「説明拒否」を許してはならない…旧統一教会との関係を矮小化しようとする政治家18人の発言を検証する

「説明拒否」を許してはならない…旧統一教会との関係を矮小化しようとする政治家18人の発言を検証する

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プレジデントオンライン

安倍元首相のシンクタンク2022でのスピーチ – 画像=YouTube動画より

■旧統一教会との関係を矮小化する7つのパターン

■「無知のふり」「説明拒否」も目立つ

 ①は関係していたことを嘘で否定しており、非常に悪質といえるだろう。

 ②はいわゆる「バカのふり」をしているわけだが、90年代初頭まではテレビで頻繁に旧統一教会問題が報じられていたことを考慮すると、現在40代以上の議員の場合かなり苦しい言い訳だ。

 ③~⑥は関係も問題も認識しているものの、あの手この手で責任を小さく見せようとしているといえる。

 ⑦は一切の説明を拒否することで、追及の材料すらも与えずに逃げ切ろうとしている。

 それでは、該当する主張を行った主な政治家18人の実際の発言、旧統一教会との関係を順次、紹介していく。

 (注 五十音順に記載。統一教会との関与は、TheHEADLINE「[追記]統一教会との関与が示された議員・知事ら121名一覧。新岸田内閣から首相経験者、現職議員まで」を参考に作成)

■「共産党は宗教弾圧」足立康史氏(維新)

——— 「統一教会(世界平和統一家庭連合)の何が問題なのか、国会で取り上げ、カルト規制等の導入をリードするに十分な正確性をもって承知していません」(7月16日note)

———-  →パターン②「無知のふり」に該当(足立康史氏は現在56歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)

———- 「共産党は、宗教弾圧している暇があるなら、この本読んで、共産党の復習でもして反省してればいい」(7月29日ツイート)

———-  →パターン⑤「論点のすり替え」に該当(政治と宗教の癒着の問題を「宗教弾圧」に飛躍させている上、共産党への敵対感情を煽っている)  【旧統一教会との関係】 ・2018年、関連団体・世界戦略総合研究所で講演

■「今回限りということで」甘利明氏(自民党)

———- 「(講演について)主催がPeaceRoadひまわりと分かり、事務所内で検討しましたが、会自体は勉強会であり、今回限りということでお受けしました」(TBS「news23」のアンケート結果)

———-  →パターン④「1度の過ちを主張」に該当  【旧統一教会との関係】 ・2022年春に関連団体・PeaceRoadひまわり主催イベントで講演

■「宗教の『しゅ』の字もない」石破茂氏(自民党)

———- 「(元社長から寄付を受け、無料贈呈されていた「世界日報」について)宗教に関しての話とか、宗教の『しゅ』の字もない。それを読んだから、宗教という感じは一切しなかった。」(8月3日BS-TBS「報道1930」番組出演時)

———-  →パターン⑤「論点のすり替え」に該当(「世界日報」から宗教色を感じたかどうかにすり替えている)  【旧統一教会との関係】 ・2017年、旧統一教会と関係が深い「世界日報」元社長から10万円の寄付を受ける

■「経緯は不明」稲田朋美氏(自民党)

———- 「(イベント参加について)12年ほど前のことなので経緯は不明」(『女性自身』の質問に対する事務所回答)

———-  →パターン⑥「開き直り」、⑦「説明を拒否」に該当  【旧統一教会との関係】 ・2006年4月、2010年4月に関連団体・世界平和女性連合のイベントに参加 ・2008年、自らの後援会「ともみ・越の会」を旧統一教会関係者が立ち上げ

■「お金のやり取りはない」井上義行氏(自民党)

———- 「(賛同会員は)お金のやり取り、依頼はない」(8月3日メディア対応)

———-  →パターン⑤「論点のすり替え」に該当(金銭のやり取りの有無にすり替えている)  【旧統一教会との関係】 ・世界平和連合青年フォーラムのイベントに参加 ・旧統一教会の賛同会員であることを認める

■「組織としての付き合いはない」岸信夫氏(自民党、安倍元総理の実弟)

