ブラウザベースで3D資料を作成できる『Scene』で、製造業の業務改革を
「コンピュータは人類の創造活動を広げるツール」と考えるScene株式会社。今、同社が注力しているのが、3Dコンテンツを用いた資料をブラウザベースで作成できるツール『Scene』である。代表のビジャヤン・スワティナト氏によると、製造メーカー等では、プレゼン資料や作業指示書を作成する時に、現物を撮影した写真や、3DCADデータによるモデルのスクリーンショットを貼り付ける、といった方法を採っていることが一般的だという。3DCADデータを扱うツールはプロ仕様なので、例えば、営業担当が資料にモデルを使いたい場合、一度専門の部署を挟む必要がある。しかも、容易に加工できないので、資料として分かりにくくなることもある。
『Scene』は、これを解消する画期的なツール。3DCADデータを直接読み込み、直感的な操作で3D資料を作成できる。部品ごとに自由に分解して表示できるほか、前後のカットを繋ぐアニメーションが自動生成される等、分かりやすく、動きのある資料を容易に作成できる。操作の難易度としては、プレゼンテーションソフトを扱える人なら、問題なく使いこなせるレベルだ。しかも、『Scene』は、ブラウザベースなのでプラットフォームに依存しない。作成した資料も共有URLによってブラウザ上で誰でも閲覧できる。
現在、『Scene』は国内外の製造メーカーを中心にサービスを提供しており、お客様の評価も高い。直感的なUIのため、海外企業でも特別なローカライズなしに利用されている。その一つが、EU圏で自転車のトレーラーを提供しているメーカー。リペアのアフターサービスの際に、作業指示書の作成に『Scene』が活用されている。サービスの導入により、資料作成の工数が減った上に指示が的確になり、納期を大幅短縮。『Scene』がサービスの質の向上に大きく貢献しており、もはや欠かせない存在となっている。『Scene』は、このような業務改革を起こすポテンシャルを持つ。今後、製造業の様々な業務に欠かせないツールになる可能性があると、ビジャヤン氏は考えている。
新しいコンピューティング・パラダイムとして期待されるARに、この20年に懸ける
同社の3D資料作成ツールは、事業としてはファースト・ステップに過ぎない。目指しているのは、ARが主要なコミュニケーション技術となる世界である。ビジャヤン氏は、自分の人生で最も生産的なこの20年間に、ARが新しいコンピューティング・パラダイムになると見ている。しかし、現在ARコンテンツはUnityのような開発者向けのツールでないと作成できない。一般に広く浸透するフェーズになった時、ARコンテンツを簡単に制作できるツールが必ず求められるようになると考え、2019年12月に、同社(旧社名・株式会社Unscene)を設立する。
設立当初は、ダイレクトにAR領域にチャレンジし、旅行・観光業界向けに「AR観光ツアー」や、自動車等の「ARマニュアル」を容易に作成できるツールを提案。各界でヒアリングを実施するも、少し時代を先取りしすぎていたこともあり、ニーズの掘り起こしに難航したという。しかし、ARコンテンツ作成する際に必要となる、3Dコンテンツ作成ツールが、ビジネス・シーンでニーズがあることを知る。「シンプルなUIのツールだったため、『専門技術のないメンバーでも3Dコンテンツをつくれそう』と、お客様の関心が高かった」とビジャヤン氏。そこで、さらなるマーケティング調査を開始する。
2020年9月に、3D資料制作ツールについてのLPページやコンセプト動画を公開。事前登録を募ると、400社近くという想像を超えるエントリーがあった。そのなかから約40社に、より詳しいヒアリングを実施。その成果をもとに、同年12月に20社にベータ版を開発開始。開発とテストを繰り返し、2021年8月に、クローズド版の有料化を実施。そして、ついに同年12月に正式ローンチとなった。
その後もお客様からのフィードバックをもとに、バージョンアップを急ピッチで重ねている。例えば、現バージョンの『Scene』は、一度に扱える部品のパーツが1,500までだが、今後はさらに増やしていく。自動車等は全部で約3万パーツにも及ぶため、そのような大量な部品を使う製品を、『Scene』で丸ごと扱えるようにしていきたいという。また、複数選択を可能にするといったUIの強化、扱えるCADデータの種類を増やすといった互換性の向上にも取り組み、ますますユーザーライクなサービスへと成長させていきたい考えだ。
スペーシャル・コンピューティングのベース、そして会社を共につくっていきたい
今後、『Scene』は他業界にも展開していく。まず目指しているのは、建設業界。大規模開発を実施する際に、『Scene』はあらゆるプロセスでのコミュニケーションをスムーズにできると期待される。既に大手ゼネコン等へのアプローチを進めており、お客様から好感触のフィードバックを得ているという。
「次の3~4年で製造や建築の業界で利用が広がり、さらに海外での利用も伸びていくと考える。そして、2025年以降は、ARグラスのモーメントが来るだろう。毎日のライフスタイルの中で、3Dコンテンツを作成するニーズが出てくるはず。そこにいち早くリーチしたい」とビジャヤン氏。まさに今は、3D/ARコンテンツツールの黎明期。このチャンスに、一緒にチャレンジしていく新たな仲間を求めている。
『Scene』のプロダクトとしての勝負は、フロントにある。お客様の改善要望もフロントに集中している。フロントエンドエンジニアにとって、一般的なSaaSよりも難易度の高いプロダクトに関わることになるため、非常にチャレンジングな仕事となる。また、UI/UXデザイナーにとっては、ユニバーサルデザインを目指しているため、シンプルで分かりやすい操作のまま、いかに機能を増やせるかという点が技量の見せ所となる。
『Scene』の開発は、未開拓な3D/ARコンテンツ作成ツールの領域で、スタンダートをつくっていくチャンスでもある。既に国内外で実用されているサービスなので、その確度は高いと言えそうだ。「初めてスマートフォンのアプリを作った人のように、2040年を一つの目標に掲げて事業を成長させ、スペーシャル・コンピューティングのベースをつくっていきたい」とビジャヤン氏の思いは熱い。
また、スタートアップのフェーズでジョインすることも、キャリアとしては大きな魅力。インサイトをもとに開発が進められているため、潜在ニーズの見込みが立っており、事業としての成長の可能性が高い。会社づくりにも積極的に関われるフェーズなので、エンジニアリングの進め方や会社の文化にも大きな影響力を発揮できる。スペーシャル・コンピューティングも、企業も、一気に成長を目指せるタイミングが重なっている。今がビッグ・ウエーブに乗る、その時かもしれない。