「この歩道は世界平和統一家庭連合が清掃活動をしています」。大阪府松原市の国道沿いに、そんな看板がある。設置したのは道路を管理する府で、歩道を清掃するボランティア団体として世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を認める趣旨だ。だが、安倍晋三元首相の銃撃事件でクローズアップされたように、教会は高額献金を巡るトラブルや「霊感商法」との関わりが指摘されてきた宗教団体。公共の掲示物への記載は問題ないのだろうか。調べてみた。
看板は松原市役所の約500メートル南側、国道309号沿いの歩道にあり、近くには中学や高校もある。
歩道や植樹帯などを月1回程度、清掃する「アドプト・ロード」という活動に旧統一教会が参加していることを示す内容で、看板の下部には「大阪府富田林土木事務所」「松原市役所」との記載もある。
◇目隠し、撤去…急きょ対応
府道路環境課によると、清掃活動への参加を希望する団体は地域を所管する府土木事務所に申請し、審査を受ける。審査基準は「美化活動が営利を目的としていない」「美化活動により交通安全上支障が生じない」など14項目。旧統一教会は2021年9月に認定され、府、松原市との3者で協定を交わして22年4月に看板が設置された。
府富田林土木事務所によると、旧統一教会からは22年6月まで毎月、清掃活動を実施したとの報告があったが、7月の事件後は「しばらく自粛する」との連絡が来て活動が止まっているという。
府は毎日新聞の取材後、旧統一教会の了解を得た上で看板にテープを巻き、文字を見えないようにした。
一方、同府富田林市でも16年7月、旧統一教会がボランティア団体として認定され、同様の看板が設置された。だが、17年8月以降は活動実績がなかったとみられ、府が22年8月11日に撤去した。
同年6月現在、府内では429団体が清掃活動に参加しており、自治会や民間企業などが多いという。旧統一教会以外の宗教団体も含まれる。
府道路環境課は「あくまで清掃活動の実効性などを基準に審査してきたので、宗教団体かどうかは関係ない。基準を見直す予定はないが、協定には(問題が起きるなど)疑義が生じた場合は3者で協議するという取り決めがあるので、(旧統一教会について)相談するケースもある」と説明。今後、旧統一教会が清掃活動を終了することになれば、「看板は撤去する」と話している。
◇宗教団体の社会貢献、オープンに議論を
宗教に詳しい専門家はどう見るのか。NPO法人「京都自死・自殺相談センター」理事を務める野呂靖・龍谷大准教授(仏教学)は「宗教団体が社会貢献活動に関わること自体は歓迎すべきことで、むしろ関わらない方が問題がある。ただ、反社会的な活動をしている団体が行政のお墨付きを得るために行うのであれば本末転倒だ」と指摘。行政の対応としては、「審査基準に『反社会的な活動事例がある団体は認めない』というような項目を最低限入れた方がいい。宗教と社会活動との関係をタブー視するのではなく、宗教が公共の空間にどのように関わるのかについてオープンに議論していくことが必要だ」と話している。【玉木達也】