未来探った三宅一生さん デザインと社会見据え 展示も後進も育んだ

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編集委員・大西若人
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 ファッションデザイナーというよりデザイナー。5日に84歳で死去した三宅一生さんは、自身をそう規定していた。衣服のデザインにとどまらず、デザイン文化やアート、さらには社会全体を見据え、大きく鮮やかな足跡を残した。

 2003年1月28日、朝日新聞の文化面に、三宅さんの提案による寄稿「造ろうデザインミュージアム」が掲載された。

 日本の優れたデザインは「人々の生活に深く入り込んできた」にもかかわらず、「今の日本人はあまりにも無頓着」と指摘、「デザイン遺産を保存・紹介し、未来に向けて同時代の動向も示す『デザインミュージアム』をつくろう」と訴えるものだった。

 親交の深かったグラフィックデザイナーの田中一光さんの急逝が一つのきっかけだったが、その前から、田中さんや彫刻家のイサム・ノグチさん、インテリアデザイナーの倉俣史朗さん、建築家の安藤忠雄さん(80)らと、語り合ってきたことだったという。

 この寄稿が反響を呼び、07年に東京・六本木に「2121デザインサイト」がオープンする。作品の収集、保存はできないものの、デザインについて発信する展示施設で、三宅さんが唱える「一枚の布」の思想に呼応した、「一枚の鉄板」の大屋根を持つ建築は安藤さんのデザインだ。

 企画は、三宅さんと、グラフ…

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