KURS(コース) /
近畿生コン関連協議会

独占連載「偽装労組」

連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。

連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。

  1. Vol.1 暴かれた虚像

2019.08.30

Vol.1 暴かれた虚像

Vol.1 偽装労組を暴く

労働組合の名を騙(かた)り、建設関連企業に対して本来の組合活動とは程遠い「恐喝」や「威力業務妨害」などの反社会行為に及び、2018年7月17日の摘発から2019年8月20日までの1年あまりの間に、前代未聞の延べ86名の逮捕者を出している、「連帯ユニオン関生支部」事件。
現在も捜査や裁判が続けられるなか、KURS(コース=近畿生コン関連協議会)では、同労組の正体を暴くべく、この事件の詳細を連載記事としてお届けする。

「労働組合」運動史上、前例のない、大規模な組織的犯罪

半世紀近くにわたって関西の「生コン」業界に君臨し、「ドン」と呼ばれてきた武建一委員長が率いるセメント、生コン業界の労働者組織「全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)関西地区生コン支部」(大阪市西区、以下、関生支部)に対する捜査当局の摘発が昨年7月以来、1年以上も続くなど異例の事態になっている。滋賀県警に始まり、大阪、京都両府警、そして和歌山県警と、関西2府4県のうち4府県警が捜査を行うなど大掛かりな事件に発展。逮捕者は8月20日現在、恐喝未遂、恐喝、威力業務妨害及び強要未遂で延べ86人(連帯ユニオン系経営者側を含む)にも達するなど、「労働組合」運動史上、前例のない大規模な組織的犯罪行為が摘発されている。これまでにも幾度も反社会的行為で摘発されながらも存続してきた武委員長と「連帯ユニオン」関生支部は、まさに存亡の危機に立たされている。捜査当局は「関生は壊滅させる」と、引き続き徹底捜査を進める方針だ。

本来、労働者の生活と雇用、権利を守り向上させるために存在する労働組合が、これほど長期かつ大規模に摘発されるのはなぜか。背景には「労働組合」を看板に、意に沿わない生コン関連業者をありとあらゆる手段で妨害・排除し、その見返りに「中途半端ではなく、相手が二度と払えないような金額を取るべき」(冊子「労働運動の本筋からそれないこと――セメント生コン業界の改革に偽装労組はいらない」=全日本建設交運一般労働組合〈建交労〉関西支部、2009年8月発行)と法外な「解決金」を要求し、巨額の資金を得てきた「偽装労組」活動がある。そこで本記事では、「生コン業界のドン」こと武委員長と「偽装労組」連帯ユニオン関生支部とは一体何者か。その正体を暴いていくことにする。

連帯労組 関生支部の入り口を固める、滋賀県警組織犯罪対策課の警官。

準大手ゼネコンへの脅しで、同支部傘下の7人を逮捕

まずは、2018年7月、最初に摘発に乗り出した滋賀県警による捜査の概要と、その後について報告したい(年齢はいずれも逮捕当時)。

最初の摘発は、2018年7月18日の滋賀県警組織犯罪対策課による恐喝未遂容疑での摘発だ。組織犯罪対策課は、通称「組対」と呼ばれ、前身は捜査4課。つまり、警察では暴力団など反社会的勢力を取り締まる部署だ。その滋賀県警組織犯罪対策課が逮捕したのは、関生支部傘下の「湖東生コンクリート協同組合」(湖東協、滋賀県東近江市)副理事長の北川義博(59)と理事の朝夷健治(67)の両容疑者ら、そのほか同協同組合の3人と湖東協登録の生コン販売会社・近江アサノコンクリート社員の平元良治容疑者(52)ら4人。報道などによると、北川容疑者らは共謀し、2017年3月10日から同年7月3日にかけて、東近江市で行われていた清涼飲料水メーカーの倉庫建設工事をめぐり、同工事を請け負った準大手ゼネコン「(株)フジタ(本社・東京都渋谷区)」大阪支店から、生コンの調達を要請された同ゼネコン関連会社でもある大阪の商社支店長に対し、同組合登録の生コン販売会社近江アサノコンクリートと生コン供給の契約を結ぶよう要求。ことわられたため、「大変なことになりますよ」などと複数回にわたって脅した疑い。

