効果音もつくるサウンドプログラマー。
企画開発部では、新規ゲームタイトルの企画や開発などをおこなっています。私はその中で、“音”全般を扱うサウンドグループに所属しています。グループのメンバーには、作曲を担当するコンポーザー、効果音や音を鳴らすためのシステムをつくるサウンドプログラマーがいて、それぞれゲームタイトルごとのプロジェクトチームに分かれて仕事をしています。私はサウンドプログラマーを担当していますが、ゲームのシーンに合わせた効果音を作成する仕事だけでなく、BGMや効果音をゲームの状況に合わせて変化させるプログラムをつくるような仕事もしています。
犬に飼い主の声を覚えさせる音声照合をパワーアップ。
入社後、最初に任されたのがニンテンドー3DSの『nintendogs+cats』というソフトの効果音の作成と、ゲームに登場する犬にプレイヤーの声を覚えさせるための音声照合処理のプログラムでした。音声照合は、あらかじめ音声の分析データを登録しておいて、プレイヤーが発した音声と同じかどうかを判定するような仕組みです。もともと前作『nintendogs』から音声照合の機能はついていましたが、より正確に声の違いが判別できるよう、音声照合の性能を高めたいという目標がありました。いろいろな人の声やしゃべり方のデータをとったのですが、話者によってはなかなか思った通りに反応しなかったりして、調整するのに苦労しました。解決策が見つかるまでトライ&エラーの繰り返しでしたが、大学時代の音声処理の研究も活かせて、完成したときの達成感は忘れられません。
プレイヤーにとって、気持ちのいい音づくり。
ゲームの効果音を作成する際は、ディレクターからの依頼もありますが、実際に制作中のゲームで遊んでみて「このシーンでこういう音が鳴っていれば、プレイヤーのテンションがもっと盛り上がるはず」と、サウンド担当者が音の演出を考えながら制作していくケースが多いです。たとえばキャラクターが変身したら今までのBGMをよりテンションの高いBGMに変化させるとか、剣を振り下ろす音がよりリアルに感じられるようにする工夫など、プレイヤーの気持ちになってアイデアを出していきます。少し前に、『ファミコンリミックス』というソフトの効果音を担当したのですが、ステージをクリアした瞬間「気持ちいい!」と感じられる音の演出を考えました。また、すぐに次のゲームに移りたいプレイヤーも多いので、テンポ良く次へ進めることも意識して音づくりをしました。
“手触り感”を大切にWii U本体メニューの音設計。
仕事はゲームのサウンド演出だけではありません。サウンドグループでは、ゲーム機に内蔵される本体起動時のメニュー画面(HOMEメニュー)などのサウンドも制作します。ゲームの音は「面白さ」を追求しますが、HOMEメニューの音は、ゲーム機をより快適に使っていただくことを意識して制作を進めていきます。ゲーム機のイメージを決定づける大事なサウンドでもあり、ゲーム本編とHOMEメニューとのバランスや、お客さんがゲーム機をどのようなシチュエーションで使って遊ぶかを考えながら設計する必要があります。
私はWii Uメニューの音を担当しましたが、従来機のWiiの音のイメージが特徴的だったので、そのイメージを受け継ぎながらWii U独自の新しい音をつくりたいと思っていました。たとえば、Wii UメニューのBGMでは、ゲームを始める前は少しワクワクしてもらえるような感じを出しつつ、ゲームをしないで放置されたときもうるさく感じられないように、曲をつくるコンポーザーと相談しながら、BGMが滑らかに変化していくような仕組みを考えました。
Wii Uではそのほか、ボタンを押した瞬間に出る音の作成も担当しました。こだわったのは、ボタンの見た目や触り心地にフィットしていて、鳴ったときに気持ちいい“音の手触り感”です。「気持ちいい」「新しい」と感じてもらえる音を追求して、プロジェクトのほかのメンバーや上司などに聞いてもらって意見をひろい上げては、何度もつくり直しました。とても短い音ですが、ゲーム機のイメージに関わる音なので丁寧に時間をかけて制作することで、納得のいく音が作れたと思います。
メニューと同時にサウンドも着せ替え。
Newニンテンドー3DSの本体メニューも担当しました。お客様の好みに応じたテーマでHOMEメニューをきせかえられる新機能が発案されたとき、「HOMEメニューのデザインがきせかわるなら、BGMや効果音もきせかえられた方が商品の魅力が高くなる」と思ったのです。これを実現するにはどの音とどの音を差し替えればいいか、システム的にどうすれば差し替えられるのか、Wii U本体メニューでの経験を活かして模索していきました。曲をつくるコンポーザーはもちろん、ディレクター、デザイナー、プログラマー、さらに営業担当など、さまざまな部署や職種と連携しました。サウンドプログラムの枠を超えた仕事が多かったですが、自分の成長につながる良い経験になったと思っています。
音づくりと仕組みづくり両立の醍醐味。
「音づくりと仕組みづくりを両立させるのは大変では…」と思う人もいるかもしれませんが、私はメリットの方が大きいと思っています。自分でつくった音を自分で演出することができれば、「こういう音をつくって、こういうふうに鳴らしてみよう。こんな変化をつけてみよう」と、アイデアの幅も音のバリエーションも広がります。
「こういう音をつくりたい」という人だけでなく、「この音をこういう仕掛けで鳴らしてみたい」というような、音を使った表現方法まで自分で考えてやってみたいという人には最適の職場かもしれません。「どうやったらお客様に楽しんでもらえたり、驚かしたりできるだろう」ということを考えながら、音やそれを鳴らすための仕組みをつくっていくのは、大変なこともありますが、とても楽しい仕事だと思います。
任天堂ならではのより良いサウンドを求めて。
どんなプロジェクトにも全力で取り組んできましたが、一つの仕事が終わるたびに、「次のプロジェクトでは、もっとこうしたい」と新しい意欲が湧いてきます。これからも、どうすればもっと良いサウンドがつくれるだろう、もっと効果的で面白い表現ができるだろうと考えながら、任天堂ならではのサウンドを追求していきたいと思います。