First world パターン:救世主補佐
第十一話 賢者はすぐに許す。時の価値を知っているから……いや、その賢者じゃなくて
前話の最初の方で、無意識に「変身魔女っ子」という表記をしていたことを蘇芳(同じIDで投稿している同居人)に指摘され、思わず自分の年齢を顧みてしまった昨日。
今は「魔法少女」ですもんね。
そしておそらく連日投稿はここでストップです。
ほぼ丸一日かけて書いているので、いくら春休みでニート生活やってるとは言え生活に支障がでます故……
いつも楽しみにしてくださっている方、申し訳ありません。
ですが、できる限り更新していこうと思います。
「ノア!」
私が手を貸してノアを立たせていると、白い王女サマが蒼白な顔で駆けて来た。
後ろにはなんか爺やっぽい人やメイドさんを数人わらわらと引き連れていて、なんか「お待ちくださいホワイト様!」とか叫んでるのを丸っと無視している。
おいおい、老体に鞭打たせるなよ。爺さん死にそうな顔してるぞ。
「ノア!大丈夫ですか!?怪我は!」
うわ、うっさ。(酷い)
声でかいよ白い人。
「え、ああ、大丈夫ですよ」
勢いに気圧されながらノアが答えると、白い人は私達のいる場所まで辿り着き、そのままノアにすがり付いた。
「本当に!?怪我はないんですね!?」
疑うんならすがり付くなよ!本当は怪我してたらどうするんだよ!
まあ、模擬戦中は最後以外こっちは一切攻撃してないし、魔力のシールドは確実だから、かすり傷一つないんだけどね。
あ、私以外の模擬戦では知らんよ?
「ありませんよ。本当に大丈夫ですから、落ち着いてください」
そうだそうだ、さっさと落ち着け。
思っても口には出さないけど。
できるだけノアと王女サマのフラグ建設を邪魔したくないのだ。
最終的には元の世界に帰るため、恋人を作ることはあまりオススメできないが、せっかくの異世界トリップである。それぐらいのおいしいイベントがあっても罰は当たらないだろう。
ちなみにホワイトちゃん(ここはあえてこの呼び方)は、何度も言うが本当に可愛い。
名前の通り白くて長い髪は艶があってシルバーに輝き、緑色の宝石のような瞳はくりくりの睫毛に縁取られ、ふっくらした輪郭は幼さを残しつつも、穏やかな雰囲気を
……しかし、あちこち飛び回って美形や美人さんを見まくっていたせいで耐性がついて、美人さんをどう言語表現すればいいのかよくわからなくなってきてるな。
今の表現でちゃんと伝わっただろうか?
「……本当ですか?」
「本当ですよ」
「本当に?」
「本当に本当です」
「よかった……」
王女サマはホッと息を吐くと、全身の緊張を解いた。
ぬぅ、そこまで私が信用できんか。そりゃ信用できんだろうな。
「……訓練場でお二人が闘っていると聞いて来てみれば……なんて闘い方をするんですか!怪我でもしたらどうするんです!あなたは救世主なのですよ!?」
あんな闘い方とは、おそらく周りのものを吹き飛ばしたり地割れを起こしたりした時のことだろう。
ちなみに王女サマはノアが切なさ乱れ打ち……連撃を繰り広げたあたりからいました。
その時は一人だったけど。
そこそこ離れてたし、試合の妨げになるから言わなかったけどね。
……しかし、「救世主なのですよ」ときたか。
王女サマはまだいまいちノアのことを、救世主、つまり正義のヒーロー的な目でしか見れていないようだな。
まあ、昨日の今日だし、仕方ないか。フラグ建設の道のりは長い。
てゆうか王女サマ、ノア以外眼中にないな。
後ろで爺さんが死にかけてて「衛生兵ーー!」とか叫ばれてるのに気付いてないし、あんなノアの馬鹿みたいな一撃を喰らった私への心配はなしですか、そうですか。
別にいらんけど。
しかしまあ、フラグはまだまだともなると、あんまり遠慮して下がってる必要はないな。
ノアもあんまり慣れてない人相手で、困ってるし。
「まあまあ白さんや、その辺にしてやっておくれでないかえ」
「誰が白さんですか!そしてあなたはどこの人ですか!」
とりあえずこの場を和ませようとしたら、突っ込みののち、白い人にキッと睨まれた。
「大体あなたも!もっと考えて行動してください!彼が邪神再封印の前に取り返しの付かない大怪我をしたらどうするんですか!?ちゃんと手加減してください!」
_, ._
( ゜ Д゜) !?
