今回はウイスキー物語の3回目として、ニッカウヰスキーのフロム・ザ・バレルを採り上げていきます。
母の弟であった竹鶴政孝において、男児に恵まれない状況になったことで、1943年に竹鶴政孝の養子となりました。
そして地元の広島工業専門学校(後の広島大学)、北海道大学に進学し、卒業後の1949年に現在のニッカウヰスキーに入社し、養父からウイスキー作りを学ぶことになりました。
竹鶴威はマスターブレンダーの地位を養父から引き継ぐと、新しいウイスキーの開発を始めます。
その一つは、マリッジとも言われる後熟工程を経たウイスキーの開発でした。
後熟とは、別々に熟成されたモルト原酒とグレーン原酒をブレンドした後、別の樽に貯蔵して数ヶ月ほど更に熟成させることで、それぞれの原酒を馴染ませると共に、後熟の樽から新たな香り、味わいを追加する工程を言います。
特に新たな香り付けをする場合は「フィニッシュ」とも言います。
その後熟工程のための樽を保管、熟成させるための拠点として1977年に栃木工場を建設しました。
そこから1978年に1級ウイスキーとして「黒角ニッカ」が発売され(1989年終了)、1983年に「マイルドニッカ」が発売されました(1997年終了)。
竹鶴威は、「ブレンダーが実験室で飲んでいる、何も取り除かない、樽出しのありのままのウイスキーを飲むような体験をユーザーに味わってほしい」と言う思いを具現化しようとしました。
1980年代前半頃までは、日本でまだカスクストレングスという加水をしない樽出しウイスキーというモノはほとんど流通していませんでした。
それを一般に市販するウイスキーとして販売しようと考えました。
しかし、原酒によってアルコール度数がまちまちになってしまう問題があったため、最終的にアルコール度数が90UKプルーフに相当する51.4度になるよう最小限の加水を行って安定化させることになりました。
更にボトルデザインは、ブレンダーが原酒を保管するサンプル用のびんを思わせる、角形でシンプルな物になりました。
このデザインを手がけたのは、後に明治のおいしい牛乳、キシリトールガムのデザインや企業ロゴのデザインを世に出した佐藤卓です。
1985年に発売した際のテレビCMにおいても、幻想的でウイスキーのコンセプトを哲学のように語る独特なものでした。
売り上げにおいては、お酒の嗜好がウイスキーからチューハイ、ビールへと移行していたため、大ヒットとはなりませんでしたが、ウイスキーの愛飲家において一定の売り上げを確保することに成功しました。
21世紀に入り、ジャパニーズウイスキーが注目されることで、フロム・ザ・バレルも海外で賞賛されるようになりました。
2009年には、ワールド・ウイスキー・アワードで、ベスト・ジャパニーズ・ブレンデッド・ウイスキーを獲得、2015年にはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジのウイスキー部門で、最高賞となるトロフィーを獲得しました。
マリッジしたウイスキーそのままの香り、味わいを楽しんで欲しいという竹鶴威の思いは、ウイスキーの世界一という座を獲得するに至りました。
酒税法が改正された1989年以降、特級という括りがなくなってからは特にリニューアルすることなく現在まで販売されています。
ボトルデザインにおいても発売当初から同じ物を継承し、ラベルも「特級」表記以外はほぼ発売当初から継続しています。
しかしここ数年のウイスキーブームや、上記に書いたように海外でも人気が出てきたせいか、販売数が少なく、入手が難しくなっています。
ただ2022年8月時点でも販売終了、休止の連絡は無く、しばらくは継続販売しそうです。
味わいは、アルコールからの辛みはあるものの、51.4度と言うほどの強さはありません。
そのあとは酸味が主体になり、ほろ苦さも伴います。
加水が進むとフローラルさも加わってきます。
味わいは、苦みがあるものの、後から酸味と甘さが広がっていきます。
味わいは、多少の苦みがあるものの、全体的には甘さが前に来ます。
味わいは、ほろ苦さが先にやってきて酸味へと続きます。甘さは後味として感じられる程度です。
ハイボールや水割りも悪くはないですが、折角ほとんど加水しない状態で売られているので、ストレートやロックで飲んでみた方がいいでしょう。
ただし、度数の割に飲みやすいので、下手にスイスイ飲んでしまうと一気に酔っ払って大変なことになるので気をつけましょう。
500mLで価格は税別で2400円ですが、現状ではプレミアがついて4000円ほどになっています。
しかし、4000円を出してもコストパフォーマンスの点で見ても悪くはなく、十分満足できるでしょう。
養子としてウイスキー作りを受け継ぐ
ニッカウヰスキーの2代目マスターブレンダーであり社長を経験した竹鶴威(たけし)は、広島県福山市で宮野牧太・延代夫妻の4男として1924年に生まれました。母の弟であった竹鶴政孝において、男児に恵まれない状況になったことで、1943年に竹鶴政孝の養子となりました。
そして地元の広島工業専門学校(後の広島大学)、北海道大学に進学し、卒業後の1949年に現在のニッカウヰスキーに入社し、養父からウイスキー作りを学ぶことになりました。
