
ICF-PRO70
ICF-PRO70の修理
修理しました!
これは1987年頃発売のSONY製PLLシンセサイザーレシーバーです。150kHz~108MHzを連続受信できます。要はゼネカバ受信機です。
周波数帯によりますが、ナローAM、ワイドAM、SSB/CW、ナローFM、ワイドFMが選べます。
ナローAM、ワイドAM、SSB/CW、ナローFMが選べるのは150kHz~76MHz、ワイドFMが選べるのは50MHz~108MHzです。

ICF-PRO70 外観
昔、秋葉原電気街の電気店で新品を入手したものです。パナソニックのRF-B65と迷って本機に決めた記憶があります。もう15年程前に、1箇所断線故
障したのを修理して使っていましたが、5年程前からボリュームやスケルチが利かなくなって放置していました。
それを久々に修理したので、顛末を記します。
昨今は、かなりのラジオで回路図、パターン図付きのメンテ資料が無料で入手できるようになりました。本機もそのようなラジオの1つです。
さて、下の写真が裏蓋を開けようとしたところです。電池ボックスの電極と接触させる本体側のGND電極にセラミックCが直付けされおり、この半田付け
を外さないと、蓋を外すときに損傷すると思います。

セラミックCとそのリードがのぞいているところ
下は、半田付けを外して裏蓋を開けた状態の写真です。問題のボリュームとスケルチは、まだ基板の下です。
なおスピーカの上にある白いものは、前回修理のために開封した際、スピーカが筐体に接着されていたのが剥がれたので、スピーカを裏蓋越しに押し
当てるようにしたものです。

裏蓋を開けたところ 右上に黄色いリード線で接続されたアンテナコネクタが見える
この基板を外すには、アンテナコネクタ(箱本体向かって右上部)の黄色いリード線の片側の半田付けを外しておく必要があります。こうして分解していく
と下の写真のような状態になり、さらにスイッチ付き可変抵抗器であるボリュームとスケルチが取り外せるようになります。なお、ツマミはまっすぐ引き抜
けるはずですが、経年変化で金属軸のギザギザの根元がツマミの内壁に食い込んで引き抜きにくくなっていました。ラジオペンチでシャフトをはさむよう
にして、金属パネルなどに大きな力が加わらないようにツマミを引き抜きました。

背面側の基板(signal PCB)とシャーシ(シャーシA)を左側に外したところ
駄目になっているスイッチ付きボリュームを分解します。2本の長いリベットのようなもので部品が接続されているので、リベットの頭をピンバイスで削り
取ると、下の写真のように分解することができました。

スイッチ付きボリュームを分解したところ
右側の大きな緑色の枠がある部分はスイッチになっています。ボリュームの抵抗体は茶色い板の向かって右側にあり、摺動電極はその右の白っぽい
合成樹脂板の左側面に取り付けられているべきです。駄目になったボリュームでは下の写真のように摺動電極が合成樹脂板から外れた状態になって
いました。

摺動電極が合成樹脂板から外れている
合成樹脂板の左上部分には手前方向に突起があるのがわかると思います。これが摺動電極のえぐれた部分や穴に合うようにして固定すればボリュー
ムは復活します。
自分は白い合成樹脂板と摺動電極の表面をアルコール拭きしてきれいにした後、次の写真のように合成樹脂板をトレイに両面テープで仮固定し、摺動
電極を合成樹脂板に瞬間接着剤で接着しました。(合成樹脂板を両面テープで固定すると、摺動電極の取り付けが比較的容易になると思います。)その
後、両面テープを外します。最後にスライド接点用接点復活剤を軽く染み込ませた綿棒で摺動接点と抵抗体を軽く磨きました。接点復活剤を濡れるよう
に吹きかけるのは樹脂を劣化させるような気がするので、しないことにしています。

摺動電極を合成樹脂板に接着
次の写真のように、摺動電極を接着した白い合成樹脂板を抵抗体のパターンがある基板と緑色のボリュームカバーではさんではめ込みます。

スイッチ付きボリューム再組立て その1
スイッチ付きボリュームを元通りに組み立てていき、下の写真のように、長いリベットの代わりとして0.8mm径のポリウレタン電線の端を潰したものを通し
ます。

