私、Alec(アレック)が西洋式の浄化呪文として唱えている呪文は、西洋魔術で『γραφ(グラフェー=聖句 )』と呼ばれているものです。
『生ける神の偉大なる御名によって、そして、これらの聖なる名によって…
EL ELOHIM
ELOHO ELOHIM
SEBAOTH ELION
EIECH ADIER
EIECH ADONAI
JAH SADAI
TETRAGRAMMATON SADAI
AGIOS O THEOS ISCHIROS ATHANATON
AGLA AMEN』
近代西洋儀式魔術に於いて、この『γραφ(グラフェー=聖句 )』と呼ばれる呪文は、アブラハムの宗教(ユダヤ/キリスト教)でいうところの『聖水』を作成する際の「Purification(ピューリフィケーション=浄化)」に用いたり、或は『Talisman(タリスマン=西洋風の御守り)』や『Amulet(アミュレット=護符)』を作成する際、或は『天使』を召喚(強制召喚)する為に用いて、唱えられている呪文です。
古代イスラエルのユダヤ人は、ヘブライ人とも称され、ヘブライ語を公用語として使用しており、古代イスラエルより発祥したアブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教)の古い書物は、全てヘブライ語で書かれています。
キリスト教が世界に広まる頃には、旧約聖書などの古い書物が、その頃に広く流布していたギリシャ文字に音訳されたり、ローマ帝国の公用語であるラテン語に翻訳されたりした為、キリスト教系の祭文などは、ヘブライ語、ギリシャ語、ラテン語が混在する様になっています。
中でも、この『γραφ(グラフェー=聖句 )』は、言語の混在の典型的なものです。
実際、呪文や祭文というものは、どの言語で唱えるかは、あまり重要ではありません。
呪文や祭文というものは、意味不明な言葉の羅列ではなく、文章の文言自体が、とても重要なものであり、文章の内容を理解して唱えなければ、意味不明なだけの只の音の羅列でしかありません。
そこで、ここに挙げた、この『γραφ(グラフェー=聖句 )』と呼ばれる呪文の内容を理解して頂く為に、日本語に訳して解説してみましょう。
その為、先ずは、読み方から説明して行きましょう。
『EL(エ-ル)ELOHIM(エロヒム)
ELOHO(エロ-ホ-)ELOHIM(エロヒム)SEBAOTH(セバオス)
ELION(エリオ-ン)EIECH(エイエク)ADIER(アディエル)EIECH(エイエク)ADONAI(アドナイ)
JAH(ヤー)SADAI(シャダイ)
TETRAGRAMMATON(テトラグラマトン)SADAI(シャダイ)
AGIOS(アギオス)O(オー)THEOS(テオス)ISCHIROS(イシュイロス)ATHANATON(アサナトン)
AGLA(ア-グラ)AMEN(アーメン)』
次に各々の単語を和訳して解説します。
◎『EL(エ-ル):אה」
訳:「神」●この言葉はヘブライ語の普通名詞として「神」を意味しますが、アブラハムの宗教は唯一神信仰の為、最高神の名称として固有名詞的にも用いられ、旧約聖書(出エジプト記20:7)に登場する「YHVH(Yahveh/Jahveh/Yehowah/Jehovah=ヤハウェ/イェホヴァ/エホバ):יהוה」と呼ばれる最高神の事を指しています。
また、「Michael(ミカエル):מיכאל」、「Gabriel(ガブリエル):גבריאל」、「Raphael(ラファエル):רפאל」、「Uriel(ウリエル):אוריאל」、などのヘブライ語に由来した天使の名前に含まれる「~el(~エル):אל〜」は、本来は「~の神」を意味していましたが、アブラハムの宗教が台頭し、唯一神信仰に代わると「神の~」といった意味に転化して行きました。
◎『ELOHIM(エロヒム):אלוהים』
訳:「神々(神と天使達)」
●本来の「Elohim(エロヒム):אלוהים」は、ヘブライ語「El(エ-ル=神):אה」の複数形であり、「神々」の事を指しますが、神とその眷族達の事も「神々」と呼びます。唯一神信仰であるアブラハムの宗教では、最高神「YHVH(ヤハウェ/エホバ):יהוה」が唯一の神ですので、この場合は、「神」と、その眷族である「天使達」を指しています。