———- 「(旧統一教会関係者が自らの選挙を応援したことについて)組織としての付き合いがあったわけではない」(8月2日記者会見)

———-  →パターン①「虚偽説明」、⑤「論点のすり替え」に該当(組織的な付き合いの有無にすり替えている上、自民党は長年にわたって組織的付き合いがあったと明らかになったため虚偽説明でもある)  【旧統一教会との関係】 ・旧統一教会関係者が自らの選挙を応援

■「存じ上げませんでした」小林鷹之氏(自民党)

———- 「(旧統一教会について)現在指摘されているような問題があるとは存じ上げませんでした」(8月5日記者会見)

———-  →パターン②「無知のふり」に該当(小林鷹之氏は現在47歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)  【旧統一教会との関係】 ・同日の会見で祝電や地元会合で挨拶した事実は認める

■「全く関わっていない」下村博文氏(自民党)

———- 「私は文化庁担当者からの報告は受けたが、(旧統一教会の名称変更には)全く関わっていない」(8月3日メディア対応)

———-  →パターン①「虚偽説明」に該当

———- 「当時は名称変更もほとんど報道されなかった。名前が変わることによって信者や国民に迷惑をかけることは想像できない話だ」(8月4日メディア対応)

———-  →パターン②「無知のふり」に該当(下村博文氏は現在68歳のため、統一教会の問題を知らないとは考えにくい)  【旧統一教会との関係】 ・2016年、旧統一教会と関係が深い「世界日報」から6万円の献金 ・2015年の名称変更に文科大臣として圧力をかけた疑いがあるも、8月3日までは否定 ・8月4日以降は一転して「今となれば責任は感じる」と名称変更に関わったことは暗に認める内容に変化 ・8月5日の野党合同ヒアリングで前川喜平氏(当時の文科審議官)が「下村さんの意思が働いたことは100%間違いない」と証言

■「機械的に出しただけ」山口壯氏(自民党)

———- 「(祝電を出したことについて)いろいろな団体から依頼される中で、機械的に出しただけで全く意識的ではない。祝電を出してもらえるかと言われたら、どんな団体でも祭りや慶弔ごとに全部出している」(8月5日記者会見)

———-  →パターン⑥「開き直り」に該当  【旧統一教会との関係】 ・同日の会見で祝電を2~3回送った事実は認める

■「私は関係ありません」山谷えり子氏(自民党)

———- 「(旧統一教会について)私は関係ありません」(8月3日メディア対応)

———-  →パターン①「虚偽説明」に該当  【旧統一教会との関係】 ・2001年11月、旧統一教会と関係が深い「世界日報」に選択的夫婦別姓に反対する国会議員としてインタビューが掲載 ・2004年、2010年の参院選で旧統一教会が選挙支援していたと有田芳生氏が8月3日にツイート

■「説明拒否」を許してはならない  18人の発言は以上だ。

 もはや読んでいる方が恥ずかしくなるような、みっともない言い訳のオンパレードであったが、追及する側としては、パターン⑦「説明を拒否」が最も厄介だと感じている。

 一切コメントしないのだから、いわゆる「迷言」と呼ばれるようなテレビ受けするコメントが生まれることもなく、新たな追及の材料を与えることを防いでいる。

 もちろん、説明責任を果たすべき国会議員としては、本来は言語道断な対応だが、安倍政権以降の自民党はこの方法で数多くの不祥事をごまかしてきた「成功体験」があり、残念ながら国民に不祥事を忘れさせるためには最も賢い一手となってしまっている。

 今後も新たな関係が次々と発覚していく中で、該当者はさらに増えていくだろう。

 次はどのようなアクロバティックな言い訳が飛び出すのか、それらの発言をメディアはしっかり引き出して追及できるのか。引き続き注視していきたい。

———- 犬飼 淳(いぬかい・じゅん) フリーランスライター theLetter「犬飼淳のニュースレター」で政治に関する様々な論考を発表。国会答弁を色付きで分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。横浜市長記者会見や総理大臣記者会見などに参加し、記者クラブ制度の問題点にも言及。また、(日)(英)(仏)3カ国語のYouTubeチャンネルで国会答弁の視覚化などを全世界に発信。

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