事務次官達からの引き継ぎを終え、どっかりと椅子に腰を下ろしたコーネリアの表情は曇ったままであった。
総督代行として半年近くエリア11の政治を担ってきたジェレミア・ゴットバルトは、タチカワ事変に際して消息を絶ったままであり、その補佐を担ってきたモニカ・クルシェフスキーとドロテア・エルンストは黒の騎士団に下ってしまったという情報まである状況。
事務次官達としては、総督が代わった後も留任されたことには安堵していたが、前任のジェレミアは貴族としての領国の統治にも関わっていたことから、多少のお目こぼしがあった。
しかし、コーネリアはそれと異なり、謹厳実直と清廉潔白が服を着たような人物であり、さらに彼の補佐を担うダールトンは政戦に通じる軍人であり、騎士であるギルフォードも同様に知勇兼備の将としての側面も持つ。
そのため、政庁はそれまでの風通しの良い雰囲気から、厳格な空気が漂い始めている。
そんな空気の象徴であるコーネリアの表情が曇ったままであるのは、三人の消息もそうであったが、下手人であるヴィクトル・キングスレイがラウンズより追放されたという情報があったからである。
ヴィクトルの追放は良い。可能ならば自分の手で首を刎ねてやりたいぐらいにいけ好かない男であったのだ。
だが、コーネリアの苛立ちの原因はそれだけでは無い。
シャルルはヴィクトルを処分したまでは良いが、冤罪によって処断された三名の名誉回復を何もしなかった事である。
結果として、冤罪の被害者が報われぬままであり、ヴィクトルと手を組んで彼等を追い込んだ者達も静観を決め込んだ者達は残ったままである。
邪魔者を排除し、利益のみを得たハイエナたちはブリタニア内部に巣くったままであるという現実が表に出てきたのである。
『今回の事は兄上や姉上も呆れていてね。私としても、どんな処置を行うべきか五里霧中と言ったところだよ』
当初は神根島の調査も兼ねた援軍としてエリア11に赴いてくる予定だったシュナイゼルもまた、今回の後処理に追われて国内に留まらざるを得なくなっている。
通信の際には彼が収めるエリア10(インドシナ半島)、エリア9(フィリピン)は長年中華という超大国の圧迫に抵抗し続けた国家であり、日本と同様にいまだに抵抗を続けていると聞く。
遠きブリタニアの地にいながらそう言った激しい抵抗を巧みに分断し、鎮圧を続けているシュナイゼルの手腕はコーネリアも舌を巻くが、そんな彼を持ってしてもブリタニア本国に広がりつつある不信と疑念の連鎖には手を焼きそうなのである。
そして、基本的にシャルルに対して従順であり、シュナイゼルに対して全幅の信頼を置くオデュッセウスやシャルルの弱肉強食の国是を好み、過酷な統治を良しとして行動するギネヴィアも本人達の領国であるエリア1(カナダ)やエリア5(南太平洋諸国)へと引きこもってしまったという。
帝国の膝元とも言えるカナダや南アメリカ諸国ですら足下が揺らぎつつある状況なのだという。
元々、『主義者』と呼ばれる国是に反発する勢力は各地に点在し、微々たるとは言え抵抗を続けている。
そこに、国家に寄生して甘い汁を吸い続けてきた貴族達の中で、ラウンズの粛清という明日は我が身といえる現実がシャルル体制への不信として表に出始めたのである。
そんな状況に合ってもなお、シャルルの政治に対する関心は「些事」の一言で片付けられる現実である。
そのため、他の皇族達やその後ろ盾たる貴族達もシュナイゼルに従って帝都に残るべきか、オデュッセウスやギネヴィアのように任地へ戻るべきかという判断を迫られる状況にあるという。
コーネリア自身はそんな本国の状況も含め、現状のエリア11情勢にも気を配らねばならない状況であった。
過去においては、シュナイゼルをはじめとするブリタニア本国は盤石であり、エリア11の反乱鎮圧に集中すれば良かったのである。
だが、今の状況はブラックリベリオンとシン・ヒュウガ・シャイングの反乱後の世界情勢に近いと言えるだろう。
ブラックリベリオンにおける日本全体の決起は、各エリアのみならず全世界に飛び火し、主義者達の反乱は頻発し、加えてユーロピア戦線を担っていたユーロブリタニアが反乱によって弱体化してしまい、各地に向けられる戦力は著しく減少し、超合集国との第二次トウキョウ決戦の際にはほぼ五分にまで戦力差が埋まってしまっていたのだ。
