ロシア国債、利払い「不履行」認定 国際金融団体
【ロンドン=篠崎健太】世界の主要金融機関で構成するクレジットデリバティブ決定委員会は1日、ロシアのドル建て国債の利払いに不履行が生じたとの判断を示した。30日間の猶予期間中に完了した元利金の支払いを巡り、当初の期日から遅れた分の利息が上乗せされなかったのは不払いにあたるとの投資家の主張を認めた。事実上、デフォルト(債務不履行)となる見通しだ。
決定委員会は、支払いの不履行が発生したかとの投資家の質問に対し「発生した」との決定文を公表した。発行時の約束通りに利払いなどが実行されないクレジットイベント(信用事由)にあたるとの判断を示した。
対象は4月4日が償還日だった国債だ。欧米の制裁で元利金を当初支払えなかったものの、最終的に猶予期間中に投資家に渡りデフォルトは避けられたとみられていた。だが一部の保有者が遅延分の金利が払われなかったことを問題視した。
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ロシア国債はルーブル建てでは1998年の財政危機時にデフォルトに陥った。外貨建てでデフォルトとなれば、ロシア革命直後に債務不払いを宣言した1918年以来1世紀ぶりとなる。
デフォルトは一般に債務者が返済不能を宣言するか、信用格付けがデフォルトの水準に引き下げられることでも判断される。ロシアは現時点で債務履行の意欲と能力を宣言し、主要格付け会社は欧米の経済制裁に従って格付けを止めている。このため信用事由の発生を認定する決定委員会の判断が焦点になっていた。
当該債券の保有者は、期日を過ぎた分の利息としておよそ190万ドル(約2億4千万円)を受け取る権利があると主張した。この支払いがないことがクレジットイベントに該当するかどうか委員会に判断を要請した。協議は5月27日と31日の2度開かれたが結論は持ち越されていた。
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(更新)- 鈴木一人東京大学 公共政策大学院 教授分析・考察
ついにデフォルトがクレジットデリバティブ決定委員会で認定された。これでロシアは外債を発行することが出来なくなる。まだルーブル建ての国債は出せるので、ロシア国内では戦費の調達をすることはできるだろうが、それも早晩限界が来るだろう。ロシアが制裁で音を上げて戦争を止めるという方向に行くのか、それとも強権を発動して、国家総動員令のような形で国民を窮乏させてでも戦争を継続するのか、という段階に入ってきた。果たして、これから戦争を長期化させてロシアがより窮乏していく状況となるのだろうか。
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(更新) - 滝田洋一日本経済新聞社 特任編集委員ひとこと解説
本件については関連記事「ロシア国債、早まった異例の「不履行」 孤立を象徴」が重要な点を指摘しています。①債務者のロシア政府は支払う意思があると繰り返し強調し、豊富な外貨準備を抱えて能力にも問題はなかったが、②欧米の制裁で手続きが阻まれた――ということです。 ②は言い換えれば、ロシアをデフォルトに追い込もうとする米当局の意図が最初にあり、それを搦め手から実現したことになります。①が物語るのは、経済制裁に対して強気の発言を繰り返していたロシアが、ことマネーの世界では国際金融市場から締め出されるのを恐れていたという事実です。ウクライナでの戦況に目を凝らす中国に対しても、少なからぬメッセージでしょう。
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