「事件を起こすべきだった」母への“愛憎”と教団への“恨み”…山上容疑者SNSに投稿された1363件
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安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者と見られる人物が旧統一教会や母親への思いを綴ったツイッター。山上容疑者は現在、凍結されているこのアカウントに約2年9カ月で、1363件にのぼるツイートを残しています。
めざまし8は、山上容疑者の投稿を独自に分析。そこから見えた心情とは…。
山上容疑者とみられる書き込み「オレが憎むのは統一教会だけだ」
安倍元首相銃撃事件から、7月19日で11日。事件現場近くの献花台には、18日も多くの人が献花に訪れました。
一方、これまでの調べに対し、「世界平和統一家庭連合」=旧統一教会への恨みから凶行に及んだとみられる山上容疑者。信者だった母親が多額の献金を行い、家族が崩壊した経緯とともに、母親や教団への思いをツイッターに綴っていたとみられることがわかりました。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
統一教会は全世界の敵であり、当然日本の不倶戴天の敵でもある。
山上容疑者のものとみられるツイッターに最初の書き込みが行われたのは、2019年10月。実はこの直前、旧統一教会のトップが来日、日本で集会を開いていました。
山上容疑者:
韓総裁を狙っていて、韓国から来日した際には、火炎瓶を用意して愛知県の会場を訪れたが、会場に入れず、何もできなかった。
旧統一教会のトップを狙い火炎瓶などを用意したという趣旨の供述をしている山上容疑者。しかしこの時は、会場に入ることも出来ず、計画を断念したといいます。この約1週間後、ツイッターへの2度の投稿で、初めて教団に言及。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
統一教会のおぞましさに比べれば多少の政治的逸脱など可愛いものだ。安倍政権に言いたい事もあろうが、統一教会と同視するのはさすがに非礼である。
オレが憎むのは統一教会だけだ。結果として安倍政権に何があってもオレの知った事ではない。
さらに、その10日後…
山上容疑者のものとみられるツイッター:
親に騙され、学歴と全財産を失い、恋人に捨てられ、彷徨い続け幾星霜、それでも親を殺せば喜ぶ奴らがいるから殺せない。それがオレですよ。
旧統一教会への強い怒りと、それに帰依する母親への恨み。母親が行っていたという多額の献金。山上容疑者の伯父によると、子どもたちは、日々の食事にも困っていたといいます。
伯父の働きかけで旧統一教会は、5000万円を返金。献金については、「個人の信仰に基づいて自主的に捧げられており、高額の商品購入や寄付等が求められることはない」としています。
母への“愛憎”「事件を起こすべきだった」
さらに、初投稿から2カ月後の12月7日、山上容疑者は母親が宗教にはまり、貧困に至るまでの過程を詳細に綴っています。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
オレも母子家庭だった。但し貧困ではない。むしろ裕福だった。
三人兄妹の内、兄は生後間もなく頭を開く手術を受けた。10歳ごろには手術で片目を失明した。障碍者かと言えば違うが、常に母の心は兄にあった。妹は父親を知らない。オレは努力した。母の為に。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
死んだ父は京大出だった。父の兄は弁護士、母は大阪市大卒の栄養士、母方の叔母は医者だった。そんな環境でオレは優等生として育った。オレの努力もあったが、そういう環境でもあったのだろう。
オレは作り物だった。父に愛されるため、母に愛されるため、祖父に愛されるため。病院のベッドでオレに助けを求める父を母の期待に応えて拒んだのはオレが4歳の時だったか。それから間もなく父は病院の屋上から飛び降りた。オレは父を殺したのだ。
伯父によると、山上容疑者の父親は、容疑者が4歳のときに自殺。兄は小児がんを患ったといいます。こうしたことをきっかけに、母親は山上容疑者が小学生の頃、旧統一教会に入会したといいます。この日の投稿には、そんな母親に対する恨みも、繰り返し綴られています。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
オレは母を信じたかった。それ故に兄と妹とオレ自身を地獄に落としたと言われても仕方がない。