さすがに、そこまでの弱体化には至っていないが、火種は徐々に広がりつつある状況と言えるだろう。
そして、エリア11内においても、復興事業には旧日本側の企業が浸食し、名誉とは言え日本人が力を蓄え始めている事が報告されていた。
即座に叩き潰せと言いたいところであったが、世界情勢的にそれは火に油を注ぐ結果にはしかならない事は明白である。
「改めて聞くが、なぜジェレミアはこれを許可した?」
「復興は、エリア民主体で行うべきと言う方針に従ったまでだと申されておりました」
「NACなる組織が主導していることは知っている。かつての国主である皇神楽耶をトップとしていると言うが……。こればかりは話が違うのでは無いか?」
コーネリア自身、ダールトン等の主導で探りを入れている状況ではあったが、エリア11に深く張り巡らされた資金や物資の動きは巧みに隠されている。
ジェレミアとしては、国是に従ったまでとも言えるし、実際、あの男の領地ではイレブンが主導で農地経営などを行っているとも言う。
各地のゲットーに置いても同様で、税収などにおかしな点は見られない。むしろ、ジェレミアは不当な税制を改めたという面もあり、地方のゲットーはむしろ従順になったという側面もあった。
「一度、呼び出して真意を確かめる必要はあるな……。貴公等も、精々身辺整理をしておくことだ。私が貴様等を留任させた意味をよく考えろ」
眼光鋭く事務次官達を見据えたコーネリアは、そう告げると席を立ち執務室へと戻っていく。
事務次官達は射貫かれんばかりの眼光に恐れおののくも、表向き名身辺整理に勤しむ傍ら、さらに地下に潜るべく策動していくことになる。
それが、ダールトンの進言による内偵の網に導かれていることも、彼等を生け贄にして本来の物資の“道”を守ろうというルルーシュや桐原の策動である事を彼等は知るよしも無い。
「バトレーの申しておった通りですね。ジェレミアも、表だったネズミどもは叩き潰したようですが……」
「大本達を上手く操縦していた結果、利用されたと見て良いだろう。献金のほとんどは国庫に返納されている。一部は穏健派に流したようだが」
もっとも、ジェレミアは国庫に返納することで、本来の道を通して騎士団やキョウトに資金を送っていたのだが、当然それは正規の予算として計上されている。
資金を辿っていけば架空の施策や組織に辿り着くのだが、その頃にはその先の道は消えてしまっているだろう。
「それを、純血派は面白く思わず、キングスレイに組する結果になったと言う事ですね」
「キューエル亡き後の純血派はもう頼みにならんが、ヴィレッタはどうしている?」
「彼女自身は派閥抗争よりも自身の出世が一番なところがございますので。本人が志願した地方のゲットー視察に赴いております」
執務室に戻ったコーネリアはダールトンとギルフォードから報告を受けるが、エリア11駐留軍に関しては、予想以上に被害が大きい。
タチカワ事変で純血派が壊滅し、穏健派は数こそ残っているが、旗頭とも言えたジェレミアは姿を消している。
加えて、各地のレジスタンスとの交戦が続いたことで、兵士達は疲弊しきっていた。
そうなると、コーネリア直属以外で頼みとなるのは穏健派であるが、その中心とも言えるヴィレッタ・ヌウもトウキョウ租界には不在であった。
「穏健派自体は純血派のような組織だった動きはして居らず、ヴィレッタも任務に従事しているだけですから、テロ鎮圧の戦力に加えるのは問題無いでしょう」
「ゲットー視察はその一環か」
実際の所は、ヴィレッタ等穏健派を地方視察と称していつでも逃げられるように便宜を図っている形である。トウキョウ租界から出てしまえば、コーネリア達であっても追い切ることは難しくなる。
騎士団への合流も勧めはしたが、ヴィレッタ自身、本国に残した家族があり、他の者達も大なり小なり似たような理由があるため、簡単に決断はできないだろう。
ジェレミア等の家族のように、亡命という形で救出する算段は付けていたが、それも本人達の決断を待つ事になっている。
「総督、よろしければ、折り入ってご相談したいことがあります」
「ほう? ユフィも何か考えがあるのか?」
そして、腹心達との話し合いが終わるのを見計らい、執務室で待っていたユーフェミアが口を開く。
コーネリア自身、ユーフェミアの判断が結果として三人を犠牲にした事実は立場上叱責していたが、正式な就任前の失態を論う必要性はあまり感じてはいなかった。
