法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

掲載先で寄稿者を評価してはいけないのか、評価してもいいのか、どっちなんだい?


ほとんど異端尋問というか魔女狩りを様相を呈している界隈があり、気持ち悪い


同じビルに入っているから云々というやつ、ネット右翼の「西早稲田」がどうのというやつと同じで、本当に同じことを繰り返してるな。

政治家と統一教会の関わりみたいな話と、統一教会系の学術雑誌に何度か寄稿した、みたいな話は、分けて考えたほうが良い

id:flurry氏の下記リプライを経由するかたちで、id:zaikabou氏の上記ツイートを知った。


同じビルに入ってる云々というのは、たぶん季刊「世界平和研究」の発行元とかの話じゃないかと思いますが。
こういうのは色々な団体が雑居ビルに同居しているのとは違うのでは。

平和政策研究所の分室が入ってる、東京都新宿区の成約ビルだそうな。へー…… >
https://tcc2.seesaa.net/article/434068021.html

まず、異なる問題を単純に同一視するべきではないという主張そのものは一般論としても正しい。
たしかに旧統一協会関連のメディアに寄稿する問題には、政治家と利用しあうような問題とは性質が異なるだろう。
hokke-ookami.hatenablog.com
たまたま数日前に下記エントリの末尾で本題とは別個に紹介したような事例もある。
hokke-ookami.hatenablog.com
もちろん。これは問題が存在しないという話ではない。


また、「同じビルに入っているから云々」がflurry氏の紹介した情報とは異なる可能性もある。
そこでzaikabou氏の前後のツイートを読んだところ、黒田洋一郎氏を批判する話題で下記ツイートをリツイートしていて、解釈に悩んだ。


ここで「農薬の使用率が高い国ほど発達障害が多い」を報告した黒田洋一郎氏だけど、2011年以降ロクな論文も執筆せずに、岩波の科学に論文もどき載せてるだけの人だぞ。
論じる必要なし。

リツイートされた「杉@SugiShine」氏のツリーを見ると、下記のようにもツイートしていた。


岩波の「科学」、マジでクソみたいな雑誌だなということを再確認した。

もちろんリツイートの意図や重みはさまざまなので、zaikabou氏が雑誌にもとづく評価部分までは肯定していない可能性はある。
しかし、『科学』への寄稿そのものに疑義をとなえる「界隈」を根拠につかって批判しないのなら、『世界平和研究』への掲載へ疑義をとなえる「界隈」も理解できないだろうか。


ちなみに、黒田洋一郎氏の当該研究を肯定する意図ではないことを前提として、リツイートされている「杉@SugiShine」氏の認識にも少し疑問がある。
たとえば2014年に当該研究にまつわる共著を出しているのは河出書房新社で、岩波書店としか関係がないというわけではない。

また、当該文春記事の筆者は奥野修司氏であり、厳密には”報告した”ではなく”報告が紹介された”といった表現をつかうべきだろう。
bunshun.jp
しかも文春記事に登場する複数の研究者で、名前が出てくるのは黒田洋一郎氏ではなく、上記書籍の共著者でもある木村-黒田純子氏だ。

「ネオニコは哺乳動物の神経には影響しない」と言われていた2012年、環境脳神経科学情報センターの木村-黒田純子氏らが、試験管の中とはいえ、ネオニコがラットの小脳の神経細胞を攪乱することを発見した。

リサーチマップを見ると、木村-黒田純子氏は2012年に黒田洋一郎氏の共著と、別の研究者との共著で査読付き論文を発表している。
木村ー黒田 純子 (Junko KIMURA) - マイポータル - researchmap

Role of the lesion scar in the response to damage and repair of the central nervous system
Hitoshi Kawano, Junko Kimura-Kuroda, Yukari Komuta, Nozomu Yoshioka, Hong Peng Li, Koki Kawamura, Ying Li, Geoffrey Raisman
CELL AND TISSUE RESEARCH 349(1) 169-180 2012年7月 査読有り


Nicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats
Junko Kimura-Kuroda, Yukari Komuta, Yoichiro Kuroda, Masaharu Hayashi, Hitoshi Kawano
PLOS ONE 7(2) 2012年2月 査読有り

査読付きであっても必ずしも論文が信頼できるわけではないが*1、「岩波の科学に論文もどき載せてるだけ」ではないことはたしかだろう。
ここで感じられるのは、2011年以降に論文が発表されていないという認識が社会的な偏見によるものではないか、という可能性だ。共同研究における女性研究者が軽視され、その主体が無視されるからこそ批判対象にも選ばれなかったとすれば、良い姿勢だとは思えない。その観点でいえば「木村-黒田」という表記も日本社会の問題を象徴している。

*1:黒田洋一郎氏とも協力した論文を査読付きで掲載した「PLOS ONE」は、かなり独特の方針をとっているらしい。いわゆる「ハゲタカジャーナル」ではないが、評判が良いわけでもなさそうだ。 scienceandtechnology.jp