スイッチ付きボリューム再組立て その2
頭を潰さなかったほうの端は、下の写真のようにスイッチとボリュームをきっちり嵌めてから折り曲げます

スイッチ付きボリューム再組立て その3
ボリュームとスイッチの正常動作をテスターで確認してから、基板に再度はんだ付けして完了します。音量ボリュームもスケルチも同様の故障でした。ち
なみにページ切り替え/ファインチューニング用のスイッチ付き可変抵抗は故障していなかったので、分解処置は行っていません。
ところで以前の故障は、ボタン操作への反応が悪くなっていき、ついには反応しなくなったというものだったと思いますが、記憶があまり残っていませ
ん。デジタル制御信号の伝達経路の配線切れと考えて場所の特定にはロジアナを使いました。当時は回路資料も入手せずに良く頑張ったと思います。
ただ、信号線特定で有頂天になり、信号経路に入っていた1kΩの抵抗を介さずに接続して修理を終えていました。下の写真左下部、水晶の上方を迂
回するスズメッキ線の配線が当時の修理です。これでも重大な影響はなく機能は回復していましたが設計者の意図が反映していなかったので、今回は
配線を修正しておきました。

旧修理跡 電解コンデンサ取り換え前
さらに今回は、自分はこれまでしてこなかったのですが、アルミ電解コンデンサの総取り換えを行いました。外観上は元のコンデンサも液漏れ跡などは
見つからなかったのですが、それでも問題となるような特性劣化を起こしているものが混ざっている可能性は否定できず、ボリューム不良後久しく使って
いなかったので、取り換えに踏み切ったわけです。ICF-SW1修理時もそうでしたが、表面実装用のアルミ電解コンデンサを確実に取り付けるのは自分
にとって非常に難しいので、今回も、なるべく小型の基板挿入型アルミ電解コンデンサのリード線を曲げて基板表面にはんだ付けしました。

電解コンデンサ取り換え後
上の写真が、水晶回りのパターン切れ修理配線やり直しとアルミ電解コンデンサを新しいものに交換した後のもの(写真の向きは先のものより90°時
計回りに回転)、
下の写真が、その上に位置している基板(signal PCB)のアルミ電解コンデンサを新しいものに交換した後のものです。