◎『ELOHO(エロ-ホ-)』
訳:「永久(とこしえ)なる世の」
●ヘブライ語の「El(エル=神)」と「Oho(オーホー=世代)」を合わせた言葉で、直訳すれば「神の世代」ですが、神の世は永久(とこしえ)である故、「永久(とこしえ)なる世」という語彙を持っています。
◎『SEBAOTH(セバオス)』
訳:「万軍の」
●ヘブライ語の「Tzabaoth(ツァバォト=万軍の)」のギリシャ語音訳であり、最高神「YHVH(ヤハウェ/エホバ):יהוה」の別名または称号とされる『YehowahTzabaoth(イェホヴァ・ツァバォト=万軍の主神エホバ)」の事を指していますが、神の名前は妄りに発してはならないとされている為、「ElohimTzabaoth(エロヒム・ツァボアート=万軍の神々)」と表現される事もあります。
◎『ELION(エリオン)』
訳:「永遠の神」
●ヘブライ語の「El(エル=神)」とラテン語「Aion(アイオン=永遠)」の合成語である「Elion(エリオン=永遠なる神)」は、最高神「YHVH(ヤハウェ/エホバ):יהוה」を指す言葉です。
◎『EIECH(エイエク)ADIER(アディエル)』
訳:「栄光に満ちたる」
●「Eiech(エイエク)」は「栄光」を表す言葉で、「Adier(アディエル)」は「満ち溢れる」といった意味です。
◎『EIECH(エイエク)ADONAI(アドナイ)』
訳:「栄光なる主」
●「Adonai(アドナイ)」は本来のヘブライ語に於いては、「主人」を指す言葉であり、最高神「YHVH(ヤハウェ/エホバ):יהוה」を指しており、本来は「AdonaiJahveh(アドナイ・ヤハウェ=主、ヤハウェ)」と記されるべきですが、神の名前は妄りに発音してはならないとされている為、この言葉が用いられます。
◎『JAH(ヤー)SADAI(シャダイ)』
訳「全能なる神」
●「Jah(ヤー):יה 」は、「Jahveh(ヤハウェ):יהוה」の略であり、最高神「ヤハウェ(エホバ)」を指しておりますが、神の名前は、妄りに発音してはならないとされていますので略して隠語として用いていています。
また、「Sadai(シャダイ)」は、「全能なる者」を表しており、「Jah(ヤー)Sadai(シャダイ)」の意味は「全能なるヤハウェ(エホバ=神)」という意味になります。◎『TETRAGRAMMATON(テトラグラマトン)』
訳「口にすべからざる神名(神聖四文字の神名)」
●ギリシャ語の「τετρα:tetrarch(テトラ=四大の)」と「γραμμα:gramma(グラマ-=書物や文字)」を合わせた『τετραγρμματον(TetraGrammaton=テトラグラマトン=神聖四文字)』とにいった意味になっており、神の名前は妄りに発音してはならないとされていますので、最高神「YHVH(ヤハウェ/エホバ):יהוה」を指す「神の名」に用いられたヘブライ語の4文字[Y(Yod:ヨッド):י ・H(He:ヘー):ה・V(Vav:ヴァウ):ו・H(He:ヘー):ה]を述べる為の言葉としていられました。
因みに…別名のエホバの名前は、旧約聖書に元々表記されていたYHVH(ヤハウェ)という文字に、ADONAI(アドナイ=主)の母音の記号であるa,o,aが添付されて、YaHoVaH(イェホヴァ=エホバ)と発音される様になったもので、YHVH(ヤハウェ=三位一体の神の名)を妄りに発音してはならないとされていますのでその為の工夫が為されている訳です。更に、ヘブライ文字のY(Yod:ヨッド)・H(He:ヘー)・V(Vav:ヴァウ)・H(He:ヘー)は世界を構成する四大元素にも対応しており、各々がY(Yod:ヨッド=Fire:火)・H(He:ヘー=Water:水)・V(Vav:ヴァウ=Wind:風)・H(He:ヘー=Earth:地)のElement(エレメント=元素/要素)を表すと共に、至高なる父・至高なる母・息子・娘(花嫁)を表しており、それ故、これに精霊を加えた五芒星は四大を制する鍵だとも云われています。