同労組トップの武建一委員長逮捕へ、滋賀県警組対が動く

さらに同県警は同年8月9日、同恐喝未遂事件で、同支部執行委員兼政策調査部長の城野正浩容疑者(57)、湖東生コン協同組合理事長の奥宗樹容疑者(55)、近江アサノコンクリート代表取締役の金子寿男容疑者(56、大津生コンクリート協同組合副理事長)の3人を逮捕。そして同年8月28日、トップの武建一委員長(76)を恐喝未遂容疑で逮捕した。武容疑者は、さきに逮捕された湖東協幹部らと共謀し、商社支店長を脅した疑い。同県警はこの日、関生支部副委員長の湯川祐司容疑者(45)と、執行委員の松尾紘輔容疑者(37)の2人も商社支店長に対する恐喝未遂容疑で逮捕した。このうち、湯川容疑者は、武委員長の「右腕」、関生支部の「金庫番」ともよばれているキーマンの一人だ。

2018年8月28日、滋賀県警に逮捕される武建一連帯労組執行委員長。

嫌がらせ「実行部隊」15人をはじめ、次々と逮捕

同県警は、さらに、2018年12月18日、大津生コンクリート協同組合副理事長でもある「灰孝小野田レミコン」(京都市)の山本良一取締役を恐喝で在宅起訴。2019年2月5日には、「(株)フジタ」が大津市内で行っていた住宅建設工事現場で2017年2月25日と同年3月3日、現場責任者や作業員らに「道路占有許可は取っているのか」「道路が汚れている」「ブルーシートが現場からはみ出ている」などと因縁をつけ、業務を中断させたり、作業日程を変更させるなどして業務を妨害したなどとして、大原明(本名/孫 明51)、松村憲一(48)、萱原成樹(52)の3執行委員ら組合員15人を恐喝未遂容疑で逮捕した。15人は、嫌がらせを行う「実行部隊」と見られている。別に一人の逮捕状を取っていたが、入院中だったことなどから執行されていない。同月18日には、争議対策部長の西山直洋執行委員(50)を恐喝未遂容疑で逮捕した。西山執行委員は、髪を赤く染め、およそ労働組合の幹部とは思えぬ暴力的な言動で相手を脅すことで知られ、その現場がユーチューブで放映。一連の事件のキーマンの1人でもある。

「(株)フジタ」関係の2つの恐喝未遂事件での逮捕者は、のべ28人に上り、うち起訴されたのは武委員長ら26人。2018年10月から公判が始まり、大津地裁は同年11月26日、湖東協の北川義博副理事長に懲役2年執行猶予3年、同年12月28日、近江アサノコンクリートの平元社員に懲役2年執行猶予5年の判決を言い渡した。2019年4月4日には、組合員の林正幸被告に懲役1年6月執行猶予3年、同年4月25日には、湖東協副理事長の北川被告に懲役2年執行猶予3年、同理事の朝夷健治被告に保護観察付きの懲役3年執行猶予5年の判決を下している。

このうち、北川被告は公判で、検察側の被告人質問で「(協組と労組との関係を)『できれば断ち切りたかった』と説明。『いろんな寄付とかどのように断っても(労組側は)しつこくくる。(寄付するように)しつこく言われるので断れなかった』と述べた。北川被告経営の建材会社にも労組側からの嫌がらせがあった、とも話した」(「朝日新聞」2018年11月6日付朝刊)と報道されている。

恐喝未遂の公訴事実を否認している武委員長らの公判は継続中だ。

ゼネコン以外に広がる、連帯ユニオンの被害

滋賀県警は、この恐喝未遂事件以外でも、大手住宅メーカー・積水ハウス(株)(本社・大阪府大阪市)が大津市内で行っていた住宅建設工事施工現場で、現場責任者に因縁をつけ工事を妨害したとして関生支部の湯川裕司副委員長、同執行委員の城野正浩、松尾紘輔の3被告のほか、5人の組合幹部の計8人を2018年11月27日、威力業務妨害容疑で逮捕。全員が起訴され、うち組合員の水本稔被告に対して大津地裁は2019年3月26日、懲役2年6月、執行猶予3年を言い渡している。

同県警は、この他、(株)タイヨー生コン(本社・滋賀県野洲市)代表取締役に対する1,000万円恐喝事件で2019年4月11日、武委員長と湯川裕司副委員長を逮捕し、両被告とも起訴された。さらに同年6月18日には、日本建設(株)(本社・大阪府大阪市)に対する威力業務妨害で組合員4人を逮捕、全員が起訴された。同年7月17日には、(株)東横イン電建(本社・東京都大田区)に対する威力業務妨害で組合員4人を逮捕した。同年8月20日には、ネッツトヨタ滋賀(株)(本社・滋賀県大津市)による大津市内での店舗新築工事と、(株)東横イン電設の草津市内でのホテル建設工事を妨害したとして、威力業務妨害容疑で湯川裕司副委員長を再逮捕した。

