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都立大、完全非接触で微小物体を拾い上げる「空中音響ピンセット」を開発

マイナビニュース / 2022年8月23日 6時50分

画像提供:マイナビニュース


東京都立大学(都立大)は8月19日、半球型の超音波トランスデューサアレイと適応的な位相振幅制御技術を巧みに組み合わせることで、音波を利用して完全非接触において、ステージ上にある微小物体を選択的に拾い上げ、空中浮揚させられる「空中音響ピンセット」を開発したことを発表した。

同成果は、都立大大学院 システムデザイン研究科の近藤昇太大学院生(研究当時)、同・大久保寛准教授らの研究チームによるもの。詳細は、応用物理学会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う欧文学術誌「Japanese Journal of Applied Physics」に掲載された。

音波が異なる媒質間を伝搬するとき、特定の条件を満たすと直流的な力である「音響放射力」を観測することができ、それを利用すれば、非接触で物体に力を与えることが可能だという。具体的には、定在波による音圧の腹の位置から節の位置に力を受けるとされている。

この音響放射力を応用すれば、物体を空中に浮遊させる「音響浮揚」も実現可能だという。強力な超音波を用いて音響放射力を制御することで、微小物体の浮遊や非接触輸送などが可能となる。しかし、こうした音を利用して微小物体を非接触で移動させる際に、課題となるのが反射音の影響であり、従来技術では対象である微小物体をピンセットなどでつまんで、音響的トラップにセットする必要があり、完全な非接触とはなっていなかったという。

そこで今回の研究では、半球型の超音波トランスデューサアレイをマルチチャンネル化し、逆フィルタによる最適化を用いて、適応的な位相振幅制御を行う仕組みを採用することにしたという。


実験の結果、ステージ上にある物体を安定的に完全非接触で選択的に拾い上げ、そのまま空中浮揚させられる、完璧な空中音響ピンセットの開発に成功したとする。

空中音響ピンセットの研究は、多数のトランスデューサを用いた半球型アレイと位相制御の研究としてスタートしたとする。研究の初期では、物体を置くステージを工夫することで、完全非接触のピックアップ技術が開発されたが、最終的には半球型トランスデューサアレイをマルチチャンネル化し位相振幅制御を組み合わせ、音を反射するステージからでも物理的な接触なしに物体を持ち上げることに成功したという。

しかし、ピックアップに成功はしたものの、当初は再現性と安定性に課題があったことから、半球型の超音波トランスデューサアレイにおいて、半球状のアレイの対向する半分ずつを同位相と逆位相で組み合わせて駆動する方法を採用することで、空間に反射音があったとしても、適切にトランスデューサアレイの位相振幅と励起モードを制御することで、安定性が実現されたという。

また、適応的なアルゴリズムを用いて、ピンセットの制御方法を調整することで性能が改善され、微小物体の安定したピックアップが可能になったともしている。

今回開発された空中音響ピンセットについて研究チームでは、物理的接触がない状態を厳密に保つ必要がある試料の操作や、微小重力空間を含むさまざまな環境下での微小物体の操作といった将来的な技術への応用も期待されるとしている。
(波留久泉)

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