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安倍氏銃撃事件は「下級国民のテロリズム」?山上容疑者を支持する声が浮かび上がらせるもの

山上への共感の増加は「推し活」でもある

山上容疑者を崇拝する声があるのは、“下級国民”が増え続ける日本の縮図でもある。 「リベラル化・知識社会化が進む社会では、『自由な競争』や『自分らしく生きる』ことが至上の価値とされる一方で、競争に敗れた者は『自己責任』として社会の底辺に追いやられる。こうして“ルサンチマンを抱えた弱者”が増えていけば、いったい何が起きるのか……怖さを感じます」 ただ、山上容疑者に惹かれて崇拝する声には、“推し活”的な空気も感じるという。 「山上容疑者へのネットの称賛の声には、『こんなの(殺人者)を推すのってバカだよね、だけどそういう自分が好き』という、まさに推し活のノリも感じます。減刑を求める署名運動も、そのひとつと言えるのではないでしょうか」

善悪二元論だけで片づく話ではない

一方で、「統一教会に私怨を抱き長年の恨みを果たした」という単純なストーリーで事件を理解しようとする風潮には、疑問を抱いている。 「むしろ、社会から徹底的に排除された山上容疑者が、『なぜこんなことになったのか』と人生を遡った結果、『すべての原因は統一教会だ』と思い込むようになったのではないでしょうか。カルトに家族を壊された人たちはたくさんいるものの、そのほとんどは犯罪とは無縁なのですから、『統一教会=悪、山上=犠牲者』という善悪二元論だけで片づく話ではないと思います。今後はメディアも含め、慎重な議論が必要となるでしょう」 殺人は決して許されない。だからこそ、一人の41歳男性の孤独や絶望を生んだ社会の問題に目を向ける必要がある。 【作家・橘 玲氏】 ’59年生まれ。’02年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。『無理ゲー社会』(小学館新書)などベストセラーを多数執筆 取材・文/週刊SPA!編集部 写真/朝日新聞社 ※週刊SPA!8月23日発売号の特集「安倍銃撃男[山上を崇拝する]社会の闇」より
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週刊SPA!8/30・9/6合併号(8/23発売)

表紙の人/ 沢口愛華

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