2017年、つまり今年発売される「新作」のスーパーファミコン用対戦格闘ゲームとして、コアなゲーマーから熱い視線を送られているタイトルがある。大阪のゲーム企業「フォックスバット」が開発を担当している「Unholy Night: The Darkness Hunter 魔界狩人」(以下、Unholy Night)だ。
この時代に敢えてSFCの対戦格闘ゲームに挑戦することに加え、スタッフには「サムライスピリッツ」、「龍虎の拳」、「月華の剣士」といったSNKの名作を手掛けたスタッフが参加しているとなれば、オールドゲーマーは見てみぬふりなどできようはずもない。
しかし、ここで1つの疑問がよぎる。なぜSFCなのだろう。
その答えを探る前に、まずはスーパーファミコンと対戦格闘ゲームの関係性について、少しだけ述べておきたい。1991年に登場した「ストリートファイターII」(以下、ストII)が、ゲームセンターを血湧き肉躍る対戦の場に変えたのは、ゲーマーの皆さんならご存知だろう。
そして、「ストII」に端を発した格闘ゲームのムーブメントは、翌1992年に同作がスーパーファミコンに移植されることによって、これまでとは異なる局面を迎える。友達の家に集まってSFC版「ストII」で延々と対戦する。気がつけば4〜5時間は平気で経ち、激怒した母親に電源アダプターを抜かれた、なんて経験を持つ人も多いはずだ。
対戦の場がゲームセンターのみならずリビングへと広がるまで、そう時間はかからなかったのだ。ライトなプレイヤーはSFC版でユルく対戦。熱量の高いプレイヤーはゲームセンターをメインにしつつSFC版も併せてプレイする。そんな構図が出来ていたのかもしれない。
知っての通りSFCは、当時のトップシェアを誇っていた国民的コンソールだ。「SFCであのストIIが出来るのなら」と、目を輝かせて「ストII」を買いに走った人も少なくないだろう。その後、SNKの「餓狼伝説」「サムライスピリッツ」「龍虎の拳」、アトラスの「豪血寺一族」、アクレイムジャパンからはミッドウェイの「モータルコンバット」などが移植され、SFCにはすべての格闘ゲームが集う土俵が生まれた。例外はあれど、SFCさえ持っていれば、だいたいのメジャーな対戦格闘ゲームがプレイできたといっても過言ではないのである。ただし一点、アーケードとSFCではスペックに大きな差があるため、作品によっては、ファンの満足度が満たされる高いレベルの移植でなかったことを付け加えないわけにはいかないが……。
閑話休題。つまり、当時対戦格闘ゲームをプレイしていた人の中には、ゲームセンターではなく、SFCでの主戦場だったという人も多いはずなのだ。対戦格闘ゲームを十分に表現できるスペックではなかったことに加え、十字キー+4ボタンという配置のSFCコントローラーは、決して対戦格闘ゲーム向きではなかった。とはいえ、対戦格闘ゲームを一躍メジャーなジャンルにまで押し上げた功労者の1人として、その存在はやはり大きかったと僕は思うのである。
敢えてSFCで発売する意味について
SFCと対戦格闘ゲームが密接な関係にあったことは分かってもらえたと思う。とはいえ、SFCで販売することは、すなわちカートリッジでのパッケージ販売を意味する。当然ながらダウンロード販売などない。店頭価格も税込5,378円と、決して安くはない。そもそも、SFCやその互換機を未だに持っている人がどれほどいるのか。少なくてもユーザーにとってはハードルの高い販売形態と言わざるをえないし、メーカーには在庫を抱えるリスクもあるはずだ。レトロな雰囲気の対戦格闘ゲームをリリースするだけなら、PS4やXbox Oneのダウンロード販売があるし、敷居の低いSteamでもいいはずだ。
それでもSFCでのリリースに踏み切ったのは、ひとえに、本作のコンセプトでもある「原点回帰」が関係しているのではないだろうか。思い出してもみてほしい。90年代当時、我々が子供だったころは、高価格のSFCタイトルを1本買うまでにとてつもない苦労を伴った。小学生や中学生のキッズにとって、約1万円の買い物は、クリスマス、お誕生日といった有利なイベントの力を借りなくはならなかったのである。大人になった今ならゲームをポンポン買えるし、積みゲーなんて贅沢なことも言っていられるだろう。しかし、90年代当時、1本のSFCソフトをゲットすることは、大人が何100万円もするブランドのコートや、ダイヤモンドの指輪を手に入れた多幸感に匹敵するといっても決して大げさではなかったはずだ。
僕の家に「Unholy Night」が届いて、箱を開けた時、僕は少しだけ昔を思い出した。そう、SFCソフトに胸をときめかせていたころの、ピュアな自分を。大げさかもしれないが「Unholy Night」の細長いSFCのパッケージや説明書、そして手頃なサイズのカートリッジは、僕の郷愁を呼び起こしたのである。子供の頃に感じた、SFCのゲームを買った時の感動をもう一度……スタッフにはそんな狙いがあったのでは、と推測してしまうのだ。ゲーム内容で「原点回帰」を銘打っているタイトルは多いが、販売形態まで原点回帰するタイトルは、そう多くないはずである。そういう意味で本作は、よくぞ「やってくれた」と思うのだ。
ダークネスな世界観とアニメ調のキャラクター
肝心のプレイフィールはどうだろう。ストーリーは、中世最強の吸血鬼「禍蛇・カタトニア」が封印された棺を巡り、闇の支配者ダークネスと、それを狩ることを生業とするハンターたちの戦いを描いている。雰囲気はダークネスで、夜が似合うイメージ。アニメやライトノベルを思わせるような設定と、90年代チックなキャラクターデザインがオールドファンのハートをくすぐる。バトルの合間にはキャラクターごとのカットシーンを挿入するなど、ストーリーや演出にも力を入れている印象である。「BLAZBLUE」や「MELTY BLOOD」などが好きな人には刺さる設定かもしれない。
グラフィックスは、SFCの対戦格闘ゲームということもあり、王道とも言える2Dスタイルを採用。多少ジャギーが見え隠れするところなどは、まさにSFCのゲームといった模様を呈している。当時のゲームに慣れ親しんでいる人からすれば懐かしみを、若い人には、むしろ新鮮に感じるかもしれない。
操作形態は非常にシンプルで、弱(Bボタン)、中(Aボタン)、強攻撃(Xボタン)に加え、超必殺技使用の際に消費する「シンクロゲージ」溜め(Y、L、X)を採用。そのほか、フロントステップ/バックステップや受け身、ガードキャンセルといった補助的なアクションも用意されている。対戦格闘ゲームの要素としては、過不足のない印象だ。