マリッジウイスキーの挑戦
その一つは、マリッジとも言われる後熟工程を経たウイスキーの開発でした。
後熟とは、別々に熟成されたモルト原酒とグレーン原酒をブレンドした後、別の樽に貯蔵して数ヶ月ほど更に熟成させることで、それぞれの原酒を馴染ませると共に、後熟の樽から新たな香り、味わいを追加する工程を言います。
特に新たな香り付けをする場合は「フィニッシュ」とも言います。
その後熟工程のための樽を保管、熟成させるための拠点として1977年に栃木工場を建設しました。
そこから1978年に1級ウイスキーとして「黒角ニッカ」が発売され(1989年終了)、1983年に「マイルドニッカ」が発売されました(1997年終了)。
「樽出しウイスキー」の発売
こうしてマリッジウイスキーで一定の成功を得ることとなった中で次に考えられたのが、加水せずに樽から取り出したそのままのウイスキーを発売することでした。竹鶴威は、「ブレンダーが実験室で飲んでいる、何も取り除かない、樽出しのありのままのウイスキーを飲むような体験をユーザーに味わってほしい」と言う思いを具現化しようとしました。
1980年代前半頃までは、日本でまだカスクストレングスという加水をしない樽出しウイスキーというモノはほとんど流通していませんでした。
それを一般に市販するウイスキーとして販売しようと考えました。
しかし、原酒によってアルコール度数がまちまちになってしまう問題があったため、最終的にアルコール度数が90UKプルーフに相当する51.4度になるよう最小限の加水を行って安定化させることになりました。
更にボトルデザインは、ブレンダーが原酒を保管するサンプル用のびんを思わせる、角形でシンプルな物になりました。
このデザインを手がけたのは、後に明治のおいしい牛乳、キシリトールガムのデザインや企業ロゴのデザインを世に出した佐藤卓です。
1985年に発売した際のテレビCMにおいても、幻想的でウイスキーのコンセプトを哲学のように語る独特なものでした。
売り上げにおいては、お酒の嗜好がウイスキーからチューハイ、ビールへと移行していたため、大ヒットとはなりませんでしたが、ウイスキーの愛飲家において一定の売り上げを確保することに成功しました。
21世紀に入り、ジャパニーズウイスキーが注目されることで、フロム・ザ・バレルも海外で賞賛されるようになりました。
2009年には、ワールド・ウイスキー・アワードで、ベスト・ジャパニーズ・ブレンデッド・ウイスキーを獲得、2015年にはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジのウイスキー部門で、最高賞となるトロフィーを獲得しました。
マリッジしたウイスキーそのままの香り、味わいを楽しんで欲しいという竹鶴威の思いは、ウイスキーの世界一という座を獲得するに至りました。
現行ボトルについて
ボトルデザインにおいても発売当初から同じ物を継承し、ラベルも「特級」表記以外はほぼ発売当初から継続しています。
しかしここ数年のウイスキーブームや、上記に書いたように海外でも人気が出てきたせいか、販売数が少なく、入手が難しくなっています。
ただ2022年8月時点でも販売終了、休止の連絡は無く、しばらくは継続販売しそうです。
テイスティング
ストレート
先にピートのスモーキーさが訪れて、後からブドウ、リンゴ、バニラ、カカオの香りが広がります。味わいは、アルコールからの辛みはあるものの、51.4度と言うほどの強さはありません。
そのあとは酸味が主体になり、ほろ苦さも伴います。
ロック
ピートの香りが強烈に鼻をついた後、バニラ、ラムレーズン、リンゴ、カカオの香りが続きます。加水が進むとフローラルさも加わってきます。
味わいは、苦みがあるものの、後から酸味と甘さが広がっていきます。
水割り
リンゴ、ブドウの香りが先にやってきて、奥からカカオ、バニラ、ピートの香りが感じられます。味わいは、多少の苦みがあるものの、全体的には甘さが前に来ます。
ハイボール
ピートのスモーキーさが先に広がった後、バナナ、ブドウ、リンゴの香りが続きます。味わいは、ほろ苦さが先にやってきて酸味へと続きます。甘さは後味として感じられる程度です。
プレミアがついても価値は変わらない
いまでこそ後熟やカスクストレングスのウイスキーは比較的手に入りやすくなっているものの、しっかり熟成された余市、宮城峡のモルト、そしてカフェグレーンなどをマリッジして、ほとんど加水せずにボトリングされたフロム・ザ・バレルは、現在においても完成度が高く、決して見劣りはしないでしょう。ハイボールや水割りも悪くはないですが、折角ほとんど加水しない状態で売られているので、ストレートやロックで飲んでみた方がいいでしょう。
ただし、度数の割に飲みやすいので、下手にスイスイ飲んでしまうと一気に酔っ払って大変なことになるので気をつけましょう。
500mLで価格は税別で2400円ですが、現状ではプレミアがついて4000円ほどになっています。
しかし、4000円を出してもコストパフォーマンスの点で見ても悪くはなく、十分満足できるでしょう。