1973年の準決勝で作新学院の江川に三振を喫し、悔しがる広島商の達川
1973年の準決勝で作新学院の江川に三振を喫し、悔しがる広島商の達川

 後にプロ入りした選手同士による対決も、選抜大会の歴史に花を添えてきた。投手、打者のプライドをぶつけ合い、時に「超高校級」の好勝負を繰り広げてきた中国地方ゆかりの選手を振り返る。


 古くは1933年の2回戦で、広島・大正中(現呉港)の藤村富美男が京都商(現京都学園)の沢村栄治と対戦。後に大阪(阪神)と巨人で争うライバルに、4打数無安打と抑え込まれた。

 名勝負として今も語り継がれるのは73年の準決勝。栃木・作新学院の「怪物」江川卓に挑んだ広島商の達川光男だ。第1打席は三振に倒れたが、五回の第2打席は四球で出塁。佃正樹の右前打で生還し、江川から140イニングぶりの得点を奪う。好リードでも逆転勝ちに貢献した。

 プロでは広島と巨人で対戦した。達川は生涯打率2割4分6厘だが、江川には2割8分6厘と相性の良さを発揮。特に江川が引退する前の2シーズンは3割9分1厘と打ちまくった。

 プロ球界に多くの選手を送り出す広島・広陵も好勝負は多い。2003年の決勝では白浜裕太や上本博紀らが、後に球界を代表する投手となる神奈川・横浜の涌井秀章と成瀬善久を粉砕。計20安打は決勝の最多記録として今も残る。

 07年の野村祐輔は1回戦で千葉・成田の好投手唐川侑己に投げ勝ったが、準々決勝で東京・帝京の中村晃、杉谷拳士らに打ち込まれて敗退した。10年に4強入りした有原航平は、プロでともに新人王に輝く東京・日大三の高山俊を無安打に。準々決勝では愛知・中京大中京の磯村嘉孝を封じ、夏春連覇の夢を砕いている。(加納優)