singal PCB 電解コンデンサ取り換え後
この写真では、東芝の20ピンDIP IC下にある新しいアルミ電解コンデンサが不自然に寝かせた状態ではんだ付けされています。これは交換したパーツ
の耐圧が元部品より高いものになっているため、元の隙間に入らなかったためです。おそらく若松通商などには置いてあるのでしょうが、近所の店では
欠品となっていたので、このようなことになりました。これでも蓋はきちんと閉まります。ホットボンド等で加熱しすぎないように気を付けながら固定するの
がベターかもしれません。
これまでの修理で、本機の機能は回復したはずです。電源ジャックの付いた基板の電池ボックス受けの負極端子とセラミックCのはんだ付けはしなくて
も普通には動作するので、入手したメンテナンスマニュアルに基づいて、ある程度の再調整を行いました。その中で気づいた点をかいつまんで紹介しま
す。メンテナンスマニュアル入手済みの方が対象です。
再調整をしない場合は、通電して動作確認後、一度電源を外してアンテナコネクタの黄色い配線を再接続し、電池ボックス受けの負極端子とセラミック
Cのはんだ付けを行ってケースをねじ止めして完了です。
再調整しました
まず1番目は、基準周波数発振回路の7.2MHzを合わせることになっています。そのためにラジオの受信周波数を108.00MHzに設定し、観測点の周波
数が118.7MHz±100Hzとなるようにトリマを調整するようにとの指示です。この調整は1ppm精度の周波数カウンタを要求しています。これはホビイストに
はキビシイです。とは言え、考えなしに中波の放送局などをナローAMでピッタリ受信できるように合わせこんでも失敗します。自分はそれで失敗し、手戻
りが発生しました。これは第2局発が未調整のためです。結局、自分の場合は周波数カウンタとSSGの周波数が100ppm程度の精度では一致していた
ので、多分両方正しいだろうということにして、周波数カウンタの読みが正しくなるように調整しました。実はトリマ調整だけでは合わせ切れず、水晶のト
リマがないほうの端子とGND間に10pFの温特フラットのセラミックCを追加して調整することができました。
次に2番目は、VCO1のフェーズデテクタ電圧の調整、FM-Lトラッキング調整を行っていきます。
VCO1フェーズデテクタ電圧調整では、150kHz時の電波型式が指定されていませんが、自分はAM NARROWを使用しました。75.95MHzはWIDE FMで行
うように指定されているので、そのようにFMで行いました。
FM-Lトラッキング調整の測定器接続図によれば調整はNARROW FMで行います。さらにイヤホンジャック出力を直流電圧で測定することになっていま
すが、これは明らかに交流電圧で測定しなくてはなりません。
VCO1フェーズデテクタ電圧とFM-Lトラッキングが共に満足できるように調整します。
3番目にVCO2のフェーズデテクタ電圧の調整、FM-Hトラッキング調整を行います。
VCO2フェーズデテクタ電圧調整では30MHz時の電波型式がしていされていませんが、75.995MHz時と同様NARROW FMで良いと思います。またトリマ位
置を half-meshed or slightly-meshed position にセットしてからインダクタを調整するよう指示があります。meshed position て何だろうと思いましたが、
多分容量が最大や最小の位置を避けるようにということのようです。
FM-Hトラッキング調整は必然的に(WIDE) FMで行うことになります。FM放送局からの混信がある場合は混信の起きない少しずらした周波数で調整しま
す。
VCO2フェーズデテクタ電圧とFM-Hトラッキングも共に満足できるように調整します。
4番目はFM IF調整です。
(WIDE) FMの93.000MHzが混信する場合は完全に混信を避けられる程度にずらした周波数で調整します。自分は最大感度の調整は行いましたが、歪
を最小にする調整は行いませんでした。
5番目は第2局発の発振周波数調整です。ここの調整はマニュアルとは違う方法で行いました。
説明では高入力インピーダンスの周波数カウンタを接続して55.390MHzを2ppm精度で調整する指示がありますが、手持ち機材ではその周波数では高
入力インピーダンスで受けることができません。また、NARROW FMで周波数微調(FINE)の特性を確認することになっていますが、NARROW FM受信で
は周波数微調ができません。そこで自分は中波の放送局電波をAM NARROWで受信し、FINE OFFで最良に聞こえるようにインダクタL19を調整しまし
た。すると、FINE ONでは、微調つまみがほぼ中央のところで最良の音になりました。またSSB型式で受信すると、微調つまみを中央よりやや時計回り
に回したところで、ビート音が消えました。CW時はつまみ中央付近で良好な音程になりそうです。
製品購入当初から、AM NARROWではFINE ONにして微調つまみを中央よりやや時計回りに回したところにしないと良好な再生音質が得られ
なかったのが、今回の再調整で初めて解消しました。おそらく基準周波数8.2MHzが、あるいはひょっとして第2局発の周波数が今回初めて調整でき
たためだと思います。
6番目はAMの第1と第2IFの調整です。
マニュアル通りに行いましたが、調整は特にずれていなかったようです。
7番目はNARROW FM検波器の歪最小化調整、8番目はAM AGCの調整ですが、自分は省略しました。
調整は以上です。
補足・蛇足
うまく外せないコネクタの件
いろいろな方のホームページを見ていると、時々「このコネクタはうまく外せない」といった文言を見かけます。もともと抜けるように分かれる構造になっ
ていないコネクタの場合も多く、これは当然です。
下の写真は、録音出力やパワーアンプ出力を取り出すコネクタを半田を溶かしてプリント基板から外したものです。このコネクタからピンを1本抜いてみ
ればわかるように、ピンの上端はビニール電線をかしめており、下端は基板に挿入してはんだ付けするようになっていて、途中で分かれるはずがありま
せん。このコネクタはアルミ電解コンデンサの取り換え時に邪魔だったので1度外した時の写真です。
このようなコネクタは本機にもたくさん使われています。

うまく外せないコネクタは、そもそも外すようにできていない
ダメになってしまったジャック類とSONYの補修用パーツ取り寄せの件
イヤホンジャック、録音出力ジャックは、経年変化でプラスチック部分が欠けていたので、エポキシ接着剤で補強しておきました。記憶がないのですが、
昔、接触が多少悪くなって接点復活剤を吹き付けたことがあるかもしれません。少なくとも他のラジオではそうしてジャックのプラスチック部分を破損させ
たことがあります。
取りあえずこれで直ったぞ!と、アンテナコネクタ端子や電池ボックス受け負極端子のセラミックCのはんだ付けを終えて最終組み立てを行い、電池と
電源アダプタで正常動作が確認できました。
ですが、
何度かDCコネクタの挿抜をすると電池動作で音が出なくなり、良く見ると液晶表示も出なくなっています。電源ジャックが破損して、プラグを挿さない状
態ではジャックの中心導体と外部バネ導体が接触状態になったのです。アルカリ電池が過熱して電池ボックスが変形してしまいました。

電源ジャック破損で電池が短絡して過熱変形した電池ボックス(左)と正常な電池ボックス(右)
上の写真の左側が熱で変形してしまった本機の電池ボックス、右側がほぼ同型のSONY AIR7の電池ボックスを端子側から見たものです。
下の写真は同じく左側が変形してしまった本機の電池ボックス、右側がSONY AIR7の電池ボックスを反対側から見たものです。

反対側から見た過熱変形した電池ボックス(左)と正常な電池ボックス(右)
さらに、下の写真では本体である電池ボックス受け側も、右端電極の根本付近プラスチックが変形しているのが見えると思います。

