「これは緊急用のものです」。車掌から緊迫した様子で諭される鉄道ファンの男性を映した動画が8月12日にツイッターに投稿されて、話題になっている。
この動画は、近鉄名古屋駅で出発を待っている電車の車内で撮影されたもの。男性が電車を撮りたいために、車内に設置された緊急用の通報装置を押してしまったことが伝わる。
動画がツイッターで拡散すると、「非常識」「撮り鉄のイメージが悪くなる」などと、男性に批判が殺到。対応した車掌には「毅然としてて立派」と賞賛が集まった。
この時一体、車内ではなにが起きていたのか。近鉄(近畿日本鉄道)に取材した。
●「撮影したいから前照灯もつけて」
近鉄の広報担当者によると、動画で撮影されたトラブルは8月12日21時ごろ、近鉄名古屋駅のホームに停車中だった津新町行きの急行車内で発生したという。
この急行は21時4分に出発予定で、その直前に乗車ホーム側から乗り込んだ鉄道ファンの男性が、車内に設置された通報装置を押した。
男性は急いで駆けつけた車掌に対して、電車を撮影するため、すでに閉まっていた降車ホーム側のドアを開けてほしいと要望した。さらに、電車の先頭につけられている前照灯も点灯してほしいと言ったという。
車掌はこの要望を断り、撮影するのであれば乗車ホーム側から降りてほしいと伝えた。また、通報装置は緊急用のものであり、万が一同時に緊急事態が発生した場合に、対応できなくなることなどを男性に説明した。
近鉄は公式ホームページ上で、車内通報装置は「犯罪行為を見かけられたとき」や「急病のお客様がいらっしゃったとき」など、車内で異常があった場合に使用してほしいとしている。
近鉄の広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「撮影など個別のご要望には対応できません」と話している。