノアと白さんと共に優雅に紅茶を(あお)っている。


……いや、呷ったら優雅ではないか。


ちなみに側にはメイドさんが待機していて、彼女の煎れる紅茶がまた美味いこと美味いこと。


トリップ先では割と権力者のお近付きになることが多かったからな。

嗜好品や料理の質に関しては、そこそこ舌が利くつもりである。



そしてノアにも訊かれたのだが、私は今城に提供された服を着ている。


何日も同じ服を着ているのもあれだったので、救世主補佐ということで従者の服を提供されたのだが、これが中々動き易くて使い勝手がいい。


ノアも同様に城から提供された服を着ている。


どのような服装かと言うと、なんとゆうか……えーと、どう説明したらいいのかな?これは。


いや、別におかしな格好をしてるわけじゃないんだ。

強いて言うのなら、中世ヨーロッパの貴族みたいなのを動き易くシンプルにして、かつセンスを良くしたような感じなんだけど……。

この手の服装はいつになっても表現に困る。


ちなみに白さんは初日からずっとシンプルなドレスです。

色は毎回変わりますが、だいたいパステルな色です。今日はクリーム色。

詳細は面倒だから(はぶ)く。



そんなわけで、優雅にティータイムです。まる。



邪神の再封印云々に関してだが、救世主(ノア)の大事を取って明日ということになった。


ノアが意識不明だった二日間、私は宣言通り城の中を探索しまくった。


まとまった時間があったお陰で、この城の隠し部屋と隠し通路はほぼ全て把握した。

某弾幕ゲーの酒好きの鬼の能力で霧と化して探したため、王族用の部屋の隠し通路までばっちりだ。

霧と化したことで空気の流れがわかり、案外早く隠し通路が見付けられたのは嬉しい誤算だったが。


ついでに言うとジョンからもらった『二次元力(と呼ぶことにする。ちなみに『にじげんりょく』ではなく『にじげんりき』と読む)』の『主人公のデフォルト(マッピング能力)』により、この城の見取り図はしっかり頭のなかにインプットされているのだ。

