「座りだと思ってたけど、立ちでのインタビューだったんだね」

8月18日
ギラギラとした日差しが照りつけるマツダスタジアムの1塁ベンチ横。

広島のテレビ各局が要請し、共同取材という形で実現した、秋山翔吾のインタビューは、秋山のつぶやきからスタートした。ヒーローインタビューや、日々の試合後の談話以外では、6月30日の入団会見以来、初めての機会となった。


その前夜、ベテラン・松山竜平のサヨナラ打で劇的な勝利を飾った余韻冷めやらぬスタジアム。外からは見えない室内練習場から、甲高いバットの音が響いてきた。
その音の主こそ、秋山翔吾だった。

ヒットが出ても出なくても、「打の求道者」の姿勢は決してブレない。
今回のインタビューには、そんな秋山の「現在」が詰まっていた。


Q.合流して1か月半、これまでを振り返って
秋山「最初、2軍に合流して数試合出て、体の具合との相談だった。あまり長くいて『準備万端でもういいだろ』というところまでやるのは逆に不安。体の状態に問題がなければ、早めに合流したいと、監督には伝えていた。
 そこからスタートして、マツダのデビューはすごいこと(7月12日の地元デビュー戦は4打席連続三振)になりましたけど、チームのみんなにカバーしてもらいながら、ここまで来ているなと思います。」

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Q.カープというチームの雰囲気に、これまでと違う発見はあった?
秋山「(カープは)『練習量の多いチーム。個々も意識の高い選手が多いんだろうな』というイメージは持っていた。チームに入ってみて、その通り。もうイメージ通りだなと。
 僕がライオンズ時代、試合の後に打っていたことが記事になったこともありましたけど、あれは、たまたま室内練習場が2軍の施設(1軍使用球場の近くにある別棟)にしかなかったので、そういうことになっただけ。あの練習なんて大したことはなくて、毎日同じようなことをずっと、若い選手も、試合に出ている選手も『日常化』しているというか。『やるのが当たり前』という空気がある。
 すごく、この土壌がいいチームだなって感じています。」



Q.試合前にいつもベンチ前でバットを振るルーティンがある。相手ピッチャーの投球をイメージするため?
秋山「それもありますし、僕自身のスイングのチェックがメイン。ベンチ裏にミラールームがあるので、そこで確認したりボールを打ったりするのもいいけど、照明の明るさとか日光の明るさとか、目の明るさ、景色に慣らすために僕はいつもそういうことをやっている。
 相手ピッチャーのイメージもそうだし、どこに目付けするとか、どういう形で入っていくかを整理しながら、なるべく試合と同じ景色の中で見ていきたいので、それは、続けてやっています。」


Q.8月6日のサヨナラヒットや、日米通算1500安打、いろんなヒットがあった。3番を任されて、チャンスで回ってくるときの意識とは。
秋山「パ・リーグの時は、1番がメイン。いま3番に入って、1打席目の入りが、セットで入ったりランナーのケースが入ったり、1巡目でいえば、そこが他の打順と違うところ。それが難しさを感じた。1番の入り方でしか入れなかったので。
 逆にセ・リーグでは、2巡目以降、1番がすごく難しいなと交流戦の時から感じていた。ピッチャーの後というのが。
 いまは3番で、ランナーがいるのが基本。前の2人がどういう出方をして、というイメージをする回数が増えていったので、少しずつ良くなっていると思います。」


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Q.カープに来てこれまでに放った印象的な1本は?
秋山「(しばらく考えて)マツダスタジアムで打った最初のヒット・・・(7月14日のDeNA戦 3回にライトへタイムリーヒット)。
 名古屋で最初にスタート(カープ初安打は7月8日のバンテリンドーム)して、早く1本、広島でファンの方に見てもらいたいなというのもあったので。
 マツダスタジアムで打つ前の2日間の、精神的なやられ具合(地元デビューから2試合ノーヒットと苦しんだ)・・・名古屋で打ってから4試合打ってなかったので。あそこで少し『またここから』という気持ちはありましたね。」