オレは事件を起こすべきだった。当時話題だったサカキバラのように。それしか救われる道はなかったのだとずっと思っている。
神戸連続児童殺傷事件の加害少年を持ち出し「事件を起こすべきだった」と綴った山上容疑者とみられる人物。
母親と祖父のトラブル…家族崩壊の状況綴る
さらに、約1カ月後には、母親と祖父のトラブルが綴られていました。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた。70を超えてバブル崩壊に苦しむ祖父は母に怒り狂った、いや絶望したと言う方が正しい。
祖父はオレ達兄妹を集め、涙ながらに土下座した。自分の育て方が悪かった、
オレはあの時何を思えばよかったのか、何を言うべきだったのか、そしてそれからどうするべきだったのか、未だに分からない。
裕福だったという祖父の援助を旧統一教会につぎ込んでいたという母親。さらに、事態は悪化の一途を辿ります。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
根本的に家族として崩壊したまま、現実は上滑りしていった。あの破綻以来、徐々に勉強は分からなくなっていったが、それでも祖父が周囲に自慢できるほどの進学校には進んだ。
混乱し誤魔化し続けた現実のまま、ある日祖父は心臓発作で亡くなった。これまで祖父の目を盗んで金を統一教会に流していた母を咎める者はもういない。
家庭が崩れていった状況を詳しく綴ったツイート。
安倍元首相についても繰り返し言及
そして、山上容疑者は、安倍元首相についても繰り返し言及しています。2020年の8月、病気を理由に退陣を表明した直後には…
山上容疑者のものとみられるツイッター:
安倍政権のやり方が常に正しかったとは全く思わないが、結果として正しかった事を評価できなければその正しさは失われる。安倍晋三という人間の政治手法を否定する為に結果まで否定する必要はない。安倍政権の功を認識できないのは、致命的な歪み。
安倍元首相との関係について、11日、旧統一教会の田中富広会長は「友好団体が主催する行事に安倍元首相がメッセージ等を送られたことはございます。ただ、宗教法人世界平和統一家庭連合の会員として安倍元首相が登録されたこともありませんし、また、顧問にもなったことはございません。明確にそこは申し上げたいと思います」と会見で述べました。
安倍首相の辞任から約4カ月後、2020年10月頃から、派遣社員として、京都の工場で働き始めた山上容疑者。
山上容疑者のものとみられるツイッター:
継続反復して若者の無知や未熟に付け込んで利用して喜んでるような奴は死ねばいいし死なねばならない。生かしとくべきではない。
この数カ月後、去年春ごろから山上容疑者は、銃の製造を始めたとみられています。そして、その頃のツイッターには…
山上容疑者のものとみられるツイッター:
最近の不運と不調の原因が分かった気がする。当然のように信頼していた者の重大な裏切り。
こういう裏切りは初めてではない。25年前、今に至る人生を歪ませた決定的な裏切りに学ぶなら、これは序の口だろう。オレも人を裏切らなかったとは言わない。だが全ての原因は25年前だと言わせてもらう。なぁ、統一教会よ。
次第に旧統一教会に対する記述は減り、2022年はそのような投稿はみられませんでした。
1363件の投稿 犯罪心理学専門家が分析
一連の投稿から、どのような心の動きが見えてくるのでしょうか。犯罪心理学の専門家は…
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
彼(山上容疑者)が、だんだんと革命家気取りになっていった。
世の中に対して自分は立ち上がるっていう、そういう発想かなという気がしますね。
投稿を通して、彼の怒りだけではなくて、悲しみとか迷いとか決意とか色々なものを感じますね。
めざまし8が調べたところ約2年9カ月の間に投稿した1363のツイートのうち、家族・母親に関する投稿が26件。安倍元首相については25件。そして旧統一教会については35件に及んでいます。一番多かったのは時事問題について、388件ツイートがありました。
どういった内容をつぶやいていたのかというと、ロシア問題、憲法改正について、そして給付金の誤送金について、さらにコロナ問題などがつぶやかれていました。
時事問題についてのツイートが多いことからは、どんなことが読み取れるのでしょうか。
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
