戦塵のウォークライ
雅彩ラヰカ
プロローグ
「あと一度問う。お前の仲間はどこだ」
簡素な声でライフルを握った男はそう聞いてきた。答えなどずっと一つだけで、少年は微笑んでそれを口にする。
「一人だよ」
振り抜かれた拳が頬を打って、少年の口から歯と血液が唾液の糸を引いて垂れ落ちた。それから彼は何度か口をもごもごさせる。縄を解こうとでもして、必死に後ろ手に回された両腕を動かす。
芋虫のように抵抗し、椅子に座らされた少年を二人の男は笑って見ていた。
「…………」
少年が何か呟く。それから、男の一人が半笑いを浮かべて顔を近づける。
「文句でもあるなら言ってみろ」
ふっと微笑んだ少年は、折られてギザギザになった口で男の鼻に食らいついた。そのまま軟骨まで歯を通して噛み潰し、丸っこい団子のようなそれを引きちぎる。
べっ、と吐いた鼻に歯のかけら。少年は獰猛な笑みを浮かべる。
「僕は一匹狼だ」
ぶん、と真上から振るわれた腕。とっくに縄など外されており、少年は肩関節を外して振り回した腕で男の首筋を打ち、すぐに立ち上がった。手首が固定されたまま鼻を抑える男の胸からナイフを抜いてもう一人の喉元へ突き立て、ひねって抜く。スナップを効かせて手首のワイヤーを断ち切った少年は、ナイフで貫かれた男の拳銃をドロー。
振り返り、なおも失った鼻を押さえる男へ向けて近づいた。
「じゃあ僕の番。あんたらは二人だけ?」
男は小刻みに頷いて、何か言った。
「なんだよ」
「くたばっちまえ、クソ野郎」
「そう遠くないうちに死ぬさ」
撃発。九ミリ弾が男の耳から侵入し、速やかに脳みそをぶち抜いて反対側から抜けていった。
口の中の血の味に陶酔するように少年は身震いし、それからライフルとマガジンベストを奪い、廃屋に用意された足跡の拷問部屋を出て行った。
世暦九二四年。
アルヴンウォーク大陸は、戦火に焼かれる、その最中にある。
戦塵のウォークライ 雅彩ラヰカ @9V009150Raika
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