私は上級者ではない。
上級者とは隔絶した域の練達の士
の事を指す。
プロ、SA、A、B、Cなどのクラス
分けも本質的には全く意味がない。
極言すれば、アメリカ合衆国のよ
うに、クラス分けなど一切存在せ
ず、「力のある者が勝つ」または
「実力者こそが奥義の深みを知悉
している」というのが本当の健全
なビリヤードプレーヤーの姿だ。
日本のように特定玉入れ個人種目
での得点が高得点だったり、試合
で上位に行く者が必ずしも「上級
者」ではないからだ。
タイトル獲得数やその面での来歴
ではなく、それらと無縁であって
も、内実として名人、達人の域に
ある人たちが真の「上級者」だろ
う。
モーターサイクルロードレースで
いうならば、1980年代のレーシン
グライダーの米国人ランディ・マ
モラなどは、一度も世界チャンピ
オンを取った事はないが、彼こそ
はオートバイの乗り方の奥の奥ま
で知り尽くした名人、世界一の
巧者だったといえる。2スト500cc
GPレーサーというとんでもない
モンスターマシンをとんでもない
職人技で、しかも裏の裏まで読み
切って完璧に乗りこなしていた。
ただ、レース運びのみがタイミン
グが悪かったりうまくかみ合わず、
世界チャンピオンだけは一度も
取れなかった。
だが、1980年代。マモラが世界で
一番のオートバイ乗りだ。
これは間違いない。ランキング
など関係ない。ランキングはレー
スという競争競技での順位であり、
オートバイの事を理解しているか
どうかとは連動していない。
日本人ならば元ヤマハワークスで
開発ライダーを務めた本間利彦だ。
彼こそが乗り屋としては、当時は
世界一オートバイを知っている。
今も一番核心部分のコアを知悉
している。
ビリヤードも全く同じだ。
日本にはプールの世界に「プロ」
は多い。300名ほど登録している。
だがプロフェッショナルは多くは
ない。
またアマも然り。
下手こいたら、日本独自のくだら
ぬランク分けによりドカンチ大量
生産状態かも知れない。
ランク分けによるマウント取りた
がりさんが跋扈しているのも、
そのあたりだろう。
くだらぬ学歴社会日本の歪んだ縮図
のようなものがそこに見える。
大切なのは、入試難易度や大学の
ブランドではなく、その人物が
真の実力を備えているかどうか
であるのに。
面白い実話を話そう。
ある地方オープンに出場してプロ
2名を下して勝ち進んだ時の事。
私が尊敬する(滅多に無い)大阪
の重鎮プロ二人が私の試合での
撞球をずっと私の席の後ろに陣
取って見ていて、試合後にお二人
に向こうから声をかけられた。
その時の、エピソードとして、その
試合には一緒には参加しなかったが
ある年配のアマチュアの撞球者の
方と普段一緒に撞いている事を
私と参加仲間はそのプロ二人に
告げた。
すると、狭い世界ですね。
その大阪のプロお二方はその年配
のアマプレーヤーをよく知ってい
てこう言った。
「昔から撞いてはる方で、ほんま
に玉をよう知ってる。ああいう玉
を知っている方と撞いてもらわん
とあかんでぇ。よう玉を見て教え
てもらい」と口を揃えて。
お二人は1980-90年代のトップ
プロであるのだが、明らかにアマ
チュアの経験豊富な撞球者に敬意
を評してまじもんで言っていた。
一つ、くだらぬ虚構のピラミッド
の中には生きていない真の撞球者
の心の在り方というものをお二人
の大阪の重鎮プロに教えられた
気がした。
無論、「プロだから」としてくだ
らないマウントを取って上から
目線で人を評する事などはお二人
のプロはしない。
そんなものは意味が無い事を知り
尽くしてもいるのだろう。
撞球師、撞キュー士とはそういう
ものか、と教えられた。
プロフェッショナルを見た。
アマチュアで上位クラスだとして
人を見下す連中の如何に中身の
無い事か。
だが、埒も無い虚偽の作為的ヒエ
ラルヒーの「上の者」の有様等々
とは別問題として、撞球シーンで
「さばき」がこ慣れると、この
私の動画のようにクイックリーに
かつ効果的に素早くチョークを着
ける事を多くの撞球人がやっている。
試合ではないので、練習や研究や
相撞きでは少しでも限られた時間
で多く玉を撞きたいので、自然と
このような素早い動きになる。
だが、出鱈目にはチョークは着け
ない。きちんと要点は押さえて
多くの手慣れた撞球者はやって
いる。
本来は目視しながら下アングルから
上にこすりつけるように着けたほう
がよい。これはもう定理みたいに
そう。
私も、ロングドローをする時や、
絶対にミスできない玉回りの時に
は、キューを立てて、目視しなが
ら丁寧にチョークをこすり着ける。
チョークは塗り過ぎても駄目だし、
まだらに塗布面が薄くなっても駄目。
まだら塗りは塗り過ぎよりも駄目。
チョークは塗布したチョーク粉が
一定になるように塗る。
動画のようなこうした片手塗りは、
こ慣れた人間がよくやる方法だ。
私の場合は、一定のリズムを取り、
しかも、最後の一塗りで、全体を
均すようにキュッと一なでする。
だが、キューを立てて目視でチョ
ークを塗るにしても、最近は天辺
だけをチョッチョと2回ほどなでる
だけの動きも動画サイト等では
よく見る。
それはタップ全面に新チョークが
塗布されたとは思えない。
だが、タップのトップだけ使う
チョン突きが多いので、それでも
ミスキューさえも無いのかも知れ
ない。
しかし、キューを切れ味鋭く利かせ
て行く撞き方では、チョークはでき
る事なら毎回満遍なくタップに塗る
のが理想的だろう。
これは、俺はこう思うとか私的思念
など関係なく、物理的な事から。
道理として。
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