その辺も抜かりないぞ。



まあとにかく、今は放●後ティータイム……じゃない、三人でお紅茶を(たしな)んでいるのですよ。


しつこいようだけど。



「うーまーいーぞー!」


「出すなよ!?口から光線は出すなよ!?」


「ちっ」


「だから舌打ちするなよ!とゆうかやっぱりできるのか!」


横でノアがうるさくやってるが、そんなん知らん。


ちなみに、私にかかれば口から光線など『二次元力』がなくとも容易い。


ただし魔法は尻からd嘘です。


「実際美味しいんだよ。純粋に褒めて悪いか」


「褒めるのは悪くない。光線を出すのが悪いんだ」


そうは言っても、実際このメイドさんの煎れるお茶は美味しいのだ。


それに、私は二桁も異世界に飛ばされたりしているが、このお茶自体も初めて飲む味で、中々新鮮である。


白さんはそんな私達のやり取りを見て苦笑していた。


「彼女はメイド一紅茶を煎れるのが上手ですからね。私もよくお願いしてるんです」


「そーなのかー。森さん、おかわり」


「私はモリではないのですが……かしこまりました」


そう言って、メイドの森さん(私命名)が空になったカップを受け取る。


ちなみに何故森さんかと言うと、似てるのだ、閉鎖空間で赤玉と化して巨人と戦う某メイドに。


顔立ちといい二括りにされた黄褐色の髪といい、どう見ても森さんです。本当にありがとうございました。


「シェンナ、私にもおかわりをください」


「かしこまりました、ホワイト様。……あ、もうお砂糖がありませんね」


森さん(本名シェンナさん)はティーセットを乗せてきたワゴンから、両手に収まるくらいの箱を取り出す。


そしてメモ紙を取り出し何やら書き込むと、箱に入れて蓋を閉めた。


あー、これはあれかな、魔法具の(たぐい)かな。


きっかり十秒後、森さんが再び蓋を開けると、箱の中には新しいシュガーポッドが入っていた。

ビンゴ。


「すごい……」


ノアが感嘆の声を上げる。


そうか、トリップ初心者にはこの程度でも驚きなんだなぁ。


パト●ッシュ、私はもう慣れたよ。


「ホワイトさん、あれはなんですか?」


「あれは転送装置の一つで、あまり大きい物だと無理なんですが、箱に物を入れて蓋を閉めると、対になっている箱に中の物が届くようになっているんです」


「へぇ、そうなんですか……どんな仕組みなんだろう」


「……中に誰もいませんよ」


「わかってるから!いたら怖いから!!」


「? 誰かいると問題あるんですか?」


「ああ……あるところに、一人の男の子と二人の女の子がいてな……」


「やめろ!話すな!純情なホワイトさんにあんなドロドロした話聞かせるな!」


そんなやり取りをいている間にも、森さんは表情一つ崩さず紅茶を煎れている。


うん。メイドの鏡だね。


「そう言えばさ」


「どうかしたのか?」


「いや、『ホワイトさん』って『マ●ルダさん』に似てるよね(イントネーションが)」


「どこが!?」


「紅茶が入りました」


やや会話を断ち切るような形で、森さんが紅茶のおかわりをテーブルに置いた。


「ノア様もどうぞ」


「あ、ありがとうございます」


ノアがお礼を言うと、森さんはにっこりと微笑みを浮かべた。


営業スマイルでないことを祈る。


私は新しい紅茶に二つ程角砂糖を放り込むと、他の二人より先にカップに口を付けた。


紅茶の上品な香りが、口の中いっぱいに広がる。



…………ん?



ふと、口に、舌に、食道に、胃に、何か引っかかりを感じた。


その違和感は一瞬で確信に変わり、私は咄嗟に手の中の空気を圧縮し、コインでするように力強く親指で弾く。




Wait(待て)!!」




私が飛ばした空気の塊は、丁度ノアが砂糖を取り出そうとしていたシュガーポットに当たり、派手な音を立てて吹き飛ばした。


哀れシュガーポット君は壁まで吹き飛ばされ、ぶつかって中身もろとも粉々に砕け散る。


あれだぞ、私だからできる芸当だかんな。良い子は真似すんなよ。


ちなみになんでシュガーポットを飛ばしたのかと言うと、ティーカップだと大惨事になるからだ。

とにかく、この場の面子の気が引ければよかったからね。


……え?やり過ぎ?こまけぇこたぁいいんだよ!!