おそらく顔に出ていたのだろう。ノアが顔を背けて小刻みに震えている。
昔から友人からは「瑠璃は顔文字まんまの顔するよね(笑)」と言われてたからな。
……畜生、笑いやがって。
だがそんなことはどうでもいい。この女、今なんつった?
「手加減しろ」だと?あんた、救世主を支援する側だろ。それ、本気で言ってんのか。
成長中の
攻撃なんぞ一切せず、怪我しないようシールド張ってやって、レベルも三十ぐらい上げてやって、命の危機に関わる慢心砕いてやって、「手加減しろ」!?
不用意に過保護な扱いして、それがどんな結果を呼ぶのかわかってねぇのかよ!
ふざけんな!!
しかし王女サマはそんな私の気持ちなど露知らず。検討外れにノアの心配なんぞをしている。
「大丈夫ですかノア!?やっぱりどこか怪我でも!?」
「い、いや、違……」
ノアが笑いを
そして、固まった。
おそらく、彼には私の背後に某管理局の魔王を見ているのだろう。
そして私は、ここにきて一番の、満面の笑み。
「少し頭……冷やそうか?」
「ま、待て!落ち着け!笑ったのは悪かったから!」
「違ぇーよ」
私が怒ってんのはその話じゃない。
私は、わけがわからないと言った風に私とノアを交互に見る白いのに、にっこりと笑顔を向ける。
「なあ王女さんよ。私は手加減したよ?攻撃なんて最後に魔封じかけて足引っ掛けたの以外一切してないし、転がってった時もシールドかけてノアが怪我しないように、した、よ?」
語尾が、怒りで僅かに振れた。
ノアは私の怒気に圧されたのか、先程とは別の理由で細かく震えている。
王女さんも若干圧されたようだが、鈍感なのかそうでないのか、なおも食い下がろうとしない。
「で、ですが!もっと、安全な方法があったと思います!」
「…………ハッ」
押さえ切れず、蔑むような失笑が零れる。
「貴様!王女陛下になんという態度を!」
「…………あぁ?」
騎士団員の一人が威勢良く突っかかってきたが、先程の闘いを見ていたためだろう。
凄みを利かせて睨みつけると、あっさり黙り込んだ。
邪魔がいなくなったところで、私は王女さんに向き直る。
「私が自身が手加減したことを認めた上で、あえて言わせてもらう。手加減というのは、相手の実力を侮るってことだ……それは、戦士に対して侮辱になると思わないか?」
ああ、確かに私は手加減したさ。
だがこの場合、それは仕方ないだろう?本気を出せばノアは死ぬ。
それに、手加減の程度は充分加減した。
怪我をさせない程度に、ノアが全力で闘えるような加減で闘った。
侮辱、という言葉に反応してか、王女さんが一瞬言葉に詰まり、なおも反論する。
「なら!あなたの行動もノアを侮辱したことになります!」
「ああ、そう取られても仕方ないだろうな。けどな、これは第三者が言っていいこっちゃないんだよ」
私は、ピッと王女さんの横にいるノアを指差す。
「もしも私が手加減したせいでノアに負けていたら、それは私のせいだ。相手を侮ったツケは、ちゃんと本人に返ってくる。だが今回は私が勝った。この場合、相手を侮ったことにはならない。何故なら、実際に相手が手加減でも事足りる実力だったからだ。だが
本当は味方だなんて言いたかないんだがね!