熱変形した電池ボックス受け側
結果的に、電池ケース電極側のプラスチック膨らみで、電池ケースの本体挿入がしにくくなったので、つっかえの原因となった電池ボックス右上部分を
電工ナイフで削って修復しました。下写真参照ください。

電池ボックスのコブを切除
DCジャックも、先のイヤホンジャック、録音ジャックも現在市販品で入手できるパーツとは、基板のフットパターンが合わなかったり穴の高さ位置が合わ
なかったりします。イヤホンジャックはエポキシ接着剤で補修したものの、グラグラするしプラグを挿しても本体スピーカの接続がなかなか切れないな
ど、不満が残っていました。
本機の修理部品保管期限はずっと前に過ぎていますが、他の品種でも同じ部品が使用されていて保管されている可能性があると思い、SONYの相談
窓口に問い合わせてみましたが、DCジャックもイヤホン/録音ジャックもないとの回答でした(2018年2月18日(金))。ただ、このときはSONYのパーツ番号
を言わずに問い合わせていたので納得できず、夜電気屋さんに行き、パーツ番号を言って互換品があれば連絡して頂けるように頼みました。
翌週月曜に連絡があり、DCジャックは互換品があるとのことで届いたものはICF-SW800向けでした。この互換性は十分でした。
イヤホン/録音ジャックは以前入手して、修理する目途がないICF-4900等があるので、そちらからカニバルことにしました。

SONYのジャンクのラジオから取り外したイヤホンジャック
上の写真は、ICF-4900などから外したイヤホンジャックです。プラグ差込口の反対側から撮影したものですが、古くて金属が黒っぽく変色しています。こ
れでもプラグを挿すと0.1~0.4Ωで導通はしました。プラグを挿さないときのスピーカー側の導通も0.3Ω以下でした。一応#4000の研磨フィルムを幅3mm
程に切って細い棒に沿わせてジャックの穴に差し込み、プラグとの接触面になる部分を多少磨いておきました。
これらの補修パーツで、交換して再組立てし、本機は無事に再生することができました。
嗚呼、それなのに6VACアダプタであるAC-D4Lがこのタイミングで逝ってしまうとは!なんてこったぁ!
内蔵トランスの1次側の導通がなくなってしまっています。このACアダプタは、うっかりネジを緩めて開封してしまった、ということが起きないように特殊な
ネジを用いているようです。ネジが緩められないので、ネジ回りのプラスチックを熱で溶かして開封しました。下に写真を示します。

故障した6VACアダプタAC-D4Lを無理やり開封
下の写真のように、回路的にはトランスの1次側は電圧調整タップが1つ付いた3端子、2次側はセンタータップ付きの3端子となっていました。ダイオード
2個をを使用した両波整流と2200uFによるリップルフィルタ、、その後段はベース負極間にツェナーダイオード(推測)の接続されたNPNトランジスタのエミ
ッタフォロワ(推測)による簡易安定化回路でした。故障箇所はトランスの1次側、巻き数の少ない側の端とタップ間の巻き線("x"の箇所)断線でした。
もともとは1次側の両端端子間にAC100Vが加わるようになっていましたが、タップと断線していない側の端にAC100Vを印加するようにだけ変更しまし
た(配線を"x"の箇所で切断し、途中のタップと"-"の配線でACプラグと接続)。

壊れたACアダプタの応急修理
本当はするべきでない対処方法だと思います。整流出力後の無負荷時電圧は10.1Vでしたから、2200uFコンデンサの耐圧16V以下には収まっていま
す。コレクタ・ベース間の素子(抵抗?)やツェナーの定格を超えていないかは不明です。メーカの設計余裕が減少したはずですが、残っているといいなぁ
と思います。無負荷時のアダプタDC出力電圧は、約7Vとなりました。脱力したあまり、これ以上の電圧確認は実施していません。ここの電解コンデンサ
こそ交換して良さそうですが、いい加減すぎる対処として放置しました。以前の正常時より発熱が増えることになりますが、ICF-PRO70の消費電流は音
量最大にしても約200mA以下、音が割れない程度ならば100mA程度以下でしたので、まずまず大丈夫でしょう。
最後に、下の写真は修理済みのICF-PRO70とACアダプタのAC-D4Lのツーショットです。

復活したICF-PRO70と応急修理したACアダプタ
ACアダプタは、ネジを抜かずにプラスチックケースを溶かして開封したので、閉じるときにはネジの周囲にエポキシ接着剤を盛って蓋を固定しました。も
しエポキシパテがあれば、その方がいくらかスマートだったでしょう。写真はICF-PRO70が動作中であることと、ACアダプタがやっつけ仕事的修理済み
であることを示すために、電池で動作中です。
最後は脱力気味になりましたが、本項はここまでです。

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