フィクションに登場する宇宙船は船なのか航空機なのか

架空の宇宙を漂う宇宙船ですが、この宇宙船という言葉には船の文字が付いています。
英語ではspaceship(spacecraftとも)です。スペースのシップ、やはり船です。
現実においての意味は人員を運べる宇宙機だそうです。
そのスペースシップという言葉が日本に伝わって宇宙船と翻訳されたのかな?
まあそれはよいです。
フィクションの宇宙船の多くは、宇宙を漂う場合はともかく、それらが大気中に留まる場合は何らかの機構によって浮いています。
その様は船というより航空機に見えます。
宇宙船の多くは流線型で全長が全幅より長いので飛行機に見えてしまいますが、前進せずその場に留まっていられるのでその点に関しては飛行機ではありませんね。
とにかく滞空している航空機に見えます。

なぜ宇宙「船」と呼ばれるのでしょうか。
宇宙は星々の浮かぶ大海だからでしょうか?
宇宙を星の海に見立てる場合は、そこで用いられる人員や物資を運べる機体を宇宙船、それらが軍用だったり戦闘に用いられる場合は宇宙艇や宇宙艦と呼ぶのかもしれません。
対して宇宙空間を「飛行する場所」や空の延長(空と宇宙は繋がっているので)と捉える場合はそこを飛び回る武装機を宇宙戦闘機や宇宙攻撃機、宇宙爆撃機などと呼ぶということなのでしょう。そう思いました。

宇宙を題材にした創作物にほぼ必ず登場する巨大艦ですが、これらは現実の船のようにゆっくりと前進、旋回している描写が見受けられ、航空機というよりはその鈍重さから名の通り船に見えます。
また、そのような大艦からは搭載された戦闘機が発進してくる場合も多く、宙母とでも言いますか、現実の空母に等しい役割も果たしているようにも見えます。
ますます船の印象が強まります。
対して宇宙戦闘機は大気中でも現実の戦闘機のように小回りが利きひゅんひゅん飛び回っている場合が多く、その様はまさに戦闘用の航空機に見えます。
このような感覚的な区分が宇宙船を宇宙船、宇宙戦闘機を宇宙戦闘機足らしめている要因なのかもしれません。
しかし、宇宙戦闘機と同程度の大きさの旅客船や貨物船もひゅんひゅん自在に運動している様子がまま見受けられますがこれらは「船」呼びですね。宇宙旅客機や宇宙貨物機でよいような気がします。
区分は製造会社の判断に委ねられるのでしょうか。

このように宇宙船と宇宙戦闘機には定義の違いがあるように思えるのですが、結局それらの差は曖昧で、宇宙戦闘機も宇宙機という大きな括りの中にある宇宙船の範疇に含まれるということが宇宙系の創作物に関わる人たちの共通認識であるように思います。
宇宙船舶または宇宙艦艇の中で小回りが利き、戦闘をこなせるものが宇宙戦闘機なのでしょう。おそらく。
現実でも飛行することができ且つ水面に浮かぶこともできる水上機というものがありますしね。
中でも飛行艇は水上に留まる際に機体の一部(胴体)が水に浸かる都合上、フロートによって機体を水面に触れさせず水に浮かぶ水上機よりも更に船に近い印象を受けました。
宇宙戦闘機は飛行艇ということで。

と、ここまで書いたところで宇宙艦(特に流線型の)が現実のどのような航空機に最も似ているのかに気付きました。
それは飛行船です。大きな体でゆっくりと飛行し空中で静止も可能な特徴はまさに宇宙艦のそれです。
飛行機が上昇する方法とは全く異なるガスを用いた浮揚方法を採っている点、つまり動的揚力に頼らず宙に浮かび上がる点も、反重力機構などを用いている宇宙艦と通じます。
(厳密には飛行船にも動的揚力は働いているそうです)
そして何よりも飛行船は「船」なのです。航空機の一種なのに船呼ばわりです。
先述の飛行艇と違い一切着水することがないにも関わらずです。
もしかすると浮揚という概念の点で関係があるのかもしれません。
本来の船は水に、そして飛行船は空に浮揚します。
浮揚の場は異なるものの、船同様浮揚性を有すが故に飛行する船というネーミングがされたのかもしれません。
どのような点から船要素が見出され、飛行「船」と呼ばれるようになった経緯が気になります。
現実ですら(名目上の)航空機と船の境界は曖昧でした。

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