案の定、他三人は突然の私の行動が理解できず、呆然としていた。


それ以上誰かが何かする前に、今の音を聞きつけてか、部屋の外で護衛のため待機していた騎士さん方(一人は初対面で邪神呼ばわりしてくれた人)が部屋に飛び込んで来た。


「どうされましたか!?」


「今の音は一体!?」


私は騎士さん方を無視し、未だに呆然としている二人に声をかける。


「二人共、その紅茶飲むなよ。毒入ってる可能性がある」


「毒!?」


驚愕する一同を尻目に、私はもう一度自分のティーカップを手に取る。


一口だけ口に含み、じっくり味わうように舌の上で転がす。


それを見たノアが、ぎょっとして私のカップを持っている方の腕を掴んできた。


「なっ……!?瑠璃!何やって……」



ごっくん。



「ちょっとおおおおおおおおおおおおお!?」


「うっせー、一々騒ぐな。私は毒じゃ死なん」


「そうなのか!?い、いや、そうは言っても!」


「うーん、多分神経毒だな。テトロドトキシン……俗に言う河豚毒みたいな。致死量かどうかはちょい微妙だが、命が救かったとしても後遺症が残る程度の量だ」


「……そこまでわかるのか?」


「まあな。ただ、紅茶そのものに入れられたのか、カップに塗られていたのか、そこまでは知らん」


「いや、それは別に知らなくても……てゆうか、本当に大丈夫なのか?」


「あたぼうよ。伊達に人間諦めてないわ」


「諦めるなよ……」


「俺は人間をやめたぞ!ノアーーーーッ!!」


「断言するなよ!!」


突っ込みを入れるノアの手を剥がし、私はテーブルにカップを戻した。


そんなやり取りをしている間に、騎士さん方はと言うと、腰に差している剣を抜いて森さんに突き付けていた。


「……毒を盛ったのはお前だな」


その剣先を見て、森さんが青ざめて首を振る。


それに慌てたのはノアと白さんだった。


「待ってください!まだ彼女が犯人と決まったわけじゃないでしょう!?」


「そ、そうです!シェンナがこんなことするはずがありません!」


ほう、森さんは中々信頼されているのか。


私はそんな彼らの感動的なやり取りをガン無視して、粉々になったシュガーポット君のところまで行く。


そして入れ物同様粉々になった角砂糖を指先で(つつ)き、指に付いた白い粉を舐め取る。


「ペロ……これは青酸カリ!!」


「嘘つけ!今自分で神経毒って言っただろ!」


相手が私でなければもっと他に気にするべきことがあるだろうノアの突っ込みを聞きながら、私は辛うじて原型を留めていた角砂糖をつまみ上げ、(かじ)った。


「カリ……これは青酸ペロ!!」


「青酸ペロってなんだ青酸ペロって!!てゆうか今はそんなことをしてる場合じゃないだろ!何が何でもボケたいのか!!」


ノアがキレかかってきたので、私は角砂糖をモゴモゴと租借しながら、ボケるのをやめて森さんに向き直った。


「森さんや。そっちの空のシュガーポットを選んだのは君かね」


「え……?いえ……」


森さんは、私の問いの意図に首を傾げながらも答える。


「いつもの場所になかったものですから……他のメイドに訊いて、受け取りました」


「ふむ」


私は森さんの顔をじっと見つめる。


森さんの方は困ったような、怯えたような顔で私を見返していた。


……うん、森さんも中々美人だ。家庭的な女性として箔が付きそうな感じ。


なんとゆうか、ぶりっことかセクシー系とかそうゆう捻りなしでの、普通にちょっと照れた感じで「お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……私?」といったシチュエーションがあると、実に素朴かつストレートで、いい。実にいい。


そりゃ、猫耳メイドだとかロリだとかムチムチボインのお姉さんとか、そうゆうのももちろんいいさ。

だが、わかるだろ?

そういった無駄な装飾(設定)などなく、素材をそのまま生かした素朴な味わい。飾り気のない、落ち着いた控え目な雰囲気。そして、二次元(他の娘)とはどこか外れたような現実感。


何が言いたいのかとゆうと、二次元でしか有り得ないような娘もいいが、どこか現実(リアル)に近いような、突飛な特徴のないキャラクターも、充分過ぎる程萌えだと思うんだ。



……さて、少々話が脱線してしまったが、本題に入ろう。





「騎士さん、剣下ろしな。森さん、犯人じゃないよ」







本格的……本格的ってなんだっけ……orz


シェンナ=シェン土のこと。黄褐色をしている。

つまりキャラクターの名前は髪の色で決めています。

余談ですが、我が家には何故か色の辞典のような物があり、大変重宝しております。



元ネタの紹介


・毒男

独身男性の略。


・吾輩は猫である

これは言わずもがな。

夏目漱石の有名な著書です。


・某弾幕ゲーの酒好きの鬼

東●プロジェクトの某鬼のことです。


・放●後ティータイム

某軽音漫画で主人公達が結成するバンドの名前。


・うーまーいーぞー!

某グルメ漫画のリアクションの一つ。

口から光線を出す他にも、津波の中を泳いだり、巨大化して大阪城を破壊したり、車椅子で病院の階段を駆け上がったりするそうです。

ちなみに瑠璃ちゃんは全部できます。


・ただし魔法は尻から出る

魔法陣グ●グルに出てきたセリフ。


・そーなのかー

某弾幕ゲームの闇の妖怪のセリフ。


・森さん

閉鎖空間で赤玉と化して巨人と戦う某メイドです。

ハ●ヒです。


・パト●ッシュ、僕はもう疲れたよ

これも言わずもがな。

某フランドル地方の犬の主人公のセリフ。


・中に誰もいませんよ

原作が恋愛ゲームの某アニメの最終回に言われたセリフ。

怖いです。


・マ●ルダさん

初代ガ●ダムの登場人物。


・こまけぇこたぁいいんだよ!!

「マー●ーライセンス牙 & ブラックエンジェルズ」という漫画が元ネタという説が有力らしい。


・おれは人間をやめるぞ!ジョジョーーーーッ!!

某有名漫画のDI●のセリフ。


・「ペロ・・・これは青酸カリ!!」

某バーローが七巻で床に落ちている粉を舐めて麻薬を発見するシーンを改変したネタの一つ。


・「カリ・・・これは青酸ペロ!!」

悠さんからご指摘いただきました。

2chが元ネタだそうです。

悠さん、ありがとうございました!



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