義之たちの活躍により上手く生徒会の役員たちの注意を逸らす事ができた。その間に俺たちは本命に無事花火を設置する事ができた。
杉並と渉もダミーを設置出来たそうだ、無論簡単にバレる様な所には置かずにちゃんと隠しているそうだ。ダミーが発見されると本命が有ると勘付かれてしまう恐れが出てくるためだ。
花火をセットした俺は競技に戻り走り幅跳びを済ませハンドボール投げの列に並んでいた。
「雲行きが怪しくなってきたな。」
ふと空を見ると灰色の雲が空を覆い隠していた、雨の予報はあったがそれは夜だった筈。終わるまで持つと良いのだがな。
ハンドボール投げも恙無く終わると俺は走り幅跳びの列に並んだ、其処には。
「やっほ〜、ルル君」
「ちゃお、ルルーシュ。」
「あっ、ルルーシュ君。」
杏と茜それに小恋の三人が先に並んでいた。
「ルル君も長距離走を最後にしたんだ?」
「ああ、まぁな。」
「ふふっ、やっぱりね」
「あー、私も長距離走って苦手なんだよね。」
「雪村さんと花咲さんとルルーシュ君も長距離走は苦手なんだね。」
小恋があははと笑いながらそう言ってきた、確かに俺はそうだ。少なくとも杏と茜も長距離走は苦手な部類に入るだろうがこの二人には別の目的がある。
「うふふ、月島さん長距離走はルル君に注目だよ〜」
「毎年ルルーシュのあの姿を見るのが私たちの恒例行事になってるのよ」
二人がとても良い笑顔でそう言う、相変わらず良い性格をしているなこの二人は。
その様子を見てよくわかっていない小恋は終始首を傾げているのであった。
走り幅跳びを終えて先に済ました杏たちと合流した俺は長距離走を走る生徒たちを眺めていた、その走る生徒の中には義之がいた。
そして測定係りの集団の中には杉並がいた、あの杉並がただ居るだけとは思えない。
「義之〜頑張れー」
隣にいる小恋が義之に向けて声援を送る、現在義之は三位となっている。これは十分一位も狙える順位だ。
「あら、あのストップウォッチは確か。」
「んっ、どうかしたの杏ちゃん?」
「杉並が持ってるあのストップウォッチ昨日の夜私たちが杉並から渡されて仕込んだ物よ」
「えっ、ホント?」
「ええ、あのわざとらしく着けられた汚れは昨日の夜に見たのと全く同じよ」
「えー、私わかんない。」
杏と茜の会話を聞いて杉並の狙いがわかった、タイムに細工するのだろうが長距離走では個人では無く集団で測定を行う、その為もし義之が二位でゴールし一位よりもタイムが良ければ偽装工作が疑われる。
なので義之は一位を取りつつ二位とそこそこの差をつけなければならないということだ。中々ハードな要求をしてくれるな杉並は。
だが、まだ始まったばかり。今後どうなるかはわからない義之の頑張りに期待しよう。途中で朝倉 音姫が義之にエールを送って一緒に走っている男子生徒たちに睨まれたのは余談だ。
朝倉 音姫。彼女をどうにかする際には義之に頼むとしよう。
義之が走り出して三週目に差し掛かったその時に異変は起きた。
「あっ、降ってきた。」
「これは・・・。」
「降ってきちゃったね。」
「ああ、今は小雨だが今後はどうなるか。」
「私たちはどうしよっか?」
「念のためだ校舎の中に入るぞ」
俺たちは校舎の中に避難した、俺たちと同様に競技中の生徒以外の生徒の殆どが校舎に避難していた。
その途中競技中の義之に視線を向けると戸惑いながらも続行を決めたようで止めていた足を動かし始めた。
しかし、四週目に差し掛かったその時雨が更に強くなってしまった、更に義之を含む団子状態になっていた三人が転倒してしまった。幸い怪我は無かったようだが競技は一時中断となった。
「全然止まねぇな。」
「スポーツテストどうなっちゃうのかしら?」
制服に着替えた俺たちは校舎入り口から外の様子を伺っていた、雨は依然と降り続ける。グラウンドにも既に大きな水溜りも出来ている。
この様子では明日に持ち越しになってしまうな。
「ふーむ、こうなってしまっては延期は免れないな」
「そうね、流石にこの状況からの続行は不可能ね」
「ええー」
「マジかよ!」
「はう、がっかり」
杉並と杏の言葉に項垂れる、そんな中義之は。
「テストが中止になるんなら、賭けはどうなるんだ?」
このスポーツテストの裏側で行われている賭けについて義之は杉並に問いかける、しかし、義之には悪いがこれも取り止めなるだろう。
「ん〜、このままだと、後日に延期だな。そうなったら残念だか賭けは無効だな」
「何故?」
「既に各人ある程度の結果が出てしまっているからな、賭けのやり直しをするとなると。」
