日本大百科全書(ニッポニカ)「低周波音」の解説
低周波音
ていしゅうはおん
low frequency sound
一般に周波数が100ヘルツ以下の音のこと。このうち、20ヘルツ以下の音を超低周波音とよんで区別することがある。低周波音の発生源となりやすいものとしては、風や波浪といった自然物の音をはじめ、トラックやバスに使われているディーゼルエンジン、空調の室外機の音、電車がトンネルを通過する際の圧力波などがある。人の耳は、2000~5000ヘルツの音に対しもっとも感度がよいとされており、周波数が低くなるほど聞きづらくなるため、低周波音は、とくに聞き取りにくい音といえる。このような音は、日常生活をおくる環境に広く存在し、一般的に人がうるさいと感じる騒音よりも周波数がかなり低いため、生理的影響を直接与える可能性は少ないと考えられている。環境省によると、窓や戸、家具などの揺れやがたつきなどの物的な状況で拡張されている場合や、低周波音に敏感な人の場合には、心身に圧迫感や乗り物酔いのような不快感を生じさせるような影響が出ることがあるが、一般的には、眠りが浅いときに目が覚める程度という調査結果がある。そのため、環境基準によって騒音として取り締まるような規制は設けられていない。
ただし、聞こえ方に個人差が大きいため、さまざまな問題が起きている。たとえば、風力発電施設の風車の風切り音によって、不眠や頭痛などの健康障害を訴える人が多い地域がみられており、また、一般家庭におけるヒートポンプ式電気給湯器が稼働する際に発生する低周波音をめぐり、近隣同士でトラブルになるケースが多発している。2005年度(平成17)において地方公共団体が受けた低周波音への苦情件数は、10年前の5倍あまりの135件となり、それ以降も増加する傾向にある(環境省公表)。問題が起こった場合は法的な解決がむずかしいため、発生源を検証したうえで、装置の取替えや防音壁を設置するなど、個々の問題に対処する形で解決が図られることが多い。
[編集部]