プロローグ
第三話 怪物と戦う者は自分が怪物となってしまわないよう注意しなければいけない、って言うけどこりゃもう手遅れだろ
「…………え?」
私の指の先で、にーさんはポカーンとしていた。
だがそんなことはお構いなしだ。
今こそ私のトリップ生活脱却の時!
「いーい?一回しか言わないわけでもないけど、よく聞きなさい」
にーさんがぎこちなく頷くのを確認すると、私はにーさんに向けていた人差し指をピンと上に向ける。
「まず、救世主とやらは別の人に頼みなさい。殺しちゃ駄目よ。ちゃんと、家に帰れる状態で
「し、しかし……生身の人間に来てもらうのは……」
「そんなの、死なない程度の事故にでも遭わせて昏睡状態にして、幽体離脱させて連れてくればいいじゃない」
「な、なるほど……!」
なるほどってあんた……。
もしかしてこいつ馬鹿なのか?
そして私はこいつが馬鹿なせいで死ぬ破目になったのか?
馬鹿なの?死ぬの?(私が)
「……殺さずに連れて来れるんじゃねぇかよ」
「…………ごめんなさい」
思いっきり睨みつけると、にーさんは可哀相なほどしゅんとした。
それにしても、落ち着いて見てみるとにーさんは中々イケメンだった。
イケメンがボロボロの姿で涙目になっている姿は、中々背徳心を刺激されてゾクゾクしたが、これ以上は流石にアブノーマルなため眼福とだけ言っておこう。
ああそうとも、私はドSさ!
こんな生活、ドSかドМでもなきゃやってらんないよ!
「まーいいや!よくないけど!それじゃ次ね」
私は立てている指を二本に増やす。
「今までトリップした時、そこの神様から事前に主人公補正とゆうか、能力をもらったりすることもあるんだよね。それを要求する」
ちなみに、私は現段階で主人公補正により、言語自動翻訳機能と勇者レベル以上の身体能力と魔王レベル以上の魔力を所持している。
一般的な主人公なら、これだけの力を持っていれば充分過ぎる程充分なのだが、生憎数多の世界を駆け巡った私は、これでは満足しない。
私がにーさんに要求したのは、以下のことだった。
・トリップ体質をなんとかして。
・知識内にある能力全て(主に二次元)を使用できるようにして。
・たまに伝説の賢者的なのに正体見抜かれるんだけど、
見抜かれないようにして。むしろ逆に見抜けるようにして。
・年齢、性別、髪や目の色など、肉体を好きにいじれるようにしてくれ。
・不死とは言わんが、超回復能力をくれ。それこそ不死レベルの。
・やることやったら旅に出たいから、異世界を渡る力くれ。
・今日のあたりめ。
「こ、こんなにですか?」
目に見えてうろたえるにーさんに、私はにっこりと笑いかけた。
「ほほう。おぬし、できぬと申すか?」(野太い声で)
「その口調は一体…………やらせていただきます」
私の笑顔のプレッシャーに負けたのか、ツッコミかけたにーさんはしおらしく頷いた。
「ですが……もしよろしければ、何故このような能力を?」
本当に随分としおらしくなったね、にーさん。
最初は「あ、神だぁ」って感じだったのに、今やすっかりただの可哀相なお兄さんだよ。
「神だぁ」もどうかとは思うけどさ。
「……ま、いいけど。まず最初の要求は特に言う必要ないよね?もうこれ以上振り回されたくないもの。二つ目の能力だけど、私これだけ異世界飛び回って魔法とか使ってるのに、未だに二次元の魔法とか使えないんだよね」
そうなのだ。
異世界トリップでしかもチートレベルの能力を所持しているが、漫画やゲームの特殊能力を使えるようになることは、飽きるほどトリップをしまくった私にとっても、未だ憧れの境地でしかないのだ。
私もオタクの端くれである。
いつか二次元の能力を使えるようになることが、トリップ生活でのささやかな目標だったりする。
だって使いたいじゃん!カ●ハメ派とかザ・ワー●ドとか!!