また、魔術の術式のひとつである、Tetragrammaton(テトラグラマトン)の術式に於いてのY(Yod:ヨッド)・H(He:ヘー)・V(Vav:ヴァウ)・H(He:ヘー)とは、Y【火・父(男根)】とH【水・母(女陰)】の結合によりV【風・息子】と極相である最終形のH【地・娘】が産まれる過程を表しており、Tetragrammaton(テトラグラマトン)をQuabbalah(カバラ)のSephiroth(セフィロト)に対比させるならば、Cochma(コクマー=知恵)・Binah(ビナー=理解)・Tiphreth(ティファレト=美)・Malchut(マルクト=王国)で、このセフィラどうしを結ぶ線が十字になります。
つまりY(Yod:ヨッド)・H(He:ヘー)・V(Vav:ヴァウ)・H(He:ヘー)のTetragrammaton(テトラグラマトン=四大神聖文字)は、森羅万象の事象に於ける四大要素を表しており、それを読み解く事がKabbalah(カバラ)の真髄な訳で、これらの事から、Tetragrammaton(テトラグラマトン=四大神聖文字)とは、「口にすべからざる神名(主の御名)」という意味となります。
参考にTetragrammaton(テトラグラマトン)の各々の象徴するものを挙げておきました。
▲ラテン文字(読み)
象徴と対応する元素
対応するSephiroth(セフィロト)
対応するトランプのDeck(デッキ)に於けるSuit(スート)
対応する魔術や式祭に於ける道具
象徴する宝石
▲Y(Yod:ヨッド):י
Cochma(コクマー=知恵)
Atziluth(アツィルト)元型界(最初の世界)
トランプの
Wands(ワンド=棒/杖)
Ruby(ルビー=紅玉)
▲H(He:ヘー):ה
母(女陰)を象徴し、Water(水)に対応する
Binah(ビナー=理解)
Briah(ブリアー)創造界
トランプの
Cup(カップ=水を注いだ杯)
Sapphire(サファイア=青玉)
▲V(Vav:ヴァウ):ו
息子を象徴し、Wind(風)に対応する
Tiphreth(ティファレト=美)
Yetzirah(イェツィラー)形成界
トランプの
Sword(スウォード=剣)又はDagger(ダガー=短剣)
Emerald(エメラルド=翠玉)
▲H(He:ヘー):ה
娘を象徴し、Earth(地)に対応する
Malchut(マルクト=王国)
Assiah(アッシャー)行動界
トランプの
Disk(ディスク=魔法陣を書いた円盤)又はCoin(コイン=硬貨/金貨)
Topaz(トパーズ=黄玉)
その他にも最高神YHVH(ヤハウェ/エホバ)を表す言葉は…
▲『A(エー)・H(ヘー)・I(イェ)・H(ヘー)』
訳「在りて在ろうもの」
▲『ElohimGibor(エロヒム・ギボール)』
訳「力ある神」
などがあります。
◎『AGIOS(アギオス)O(オー)THEOS(テオス)ISCHIROS(イシュイロス)ATHANATON(アタナトン)』
▲ギリシャ語の祈祷文に於いて、『アギオス・オ・セオス、アギオス・イスヒロス、アギオス・アサナトス、エレイソン・イマス』というものがあり、そこからの引用になっています。
○『AGIOS(アギオス)O(オー)THEOS(テオス)』
訳「聖なる神」
●ギリシャ語「Agios o Theos(アギオス オー ゼオス=神聖なるゼウス)」をラテン語に訳したもので、ゼウスを最高神YHVH(ヤハウェ/エホバ)の名前の隠語として訳さず使っています。
○『ISCHIROS(イシュイロス)』
訳「イクトゥス(イエス・キリスト)」
●ギリシャ語「Ixthus(イクトゥス=魚/魚座)」のラテン語訳で、イエスの時代には、春分点が魚座にあり、これはその事を表しており、その為、「イクトゥス(魚)」は一般にもイエスやキリスト教徒の象徴として屡々(しばしば)用いられ、キリスト教徒は、バプテスマの水によって生きる事からも「魚」に比喩されていました。
因みに、イエス・キリストを表す言葉は、『BenElohim(ベン・エロヒム)』