数分前、ノアにこいつのフラグ立てさせようとしていたことに、本気で後悔し始めた。
「そもそも戦場に安全な方法なんざあるか。あんたは味方攻めてる敵陣のド真ん中へ行って『もっと安全な戦い方をしなさい』とでも言うのか?あんたがしてんのは心配じゃない、ただの偽善だろ。救世主に気を使ってる自分に酔いたいだけだろ。戦いのことを何も知らないド素人が、知ったような口を利くな」
私がそう吐き捨てると、王女さんは目に涙を溜めてふるふると震えていた。
ああ、駄目だ、本気で腹が立つ。
今回はノアがいる手前、あまり後ろ盾の神経を逆撫でするようなことはしたくなかったが、私の怒りは収まらなかった。
「瑠璃、言い過ぎだ。相手の気づかいに、そんな言い方は良くない」
「引っ込んでろ、森本レ●」
「森本●オ!?名字から先に弄る人始めて見た!!」
……ノアの突っ込み聞いたら少し落ち着いたな。
今日の大河内さんは、ちょっとばかしバイオレンスですよぉ?(言葉の暴力的な意味で)
「…………はぁ」
私は肺を半分以上空にするような溜め息をつく。
「……なんかもう、言う気失せた」
「引っ込んでろとか言っておいて!?」
もう言いたいこと言ったしな。
つかの間の賢者t……冷静になる。
ノアの突っ込みには、沈静、リラックス等の効能があります。
言ったことに後悔はしていない。王女サマのした発言は、身の程知らずもいいところだ。
しかし、あれだけ言っといてなんだが、王女サマの優しさは嘘偽りではないとも思う。
だが、箱入りなのか己の無知さ加減と、王族故のある種の遠慮のなさが、その優しさを悪い方向に発揮させていた。
これはどうしたもんかなぁ……。
これがどうにかなりゃ、ノアのフラグ相手に丁度いいんだけどなぁ……。
私の思考は既に切り替わっていた。
もう先程の怒りなど、念頭にない。
友人からは、「瑠璃って怒るだけ怒って気が済んだら、あっさり元に戻るよね。怒らせた方は申し訳なくてギクシャクするのに、当のあんたはケロッとしてるんだもん」とか言われたっけ……。
もう……その友達にも会えないんだよなぁ。
ふとしたことを思い出して、この場の空気にも関わらず、柄にも無くセンチメンタルな気分になる。
だから、ノアがいきなり殴りかかってきたことに気付かなかった。
「! ……ッうっはーぉ!危ねぇなおい!」
それでも咄嗟に身を捻って避ける。お陰で変な声が出たが。
てか、いきなりどうしたんだよこいつ!?
「瑠璃。俺ともう一度闘え」
「ちょ、どしたの、落ち着けって!」
「俺は落ち着いている」
「それは落ち着いていない人のセリフだ!」
言っている間にも、ノアは次々と拳を放ってくる。
私が全部避けているため、シャドウボクシングみたくなっているが。
「これは俺のせいだ。俺に力がないばっかりに、ホワイトさんを傷付け、瑠璃にあんなことを言わせた。全部俺のせいだ。だから、俺と闘え!闘って、俺はもっと強くなりたい!!」
「はぁ!?あんた何言ってんの!?これはあんたのせいじゃないし、私と王女さんの性格上、いずれはこうなった!そもそもあんた、私がギリギリのタイミングでクローズかけたから気付いてないだろうけど、魔力が枯渇寸前なんだよ!?闘える状態じゃないって!!」
予想だにしなかったノアの行動に、知らず声を張り上げる。
ああ、真っ直ぐ過ぎる人間がここまで面倒だとは思わなかった!
「問答無用!!」
先程と同様、ノアが光輝く魔力をまとう。
「ノア!」
王女サマが叫んだがノアは止まらず、神速とも思われる速度で拳を突き上げる。
その拳は、私には届かなかった。
シュワッ……と、ノアがまとっていた魔力が消滅する。
今にも殴りかかろうとしていた影がグラリと傾き、間近にいた私は、その身体を抱き止める。
そっと顔を覗き込むと、その瞼は閉じられていた。
「魔力切れ。……ったく、言わんこっちゃない」
私は、今まで介入せず私達のやり取りを見ていた取り巻きに目を向ける。
「医務室どこ?こいつ連れてくから」
今回はちょいシリアス風味。
瑠璃ちゃんはお怒りのようです。
ちなみに、ノア君は瑠璃ちゃんと闘ってレベルが30ぐらい上がったので、Lv70ぐらいになりました。
パネェ。
あれ……駆けはどうなった(汗
元ネタの紹介
・少し頭冷やそうか?
某管理局の魔王、もしくは白い悪魔のセリフ。
・森本レ●
「おわかりいただけただろうか……」の人。
・今日の上条さんは、ちょっとばかしバイオレンスですよぉ?
インなんとかさんのラノベの説教の長い主人公のセリフ。
・賢者タイム
まあ……その……知らないなら知らないままのあなたでいてください。