ユーフェミア自身も自分の未熟さを痛感させられる出来事であったため、それを教訓に自身の考えたある一つの構想がどういった評価を受けるかという欲求に晒されたのである。
もっとも、親しくなった枢木スザクが賛成したことで自信を持ったと言う側面もあったのだが。
「『行政特区』か……」
「はい。ジェレミア総督代行も融和的な施策を進めておりましたから、それをさらに発展させてみてはと思いました」
姉妹の、そして総督と副総督の個人的な話である。
ダールトンもギルフォードも席を辞したのをまって書類を提出したユーフェミアに対し、ゆっくりを目を通したコーネリアは、一瞬瞑目し、そして口を開く。
「……ユーフェミア副総督、私はこれに対する意見を総督としてか、姉としてか、どちらで答えることを望む?」
「できれば両方の意見を頂きたいです」
「そうか。どちらにしても私は賛成出来んな」
「そうですか……」
「うん? 自信を持っていたようだが、随分あっさりだな?」
エリア11の一画に、ブリタニア人と日本人が身分差別なく平等に暮らせる区画を作ると言うブリタニアの一方的な譲歩によって成り立つ政策であり、コーネリアとしてはいくらユーフェミアの提案であっても受け入れがたい話である。
さらに言えば、これは日本側にも益が無い。
キョウトはブリタニア側の一方的な譲歩を受けた以上は参加を余儀なくされ、黒の騎士団も同様に戦う意義を失う。
そして、今現在もナンバーズと名誉ブリタニア人という階級差別が存在する事に加え、そこに行政特区における日本人という地位が生まれてしまい、日本人内部での分裂がさらに進むことになる。
仮に、キョウトや騎士団が突っぱねたとしても、現状で独立採算が取れる一部のゲットー以外の日本人は投げられたあめ玉に縋ってしまうであろうし、それを理由にブリタニアが手を引けば、怒りはキョウトや騎士団に向く。
コーネリアが考える以上に、日本や騎士団にとってはマイナス要素が大きいのである。仮に、コーネリアやシュナイゼル辺りが提唱したならば、裏があると喧伝して回避することは出来る。
だが、ユーフェミアは良くも悪くも無害な印象が強く、むしろコンベンションセンターホテルで草壁と対峙するなど気骨ある面も表に出ているため、余計に日本人の歓心を買う。
そう言った面があるという指摘をユーフェミアはロイドやニーナを通じてアッシュフォード学園生徒会からぶつけられていたため、コーネリアの反対に対してもやはり。と言う気持ちが先立ってしまったのである。
「一介の学生風情がはっきりと申すではないか」
「お姉様、私の友人です。そのような言い方は」
「む、スマンな。しかし、そのようなご高説を垂れるのならば一度会ってみたいモノだな。小生意気な鼻っ柱を叩き折ってくれよう」
そんな事情を聞かされたコーネリアは、さすがに怒りはしなかったユーフェミアの意見を全否定されたことには腹立たしくも思う。
自分が否定することは妹への愛情があるが、他者であれば侮辱も含んでいるように感じたのである。
とは言え、相手は学生であり、青二才風情がと言う少し小馬鹿にした思いがあると同時に、なぜか一泡吹かせてやりたいという気持ちも抱いていた。
エリア18では砂漠のハイエナ達に妨害され、本国の方でもきな臭い雰囲気が漂っていたため、どこかコーネリアとしても八つ当たりの場所を探していたのかも知れない。
「お姉様……。しかし、ロイド博士以上に辛辣だったことには驚きました」
「うむ。ロイドはああ言う人間だからズケズケモノを言うが、イレブンどもの視点でモノを語るというのは……」
先ほどの騎士団絡みの話は当然だが、ルルーシュとナナリーの意見である。過去においては、ナナリーもユーフェミアと同様に夢を抱き、その実現に向けて動いたが、今は理想よりも現実を見据えるようになっている。
ルルーシュと国家の在り方などに関して語り合う場面が増えたこと、咲世子やジェレミア。さらにはC.C.と言うようにはっきりと意見を述べてくれる人間に囲まれていることが大きい。
「その学生と言うのはどこの学校の者達なのだ?」
「たしか、アッシュフォード学園と……」
「うん? ロイドと揉めていたアッシュフォード家か?? …………ふむ」
その名を耳にしたコーネリアは、どこかで引っ掛かりを覚える。
