郵政社長がおわび、郵便局長の個人情報流用で 経費の詳細は明かさず
多くの郵便局長が顧客の個人情報や経費で買ったカレンダーを政治流用した疑いが出ている問題で、日本郵政の増田寛也社長は24日の記者会見で「おわびするとともに、事態を重く受け止めている」と謝罪した。ただ、カレンダーの購入で支出した経費が郵便局長会側に流れたかどうかは回答を避けるなど、実態解明に後ろ向きな姿勢もめだつ。
「個人情報の問題は重大だ。アンケートに答えた人を一つひとつ調査しないといけない」。増田氏はそう述べて、年明けから詳しく調べる考えを示した。
日本郵便の調査では、計705人の局長が顧客情報の流用や郵便局内での政治活動などを認めた。うち297人は個人情報保護法に抵触する恐れがあり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の情報を使ったとの申告もある。全国郵便局長会が来年の参院選で立てる自民党公認候補の得票につなげる狙いがあったとみられる。
日本郵便が政府の個人情報保護委員会に報告しており、総務省からは来月21日までに実態を詳しく報告するよう求められている。
郵政グループは自治体からの行政事務の受託を増やす方針で、扱う個人情報も増えていく見込み。中期経営計画でも顧客データの利活用を掲げるが、増田氏は「局長の情報漏洩(ろうえい)は全体の流れにマイナスになる」と語った。
一方、全国郵便局長会が政治活動に使うよう指示していたカレンダーについては、日本郵便が2018年に同会から要望を受け、3年間で8億円超の購入費を支出したことが判明している。同会の写真コンテストでは「全国郵便局長協会連合会がカレンダー用写真として有償で貸し出す場合がある」としており、関連法人が経費を元手に収入を得ていた可能性がある。
増田氏は、経費が局長会側に流れたかは答えず、「不透明だという端緒がない」と強調。局長らに尋ねることもしない日本郵便の判断を「よろしいかと思う」と追認した。11月末の増田氏の会見では、経費の流れは「調査で明らかになる」と説明していた。(藤田知也、杉山歩)
顧客情報流用などを認めた局長の人数
顧客に無断で顧客情報を支援者名簿に記載 74人
顧客情報を使った戸別訪問で政治活動 257人
業務目的の戸別訪問で支援依頼 130人
局内で政治活動の声かけや支援依頼 363人
局内で顧客に支援者名簿に記名させた 306人
局内でカレンダーを政治活動に流用 119人
※日本郵便が13~16日に行ったアンケートの結果。対象は18年度以降