滋賀県警が最初に摘発した「(株)フジタ」関連の商社支店長に対する恐喝未遂事件で武被告ら連帯ユニオン・関生支部と関係協組が使った手口とはどんなものだったのか。次回、その実態を2018年10月、大津地裁で開かれた関生支部幹部の公判での検察側冒頭陳述からあきらかにしたい。

滋賀県警が摘発した連帯ユニオン関係逮捕者リスト

■2018年

月日 被害者 罪名 氏名 年齢 役職・所属 起訴 判決
7月18日 (株)フジタ関連会社 恐喝未遂 朝夷 健治 67 連帯OB 湖東協組理事 8月8日 2019年4月25日 懲3執5
北川 義博 59 湖東協組副理事長 8月8日 2018年11月26日 懲2執3
平元 良治 52 近江アサノ社員 8月8日 2018年12月28日 懲2執5
8月9日 (株)フジタ関連会社 恐喝未遂 城野 正浩 57 執行委員 政策調査部長 8月30日
奥 宗樹 55 湖東協組理事長 8月30日 2019年4月25日 懲2執4
金子 寿男 56 近江アサノ代表取締役
大津協組副理事長
8月30日
8月28日 (株)フジタ関連会社 恐喝未遂 武 建一 76 執行委員長 9月18日
湯川 裕司 46 副執行委員長 9月18日
松尾 紘輔 37 執行委員 安田産業 9月18日
11月27日 積水ハウス(株) 威力業務妨害 木下 俊介 38 京津ブロック長 特別対策係 12月18日
萱原 成樹 52 ブロック担当 執行委員 12月18日
水本 稔 52 一般労組員 12月18日 2019年3月26日 懲2.6執3
山本 智 50 特別対策係 京宝 12月18日
中村 正晴 68 会計監査役 バード分会 12月18日
城野 正浩 57 執行委員 政策調査部長 12月18日
湯川 裕司 46 副執行委員長 12月18日
松尾 紘輔 37 執行委員 安田産業 12月18日
12月18日 (株)フジタ関連会社 恐喝未遂 山本 良一 灰孝小野田取締役
大津協組副理事長
在宅起訴

* 判決の懲は懲役、執は執行猶予。

■2019年

月日 被害者 罪名 氏名 年齢 役職・所属 起訴 判決
2月5日 (株)フジタ 恐喝未遂 松村 憲一 48 執行委員 建英 2月26日
大原 明
(孫 明)
51 執行委員 淀川ユニオン 2月26日
姫浦 覚 53 千原祥豊分室 2月26日
林 正幸 44 京宝分会 2月26日 2019年4月4日 懲1.6執3
大澤 卓司 43 北川建材分会 2月26日
越智 信之 43 バード分会 2月26日
初田 昌司 32 安田産業分会 2月26日
東 武夫 ヒコシン分会 2月26日
近藤 四一六 近酸分会 2月26日
竹長 孝一 近酸分会 2月26日
山本 浩三 朝日分会 2月26日
藤原 勝也 朝日分会 2月26日
木下 俊介 38 京津ブロック長特別対策係 2月26日
萱原 成樹 52 ブロック担当 執行委員 2月26日
山本 智 50 特別対策係 京宝 2月26日
2月18日 (株)フジタ関連会社 恐喝未遂 西山 直洋 50 執行委員 争議対策部長 3月8日
4月11日 (株)タイヨー生コン 恐喝(1,000万円) 武 建一 76 執行委員長 9月18日
湯川 裕司 46 副執行委員長 9月18日
6月18日 日本建設(株) 威力業務妨害 壱岐 健一 56 新京都生コン 7月9日
浜崎 光平 35 宝ヶ池生コン 7月9日
中村 正晴 68 会計監査役 バード分会 7月9日
大澤 卓司 43 北川建材分会 7月9日
7月17日 (株)東横イン電設 威力業務妨害 山本 智 50 特別対策係 京宝 8月9日
大澤 卓司 43 北川建材分会 8月9日
田中 恒夫 58 滋賀ブロック 北川建材分会 起訴猶予(8月9日)
富田 律夫 44 滋賀ブロック 北川建材分会 起訴猶予(8月9日)
8月20日 ネッツトヨタ滋賀(株)
(株)東横イン電設
威力業務妨害 湯川 裕司 46 副執行委員長

* 判決の懲は懲役、執は執行猶予。

協賛団体