私たちの実践

試練の中から絆の海をつくりたい

私は大学で都市社会学を教え、自治体や地域のまちづくりを支援しています。

かつて大学院設置のリーダーになり、数年間、寝る間も惜しんで設置計画に取り組んだときのことです。大学院設置は認可されたものの、教授会は荒れ、退職続出で、私は針のむしろとなり、「ああ、失敗してしまった。もう人生は開けない」と深い挫折感を味わいました。

苦悩の最中、「ウイズダム」(高橋先生がつくられた問題解決と創造のためのメソッド)に取り組むと、実は、大学院設置の過程で、「自分はわかっている」「俺の言うことを聞け」という自分の中の「優位」の想いが、同僚の信頼や職場の絆を壊していたことが見えてきたのです。「申し訳なかった」という想いが湧き上がるとともに、心と現実のつながりをはっきりと実感した瞬間でした。

そして、この「優位」の想いは、学生たちとの関わりにもはたらいていました。大学教授だった祖父の影響もあり、私の中には「学生は教授の背中を見て学ぶものだ」という想いがあり、それが上下の関係をつくっていたのです。

その後、共に1人の人間として見るTL人間学(魂の学)のまなざしに導かれて、学生たちの問題がまるで自分の痛みのように感じられるようになってゆきました。今では、進路問題や就活などで共に解決の道を探すことができたときは、心からの歓びを感じます。

また、仲間と共にTL人間学(魂の学)を学び、実践する「プロジェクト」(ボランティア)の場で仲間の赤心に触れたとき、「これが絆なんだ!」と心の底から突き上げるような歓びを感じたことがありました。その体験から、「私は、地域や組織で人の絆を生かす『絆の海の制度化』がしたかったんだ!」という内からの願いを強く感じるようになりました。現在、私は、この願いに関わる学会での大会開催(座長)や、自治体のアドバイザーの機会が増え、奮闘するときを頂いています。

今、職場では、かつて反目した同僚と心から信頼し合って、響働する得難い機会を頂いています。そして、ポストコロナの、新たなコミュニティ像や組織論を模索する研究や講演・講座、また実地の支援を進めています。これからも、「ウイズダム」や「カオス発想術」を基に、コロナ禍の試練を克服する組織や地域コミュニティ組織の可能性を探究し、支援してゆきたいと願っています。

様々な研究会や委員会で活躍する前山さん。会を開催する際には、必ず「ウイズダム」に取り組む

専門分野の「シリーズセミナー」のシンポジウムに登壇。TL人間学(魂の学)を学び、絆の感覚を取り戻した前山さんの心に、「絆の海をつくりたい」との願いが生まれた

福山市内のまちづくり協議会で作成された、独自の輸送ルートマップ。移動手段のない独居高齢者のために、地域の住民がボランティアでスーパーへの送迎や拠点での昼食会に移送している

全米コミュニティ協会

カリフォルニア州で行われた全米コミュニティ協会の年次大会にて。前会長(写真右)とは、20年近くにわたり、よきパートナーとしてコミュニティプランニングを進めてきた

子どもボランティア団と

同大会で表彰された「サンタアニータ地区コミュニティアソシエーション」の子どもたちのボランティア団体と。懸命な社会改善活動に取り組む同団体で、子どもたちは街路の清掃やペンキ塗りなどをしながら地域を支えている。前山さんは、彼らに日本のコミュニティでの活動を紹介する中で、年齢、性別、人種の違いを超えて、人間の絆づくりに向かう心の交流が生まれた