Q.秋山選手ほどのキャリアがあっても、ヒットが出ないと考え込んでしまう?
秋山「やっぱり、やってて『不安がない状態』ってあまりなくて。1日1本打って、その積み重ねで、2本出たりまとめて出ることにつながるので。相性がいいとか悪いとかは、周りが言っているだけという感覚なんですよ。なので、ヒットが出ない時期は苦しいし、どんな形でも1本『H』のランプがつくだけで、精神的に優位になるし、前向きになれる。
 やっぱり緊張してしまうときがあります。
 1軍に合流したばかりの名古屋の1打席目とか、本当にフワフワしていたなと思いますし、広島に戻ってきた初戦の4打席を振り返っても、あそこはフワフワしていなかったんですけど、結果的にそういうふうになってしまった。次の日になって、1本が出るまでは「不安と闘っている感じ」ですね。
 いい表現には聞こえないと思うんですけど、僕はそういうものだと思ってやっています。」



Q.若手選手と接することも多い。どんな話をしている?
秋山「まだ、野球以外のことは話せていないですね。外へ食事になかなか行けなかったりとか。グラウンド以外でなかなか接することがないので、野球の話になってしまう。『あっ、そういうことを考えてるんだな』とか、『解決したいと思っている課題があるんだな』」か。どんどん聞いてきてくれたほうがいいですね。
 コーチや年上の選手が気付いて言えることもたくさんあるんですけど、本人がそれを課題として見ているかの方がすごく大事。そうじゃないことを言うと、頭がごちゃごちゃになったり、やらなきゃいけないという気持ちになってしまう。
 『自分が解決したいこと』であれば、いろんな技術を持った選手がいるし、若手の方から聞いていくことが大事だと思います。
 僕が言うのは、試合での経験や、『視野が狭まる感覚』の経験、残り試合数が少ない中での緊張感とか。そういうところで何か助けになればと言うことはありますね。ただ、技術的なことは、聞かれるまでは話さない。同世代とはよくしゃべるけど、若い選手にはなるべくそうしようと、今のところは思っています。」



Q.登場曲をライオンズ時代から変更した。込めた思いやこだわりは?
秋山「こだわりというか・・・いろんな方がいろんな考えをしてくださっていて、拝見もしました。ライオンズのスタジアムMCは男性の方で、盛り上げる感じの呼び出しだったので、ブルーハーツの曲(『人にやさしく』)を使っていました。
 東京から広島に来る道中で、マツダスタジアムの呼び出しはどんなだったかな?と思って(映像を)見てみたら、落ち着いた感じがカープの特徴。ファンのレスポンスがありそうな曲も(歓声に)かき消されてしまうなと。カープには、そういう曲を選んでいない選手が多かったので、その中でも、気分が上がるような曲にしましたね。
 (ファンの間でいろいろ考察はありましたが)割りと合っていると思います。
嵐の曲とかも、あんまり歌詞で『こういうの知ってほしいでとす』かは恥ずかしくて嫌なんですけど、もともと好きな曲だったんです。『赤』とか『青』というフレーズが合っているなという感じもあったし、サビの部分も盛り上がる。
 ポルノグラフィティとCHEMISTRYに関しては、メンバーがカープのファンだというのもちゃんと確認して。
 僕が中学の時にけっこう支えられたアーティストというのもあって、これがきっかけでいつかお会いできないかなという(笑)たくらみもありつつでしたね。」
 あと、頭文字をとったら、『CARP』になるというのも、ウラのウラのテーマでして。そう見てもらってもいいですし、僕としてはそれくらい、いろいろ考えた3曲なので。これから、長く使っていくことになればいいなと思います。」


Q.これから終盤戦への意気込みを
秋山「上をまだまだ狙える順位だと思います。(完封リレーだった前日のように)ピッチャーが頑張って踏ん張ってくれる日もあれば、野手がカバーする日もありますし。
 試合によっていろんなミスがありますけど、勝つと、その選手が救われて『今度は自分がカバーしてやろう』という気持ちになると思うので、その繰り返しで勝が積み重なっていく。最後まで粘り強く踏ん張って、やり切りたいなと思います。」