ネトウヨになりきれなかったネトウヨ
では彼はゴリゴリの右派なのだろうか。頑強なネトウヨ、頑迷な右翼なのだろうか。
実は決してそうではない。それどころかむしろリベラルな傾向が随所に見られる。
ここで5番目に言及度が高いテーマ、[自民党]を見てみよう。このテーマは[安倍][左派・リベラル][憲法・安保][中国]との関連度が高く、やはり一連の政治的な議論の中で語られていることがわかる。とくに時事関連のさまざまな話題が取り上げられている。
このテーマに関わる語で「自民党」に次いで出現度が高いのは、「石破」「学術会議」などだ。それぞれについて見てみよう。
まず「石破」関連では、彼は石破茂支持を強く表明している。その理由の一つは元防衛大臣だということだが、しかしそれ以上にその知的な資質を高く評価している。安倍には「イカサマ」、菅義偉には「剥き出しの権力性」を見、彼らの与党的な体質を批判する一方で、石破には「強烈な論理性」を認め、そこに「自民党2.0のあるべき姿」を見ている。
こうした彼の自民党論の特徴は、自民党支持ではあるが、非主流派を支持し、政権の中枢にはむしろ批判的であること、その際、とくに「強烈な論理性」という主知主義的な立場から、反知性主義的な右派の体質を批判していることだろう。
そうした態度は「学術会議」関連の議論ではより顕著になる。政府が強権的に人事に介入し、リベラル派の学者の任命を拒否した事件をめぐるものだが、そこで彼はいつもの右派的な態度とは裏腹に、「集団的自衛権に味を占めたのか、手続きを飛ばすのは傲慢」だとして政府を批判し、一方で「学者が正しい」として学術会議を支持している。
また、政府に同調して学術会議を貶めるためのフェイクニュースを流し続けるネット右派を、さらに強く批判している。「もう学術会議を批判できりゃ中身なんかどうでもいいレベル、フェイクニュースと印象操作に積極的に乗るまで右派が劣化している」。
ここに見られるのもやはり、学問へのリスペクトという主知主義的な立場から、政府の傲慢さやネトウヨの蒙昧さという、反知性主義的な右派の体質を批判しようとする態度だろう。
このように彼の中には、とくに「知」の問題に関わるところでは、旧来の右派の体質を批判し、リベラルな方向で議論を展開するという、いつもの右派的な態度とは裏腹の傾向が見られる。
そうした態度が独特なかたちで現れているもう一つのテーマが[皇室]だ。このテーマは旧右派の主張である天皇主義に関わるものだが、そこでも彼はリベラルな一面を見せている。