マリアンヌの後援貴族であり、派手好みだが、投資や開発に積極的に打ち込むルーベンは軍人と貴族という関係であったが、その野心的な振る舞いには関心を引かれることが多くあった。
だが、マリアンヌの暗殺により、一気に勢力を失い、今では学園経営の他は社会福祉関係への投資にて細々と暮らしているとも聞いていた。
「ルーベンとジェレミアは同じマリアンヌ派……。気になるな」
「それなら、来月に学園祭を行うと聞いていますよ? ゲットーへの奉仕活動も兼ねているので、イレブンも巻き込んでの無礼講だと聞いています」
「けしからん話だが、我々が忍び込むには最適な場だな。あの狸を出し抜くには奇襲が一番かも知れん」
ジェレミアの行方に関しては一校に検討が付かなかったコーネリアであるが、アッシュフォードと言う名を耳にして、得体の知れぬ予感を感じさせられていた。
同時に、ユーフェミアと姉妹として過ごす機会を得られそうとなっては、コーネリア自身も乗り気になっているのだ。
ルーベンの口からジェレミアの行方を聞き出そうというちょうど良い名分もある。
「では、内密にしておいた方が?」
「うむ。その友人とやらから詳細を聞き出すが良い。それとユフィ」
「はい?」
「その構想。私がこのエリアを改めて平定した後、形に出来るよう努めてみると良い。まずは、副総督としての実務に取り組むことから始めて見ろ」
「っ!? は、はいっ!! 頑張りますっ!!」
「うむ」
そして、過去においてはお飾りかつ自身の籠の鳥に止めていた妹に対しても、姉という立場を越えて正しく上司と部下という態度で臨もうという気概が生まれていた。
特区構想を自分にぶつけた来たことで、いつまでも自分に守られているだけの存在では無い事をコーネリア自身が自覚した面もある。
ユーフェミア自身、ロイドやルルーシュ達から完全否定されたことで、自身の未熟さを感じていただけに、その提案は渡りに船であった。
もっとも、お互いのこととなると甘えが出てしまうのが姉妹であり、その忠臣達でもある。そのため、ユーフェミアがナナリーのように、劇的な成長を得るのは中々難しい話でもあった。
◇◆◇◆◇
トウキョウ政庁にて姉妹がとんでもない決断をしていたその頃、その標的となるであろう二人の男とその同志達は互いに顔をつきあわせて思い悩んでいた。
「恐れていた話が出てきてしまったか」
「安易にシュナイゼル殿下に話す事が無いよう、釘は刺しておきましたが」
「ユーフェミアお姉様は人が良いですからね……」
ニーナとユーフェミアの繋がりは思いのほか強固であるのか、特区構想の話までスザクやロイドを交えて出てきているという事をニーナが口にしたことで発覚したことである。
シャーリー達も過去にルルーシュがはっきりと否定していた事が話題に出てきたので驚くと共に、それが騎士団にもたらす影響の大きさを聞かされていただけに、実現への懸念も大きかった。
「コーネリアには話すであろうから、そこで話は止まるはずだ。だが、コーネリアが俺のことを嗅ぎつけるのはマズい。あの人は鼻がきくからな」
実際、アッシュフォードの名を聞いただけで、ジェレミアに結びつけつつあるコーネリアである。
コンベンションセンターホテルにおいては、ルルーシュもユーフェミアと絡むことは無かったが、彼女もまた仮面越しの素顔にやがては辿り着いてしまうだろう。
それだけ、この姉妹の存在は厄介でもあった。
「そういう話を聞くと、学園祭が危険な気もするのよね。今から中止にしたりしたら余計に」
「ルルーシュとナナリーだけならともかく、俺達まで逃げるわけにはいかないですしね」
「当たり前だ。リヴァルには私のために巨大ピザをこねる役割があるんだぞ」
「そっちかよっ!! C.C.さんはピザ好きだって聞いたけど、そこまで楽しみにしているのか」
「まあ、毎年恒例だし、ゲットーへの奉仕活動を止めるわけにもいかないからね」
「うむ。ピザは良いぞ。あのチーズの口あたりと生地の食感は」
そして、来月に迫った学園祭の準備を進めていたミレイとしては、オープンな雰囲気のその場が人を引きつける誘蛾灯となる事を自覚しているため、懸念を抱くのも早い。
メインイベントを誰よりも楽しみに待つC.C.としても譲れない話ではある。
「ピザの話はいいっ!! それに、せっかく目が見えるようになったナナリーが初めて参加する祭りだ。中止なんぞ俺が許さん」