「で、三つ目だけど、あれ本当にウザイんだよね。これだけトリップしてる身ともなればなおさら。なんかたまに人間性について説いてきたりもするんだけど、私の何がわかるんだっつーの。だから逆に見抜けるようになりたい」
「はあ……そういうものなのですか?」
「そうだよ。それから四つ目。さっきも言った通り、私は脇役でありたいの。もう主役はまっぴら。そうゆうのは似合う人がやればいいと思う。だから、目立たない格好とかに変装したいの。いくつもID持って、裏での暗躍とかやってみたいしね」
あと、にーさんには言わないが、年齢まで好きにできるということは、ある意味不老になったも同じこと。
でもただの不老じゃ面白くないから、変装(?)能力をプラス。
「五つ目。そう簡単に死にたくないし、死ぬ気もない。痛いのも嫌。でも不死ってわけじゃない。あくまで不死
「そうですか……では、六項目目の『やることやったら』とはどういう意味ですか?」
「ああ、あのね?最初はにーさんの世界とやらに行ってあげる。救世主補佐?みたいな形でね」
私の言葉に、にーさんは今までのしゅんとした様子から一転。
一気にテンションを上げ、キラキラした目で私を見つめてきた。
「で、では!新たに召喚される者と共に世界を救ってくださるのですね!」
「ちげーよヴォケ、誰がてめーの世界なんぞ救うかヴォケ。勘違いすんなヴォケ。重ねてもいっちょヴォケ」
持ち直したにーさんを即効でこき下ろす。
再びにーさんはしゅんとなった。
「あのね、これでも私の代わりに召喚される破目になった人には悪いと思ってるし、かと言って私は何が何でも
「ツンデレとは何かわかりませんが……私の世界を救う助けとなってくださるのでしたら、有難いことです」
「素直でよろしい。で、その世界でやること終わったら、いろんな世界で最強の脇役になる旅に出るから、異世界を渡る力が欲しい」
「は、はあ……では、最後の『今日のあたりめ』というのは?」
「ああそれ?ノリ」
「海苔?」
「ちゃう。その場のノリ。丁度六項目だったもんで」
「はあ……?」
ちぇっ。通じないか。使えん奴め。
まあ、テレビなんてないところだし、当たり前なんだけどね。
「さて、私の言いたいことはこれくらいかな。さっきも言った通り、新しく召喚されて来る人には、ちゃんといいように取り計らってあげるんだよ?ちゃんと頭下げてお願いすること!」
「は、はい!」
うむ、これならおそらく大丈夫だろう。
私が満足気に頷いていると、にーさんが口を開いた。
「あの……あなたが要求した能力なんですが、私では力不足なので、他の神のところへ行ってもらって、そこで能力をつけてもらうことになります」
「ああいいよ、最初からそうだろうと思ってたから」
元より私なんぞにボコられるようなにーさんに、これだけの力を与えることができるとは、はなっから思っていない。
にーさんはバツが悪そうに咳払いすると、私に向けて手をかざした。
「では、今からその神の元へ行ってもらいます」
それ以上何か言うよりも早く、私の視界は黒く染まった。
そしてそれが晴れた時、私は全く別の場所に立っていた。
「誰だお前は!」
声のした方向へ振り向くと、そこには一つの人影がいた。
私は、フッ、と不敵な笑みを浮かべると、素早く片手を地面に付く姿勢を取り、叫んだ。
「私は地獄からの使者!スパイ●ーマッ!!」
でっででーん
ああ……三話でまとめきれなかった……。
プロローグが長いことに定評がある作者です。
コメディパートとか言っておきながらコメディ薄くてすみません。
説明で手一杯だった……。
主人公の性格というか、口調がコロコロ変わるのにはちゃんと理由があります。
元ネタの紹介。
・カ●ハメ派
説明は不要かもしれないですね。
某有名漫画の技です。
・ザ・ワー●ド
こちらも説明は不要かもしれません。
某有名漫画の時を止める技。
・今日のあたりめ
いい●ものあとにやってる番組のサイコロの目の一つ。
・スパイ●ーマッ
東映がマーベルとの契約で日本で作成した特撮番組。
(ニ●ニコ大百科より参照)