訳「神の子」
という語もあります。
○『ATHANATON(アタナトン)』
訳「不死なる神」
●ギリシャ語「アサナトス」のラテン語訳で、ギリシャ語では、否定する接頭辞の「ア」がついた「サナトス(死の神/死)」と表現すると、文字通り「不死」の事を指したもので、「不死なる神」を表しています。
▲『AGIOS(アギオス)O(オー)THEOS(テオス)ISCHIROS(イシュイロス)ATHANATON(アタナトン)』
訳:「聖なる神、イエス・キリストと不死なる神」
◎『AGLA(ア-グラ)』
訳「汝は偉大にして永遠なる主よ」
●アブラハムの宗教の信徒であるキリスト教徒やユダヤ教徒が祈祷(きとう)などで唱える言葉である『Atah(アテー=汝)Gibor(ギボール=偉大)Leolam(レオーラム=永遠)Adonai(アドナイ=主)』の事で、「Atah Gibor Leolam Adonai(アテー・ギボール・レオラーム・アドナイ=汝は偉大にして永遠なる主よ)」をNotarikon(ノタリコン=省略法)と呼ばれるKabbalah(カバラ)の秘匿の暗号化方法で略してA(アテー)G(ギボール)L(レオラーム)A(アドナイ)として使われています。
◎『AMEN(アーメン)』
訳「誠に、斯(か)く在れかし[そうで在ります様に]」
●アブラハムの宗教の信徒であるキリスト教徒やユダヤ教徒が祈祷(きとう)や賛美歌、信条告白の終わりなどに唱える言葉で、アーメンの語源や由来としては、「誠に(本当に)」という意味のヘブライ語の「Amen(アェメン)」に由来しますが、これは、キリスト教で、祈祷の時に唱える有名な詞「Adonai melekh namen(アドナイ・メレク・ナーメン=主にして信仰深き王よ)」をノタリコン(省略法)で暗号化したもので、A(アドナイ)ME(メレク)N(ナーメン)としたもので、「主にして信仰深き王」とは、イョシュア(イエス・キリスト)を指す言葉です。
世界各地で「アーメン=誠に、斯く有れかし」の意味として用いられ、キリスト教が世界中に布教された時、アーメンという言葉は各国の言葉に翻訳せず、そのまま使われる事になりました。
『EL(エ-ル)ELOHIM(エロヒム)
ELOHO(エロホ-)ELOHIM(エロヒム)SEBAOTH(セバオス)
[神よ、神々(神と天使達)よ、永久(とこしえ)なる世の万軍の神々よ、]
ELION(エリオ-ン)EIECH(エイエク)ADIER(アディエル)EIECH(エイエク)ADONAI(アドナイ)
[永遠の神、栄光に満ちたる、栄光の主よ、]
JAH(ヤー)SADAI(シャダイ)
TETRAGRAMMATON(テトラグラマトン)SADAI(シャダイ)
[全能なるヤー(神)、口にすべからざる神名(神聖四文字の神名)の全能なる神よ、]
AGIOS(アギオス)O(オー)THEOS(テオス)ISCHIROS(イシュイロス)ATHANATON(アタナトン)
[聖なる神、イエス・キリストと、不死なる神よ、]
AGLA(ア-グラ)AMEN(アーメン)
[汝、偉大にして永遠なる主よ、誠に、斯く有れかし]』
という意味になります。
聖句の和訳全文
『神よ、神と天使達よ、永久(とこしえ)なる世の万軍の神々よ、永遠なる神、栄光に満ちたる、栄光の主よ、全能なるヤー(神)よ、口にすべからざる神名の全能なる神よ、そして、聖なる神、イエス・キリストと、不死なる神よ、偉大にして永遠なる主よ、誠に、斯く有れかし』
この様に、完全に日本語に訳せば、聖句と呼ばれているこの祭文は、YHVH(ヤハウェ/エホバ)とナザレのヨシュア(イエス・キリスト)を讚美崇拝する祭文であり、これを詠唱する事によって、神の力を借りて、人間の霊(魂)の能力だけでは出来ない浄化や召喚を行う訳です。
従って、聖句は、内容を理解し、YHVH(ヤハウェ/エホバ)やヨシュア(イエス・キリスト)に対して「崇敬の念」を抱く必要があり、何も意識せずただ「エル エロヒム…」と唱えても意味の無い音の羅列にしかならないので、唱える時には、ここに記した日本語の『内容』を意識して唱えて下さい。