「お兄様、落ち着いてください。でも、開催するとなると、間違いなくユーフェミアお姉様はやって来ますよ? 多分スザクさんも一緒に。もしかしたら、コーネリアお姉様も」
当然、ルルーシュとしてもナナリーだけで無く、失ってしまって過去の大切な思い出の場である。同時に、苦悩のはじまりの宴でもあったが、今回ばかりは皆と楽しむつもりで遭っただけに、招かれざる客の存在は余計に懸念すべき事でもある。
しかも、対象となる人物達は、自分が過去に苦しめたという後ろめたさがある人間ばかりである。
「仕方が無い。俺とナナリーだけが上手く会場に身を隠せば良いだろう。ニーナを訪ねてくるとしても、連絡ぐらいは入れるだろうしな」
「そんな面倒くさいことをしなくても、来れないように叩きのめしちゃえば良いだけでしょ」
「無茶を言うな。コーネリアを叩き潰すことなんて、いまからシャルルを殴りにいくより難しいぞ?」
「さらっととんでもない事を言うわね」
「ルルが殴ってもあの人痛がらなそうですけどね」
「むしろ、あの暑苦しい声で『きかぁぬぅっ!!!』とか言いそうだよな」
カレンとしては、いずれ倒さなきゃならない相手である以上、こちらから仕掛けることに恐れも不満も無いし、現状ではルルーシュの姉弟であろうと遠慮をするつもりも無い。
だが、コーネリアの手強さを知っているルルーシュは、仮にモニカとドロテアを投入したところで確実に勝てると言う自信を持てていない。
神根島の遺跡はすでに発見できているため、シャルルの寝込みを襲って殴るぐらいの方がまだ容易いとも思えるぐらいには。
「なによ。それが出来るなら、私も連れて行きなさいよ」
「ふん。俺が勝ったら好きなだけ殴らせてやるさ。だが、今はコーネリアとユフィのことだ」
「中華連邦の動きもそろそろ警戒するべきでしょうな。最後の台風がまもなくやって来ます」
「片瀬も潜伏したままだったな。スザクを封じている以上、コーネリアの手腕次第にはなるが」
過去に起こったキュウシュウ戦役。
日本国内の混乱と台風の上陸の間隙を縫って、九州福岡基地周辺を中華連邦軍が占領した戦いである。
モニカからもたらされた情報に寄れば、片瀬と澤崎の繋がりはいまだ消えて居らず、水面下で解放戦線の戦力が合流しつつあると言う。
当初は、片瀬を操って澤崎と対立させ、一網打尽にするつもりだったようだが、モニカがブリタニアから去ったため、予想以上の戦力が集まった状態で決行の時を待つ状況だという。
嵐に乗じた攻撃であった事もあり、進軍を阻まれたブリタニア軍は苦戦を強いられていたが、今回はそれ以上に規模になりかねないとも考えられる。
「そうなると、前に言っていた切り札を使うときなんじゃ無い?」
「いや、あれはトウキョウを奪回するときの切り札だ。こんな所で使うわけにはいかん」
「空からの支援が無いとなると厳しいと思うがな」
「それに関しても手は打ってある。カレン、シャルルを殴る前に、中華を好きなだけ殴らせてやるから楽しみにしていろ」
「へえ? 良いわ。やってやろうじゃ無い」
ブリタニア国内が不穏な状況となったため、シュナイゼルが日本に来る様子は無く、神根島にてガウェインを奪取する機会は得られないだろう。
ランスロットの出撃も、今はエナジーウィング装備前である事から、過去のような戦果を上げられるかは微妙なところ。
そのため、ルルーシュはデータハッキングで、ガウェインやエナジーウィングの開発データを盗み取り、特派とラクシャータ等の下へと流していた。
そのため、ガウェインの完成と紅蓮へのエナジーウィング装備を急ピッチで進めさせていたのだ。
当然だが、キョウトにいる藤堂やモニカ等の機体にも装備を進めている。
とは言え、今回ばかりは相手の出方次第になるため、紅蓮を優先させてもいる。
「順調に来ているとは思っていたが、やはり一筋縄ではいかないな。コーネリアにしろ、中華連邦にしろ、今までのようにジェレミアが敵側に居て助けてくれていた状況はすでに無い。戦いの激しさは一層増す事を覚悟して、事に当たるようにしてくれ」
そして、場をまとめるべく口を開いたルルーシュの言に、皆一様に肯いたのだった。
各エリアとオデュッセウス達の任地に関しては完全に独自設定です。
あと、ガウェインやエナジーウィングに関しては原作知識という反則技で手に入れるやり方にしました。
それでは。