スリランカ大統領、日本に債権国会議の呼びかけ要請へ
【コロンボ=花田亮輔】経済危機に直面しているスリランカのウィクラマシンハ大統領は18日、同国の債権国による会議の呼びかけを日本に求める意向を示した。ロイター通信が報じた。9月に日本を訪れて岸田文雄首相と会談する方針も明らかにした。
ウィクラマシンハ氏はロイター通信の取材に対し「誰かが主な債権国に呼びかけ、招く必要がある。われわれは日本に要請する」と語った。
かねて経常赤字に直面していた同国は4月、経済再建策がまとまるめどがつくまで対外債務の返済を一時停止すると発表していた。国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請する一方で、中国や日本、インドなどとの債務再編も焦点となっている。
スリランカ政府のデータによると2021年4月末時点で、同国の対外債務のうち47%は市場からの借り入れで、13%はアジア開発銀行が占める。中国と日本に対する債務がそれぞれ10%で、インドは2%だった。
スリランカでは経済危機に伴う政府への抗議活動が激化し、ラジャパクサ前大統領が7月に辞任に追い込まれた。首相などを務めてきたウィクラマシンハ氏が同月下旬に、新たな大統領に就いた。
中国寄りの姿勢が指摘されていたラジャパクサ前政権時代には、日本政府と合意していた開発計画が不透明な理由で撤回されたこともあった。ウィクラマシンハ氏は3日の議会演説で「日本政府との伝統的な友好関係にも悪影響が及んでいる」と前政権を批判するなど、日本との関係改善にも意欲を示している。
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(更新)- 慎泰俊五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役ひとこと解説
ちょうどコロンボにいます。ガソリンの配給制が少し改善したため、首都コロンボにはそれでもある程度車が通っています(とはいえ3年前の3割ほどしか通っていません)。ウーバーの価格は3.5倍くらいになり、それでも車が見つりにくいという状況です。 IMFのスリランカ支援条件は債権国とのリストラ協議が行われることです。大口債権者が中国・日本・インドで、インド・日本は、ラジャパクシャ政権の中国優遇のために冷や水を浴びせられてきた経緯もあります。このような状況のなか、相対的にはまだ友好的な日本に取り持ってもらわない限り解決は望めないでしょう。
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(更新) - 鈴木一人東京大学 公共政策大学院 教授分析・考察
スリランカとすれば、経済危機になったにもかかわらず支援の手を伸ばさなかった中国、しかもその経済危機を招いたラジャパクサ首相と大統領の兄弟と深い関係にあり、腐敗を進行させた相手。ウィクラマシンハ大統領としては、中国に依存するような状況になれば、同じ轍にはまると懸念したのであろう。中国の調査船「遠望5号」がハンバントタ港に入港するのも一時止めたのは、それをテコに債務再編をすることを求めたからで、中国は渋々対応した。インドでも中国でもない相手で最大の債権国は日本なので、依頼が来たと思うが、これをチャンスにスリランカと中国の距離を生み出し、IMFの支援が得られるような支援をしていくべきだろう。
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(更新) - 高橋徹日本経済新聞社 編集委員・論説委員ひとこと解説
スリランカを巡る中印の綱引きをみれば、大口債権者の中で日本に会議の発起人の役回りを要請するのは妥当といえます。カギを握るのは中国です。スリランカ財務省の公表数字では、対外債務に占める中国の割合は日本とほぼ同じ1割程度ですが、いわゆる「隠れ債務」を含めると2割に膨らむとの試算があります。中国は多国間協議に消極的でしたが、ザンビアではフランスとの共同議長として債権者委員会への参加を表明しました。国際協調の枠組み下で、新興国の債務問題の解決に踏み込む動きがスリランカにも広がるのか、要注目です。
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