彼は自分が宗教によって親によって、惨めな人間ではなくて、知的で世の中のことが分かっている人間なんだということを主張したかったのだと思います
母親への想い「振り向いてほしい強い気持ちがあるのでは」
事件のきっかけとなったと山上容疑者が供述している母親について。山上容疑者のものとみられるツイートから、碓井さんが注目したのは「常に母の心は兄にあった」という文言です。山上容疑者は5人家族で、父は1984年に死去、兄は小児がんを患い片目失明。
ツイートには「母を信じたかった」「母に愛されるため」「努力した。母のために」という内容がありました。碓井さんは「今でも母親に振り向いてほしい強い気持ちがあるのでは」と分析しています。
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
強い母への思いがあるからこそ、母をこんなにしてしまった統一教会への怒り、恨みがあったのではないかと思います。
(ツイートから母に宗教をやめてくれといった働きかけ等は)見受けられませんし、おそらくもっと小さい頃から、母に捨てられないためには母について行くしかない。母を肯定していくしかないという思いはあったのかなと思います。
そういった思いがいきなり安倍元首相を撃つということへの飛躍について碓井さんは。
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
小さいうちは母について行くしかないと思ったんでしょうけれども、大きくなってもっと力を得たときになんとかしたいとは思った。ただ、そのなんとかしたいというのが、一歩ずつ地道な努力をしていくのではなくて、一挙に解決して行くしかないと思ってしまったのかなと感じます
安倍元首相に対する否定的な投稿は少ない
さらに山上容疑者のものとみられるツイッターを分析していくと、安倍元首相へのツイートもありました。
「安倍政権に言いたい事もあろうが、統一教会と同視するのはさすがに非礼である」
「安倍政権の功を認識できないのは致命的な歪み」
「安倍晋三という人間の政治手法を否定するために結果まで否定する必要はない」などというもので、実は安倍元首相に関する否定的なツイートは少なかったのです。
一方、旧統一教会に関するツイートは「統一教会のおぞましさに比べれば多少の政治的逸脱など可愛いものだ」といった内容です。
碓井さんは「多くの発言から憎しみが感じ取れるが指導者を激しく批判するものは少ない」と分析しています。理由としては1つ目、母親に気を使った可能性があるのではないか。2つ目、復讐心をどこに向けたらいいのか分からないでは、ということです。
では山上容疑者はなぜ母親や教団に対して直接的な行動に出るのではなく、憎しみが安倍元首相に向かったのでしょうか。
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
安倍元首相に対する感情としては支持できる部分は大いにある。大いにあるからこそ、裏切られたという感覚が強かったのかなと思います。そして、この行為は個人的な恨みなどではなく、統一教会に苦しめられている全体を救うのだというようなゆがんだ思想になっていってしまったのではと思います。
革命的な野心が芽生えた?“革命”題材映画に関する投稿も
碓井さんはこのようなことも分析しています。
山上容疑者のものとみられるツイッターには『レ・ミゼラブル』『ジョーカー』といった“革命”を題材とする映画に関するツイートがありました。「革命が足りなかったのでは」「革命的な何かが起こると思う」といった内容のツイートから碓井さんは「間違ったことを正さないといけないという革命的な野心が芽生えたのでは」と分析しています。
山上容疑者がため込んでいた思い。こういったことを繰り返さないためにもどんなことが重要になるのでしょうか。
新潟青陵大学大学院 碓井真史教授:
普通の宗教は個人を大切にしますが、個人ではなくて組織の方を重視してしまうのがいわゆるカルト宗教というものです。山上容疑者はいろいろ語っているんですけれども、本当に自分が辛い家庭崩壊ということを誰かと共有することができていない。共感してもらえていないと。そういう扱いにくい悩みではあるけれども、宗教の問題もちゃんと受け止めることができて、こんなことをしなくてもちゃんと地道に一歩一歩社会のその問題を解決していけていればということを皆さんに伝えたい、そういう社会にしなければいけないと思っています。
(めざまし8 7月19日放送)
(FNNプライムオンライン7月19日掲載。元記事はこちら)
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