注文殺到の大ヒット商品となったカレーペースト。
原材料のほとんどがほうれん草で、国内トップクラスの規模でほうれん草を栽培する企業が開発しました。
出荷の際に出る大量の廃棄に悩んでいた企業。その解決が、予想を超えるヒットにつながりました。
標高およそ1300メートル、長野県南牧村の野辺山高原。
この地区で唯一、ほうれん草を出荷する「アグレス」では朝から夕方に渡ってほうれん草の収獲が行われています。
ほうれん草を栽培するハウスはおよそ250棟!
国内有数の規模を誇ります。
標高が高く、冷涼な気候で育つほうれん草は、肉厚でえぐみが少ないのが特徴です。
2代目の社長・土屋梓(つちや・あずさ)さんは、15年前、先代の父親と栽培の主力をレタスなどからほうれん草に切り替えました。
「ほうれん草が夏場に足りていないということでやってみようということで、地域農業日本の農業を変えていくというのが使命」
大規模な農作業の中心を担うのは外国人技能実習生と、平均年齢70歳以上というパートさんたち。
南佐久地域や山梨県のおよそ60人が作業に当たり、地域の雇用にもつながっています。
多くが箱詰めされる一方、気になるのが、カゴに分けられていくほうれん草です。
「これはもう使われないです」
水に弱く、傷みやすいというほうれん草。
「残さ」と呼ばれる不要な部分などが多く取り除かれます。
「これは絶対に捨てないとどうしても折れやすい葉っぱになっているので、つけたまま(出荷すると)袋の中でとろけてしまってスーパーにつく頃には腐ってしまう」
1日に2トン出荷する場合、800キロは不要なものとして残ります。
「捨てるのも大変ですし、何かできないかなと」
そこで、2020年、開発したのがカレーペースト。
(開発担当・山浦昌浩(やまうら・まさひろ)さん)
「食べられるけど商品としてはなかなか出荷できないものを集めて、もったいないという思いでカレーペーストという商品にさせていただきました、栄養素としてほうれん草がしっかり入っているのですごくヘルシーなペーストにはなっている」
材料は、本来なら廃棄されていたものの一部
カレーペースト250グラムのうち8割がほうれん草という濃厚さで、様々なスパイスを利かせ、水に溶いて煮込むだけで本格的なカレーを楽しむことができます。
クラウドファンディングで試しに販売したところこれが大ヒット!
目標額の50万円の5倍、およそ250万円に達しました。
製造は業者に委託していましたが、2021年は一時注文が殺到したことで、製造が追い付かず半年待ちに。
2022年5月には山梨県に自社の加工工場を整備し、製造量を増やしています。
開発担当の山浦さんおすすめの食べ方を教えていただきました。
カレーペーストをたっぷり塗った食パンに、スライスチーズをのせ、トーストにしていただきます。
(レポート)
「美味しいです!スパイシーな辛さの奥にほうれん草のコクを感じます」
カレーペーストは、自社のホームページで250ミリリットルを3セット3000円で販売していて、地元の直売所や道の駅などでも買うことができます。
(アグレス・土屋梓社長)
「求められているものをしっかり供給していく、作って捨てて作って捨ててだと農家自身も厳しくなってきているので、より売れるものを作っていくことが至上、農家の未来にも繋がっていくのかなと思います」
人口減少で野菜の消費量が減っている中、作った野菜を、いかに無駄なく消費者に届けるか。
攻めの姿勢で、農業や産地の魅力を高めていきます。