「予備知識がある分競技はあまり盛り上がらんし、既に賭けは次回にとの話も出てきているしな」
「だからって賭けを中止にするの?」
杏が納得出来ないと言いたげな視線を杉並に向ける、まあ、杉並の事だ他に理由があるんだろう。
「それにだ、今回紛れ込ませた仕掛けを施した物も修理されるだろう。その中にもう一度同じ物を仕込むのも興ざめだ」
「まあ、一番の理由は俺の美学に反するといったところだがな」
「美学ねぇ、それを言われた私からは何も言えないわね」
杏は一先ず納得した様だ、しかし、忘れてはいけない。俺たちにはまだアレがある。
「さて、そろそろ時間だな」
「ああ、アレの時間だ」
俺が言うと杉並もそう言い返す、しかし、俺たち以外は何のことか理解していない様だった。
「なあ、ルルーシュ、杉並。アレってなんだよ?」
「何を言っているアレしかないだろう。」
「アレ?あーっ!!アレか!!」
杉並の言葉にようやく気付いたのか渉が大声を上げる、それにつられて他の面々もあれの存在を思い出した様だった。
「あと少しで打ち上げ時刻だ」
「えっ、でもこんな雨の中大丈夫なの?」
「一応こんなこともあろうかと防水加工は施してある。」
「折角だし打ち上がるところをみんなで観に行こうぜ」
「えっ!外雨降ってるよ義之!?」
「どうせ濡れてるんだ、ここまで来たら思いっきり楽しまねぇとな!」
「おおっ!いっちょやってやるか!」
「さんせー、面白そう。」
「まあ、偶にはこういうのも良いわね」
「柄では無いが・・・こういう時ぐらいはいいか。」
「では、参るとするか」
各々がそう言って俺たちは雨が降りしきるグラウンドへと走り出した、俺たちはずぶ濡れになりながら打ち上げ花火がよく見えるグラウンド中央へと集まった。
「杉並、発射までの残り時間はどのくらいだ?」
「ふむ、後15秒ってところか。」
「それじゃ、カウントダウンいくか!」
「うむ、10!」
「9」
「8っ!!」
「7」
「6!!」
「5っ!」
「4」
「「「3」」」
「「「2」」」
「「「1」」」
「「「ゼロぉぉぉ!!」」」
俺たちがカウントし終えるのとほぼ同時に屋上から花火が打ち上がる、花火独特の打ち上げ音を発しながら打ち上げ花火は上空えと登る、そして。
鈍い音をさせ花火は爆発した。結果は失敗だ。
「うーむ、失敗か。改良の余地ありだな」
「えっ、えっ?花火はどうなったの?」
「失敗だよ」
「えっー、あんなに頑張ったのに。」
「まあ、防水加工が施されていたとしても所詮付け焼き刃だったからな。」
「マジかよ〜。」
「あはは、なんか一気に気が抜けちゃったね」
「そうね、花火がうち上がらなくて結局濡れ損ね」
全員が愚痴をこぼす、そして。
「チッキショー!!」
渉が大の字で濡れている地面に寝転がる、そしてそれにつられる様に茜と義之が。
「チクショー!悔しいぞー!!」
「この根性なし花火!この程度の雨なんかに負けたんじゃねぇぞ!!」
「あはは、何それ義之」
数名が思いの丈を叫んでいたがその表情は笑顔であった。
「失敗だったが、悪くは無いな」
「ふっ、まあ。今回は運がなかったなお互いに」
「そうだな、ところで試験の合否はどうなる?」
「うーむ、結果は後日という事だった。まあ、俺や同志ルルーシュの能力を鑑みれば結果は言わずもがなだがな。」
「まあ、事を成功させたら合格とは言ってなかったなお前は」
「そういう事だ、入部試験は能力の把握が目的だからな。闇雲にやって成功しても評価はされん」
「何真面目な話ししてんだよ二人とも、女子メンバーはなんか楽しそうに笑いあってるぜ。」
渉に言われ俺は杏たちを見る、そこには自然な笑顔で笑っている杏が居た。その光景を見て俺は安堵の息を漏らした。
「よぉーしっ!俺たちも女子に負けない様に笑うか!!」
「何馬鹿なこと言ってるんだよ」
「やれやれだな」
「ふっ、馬鹿者め」
「ああ、馬鹿さ。けどなここにいる連中は全員馬鹿だぜ!!」
「「「くっはははは!」」」
「ルル君たちもなんか楽しそうだね〜」
「ふふっ、そうね。」
「あはは、でもこういうのなんかいいね」
俺たちは雨の中笑いあった、雨の音にも負けず俺たちの笑い声は周囲に響いた。何故か分からないが笑いが止まらなかった。
(上手く言葉に出来ないが・・・最高だ。このメンバーは。)
これからの学園生活に期待を膨らませながら俺は共に笑い合う面々を見ていた。
先日甲子園で行われた水樹奈々のライブに行きました。実は何気に人生初ライブでした。尋常では無い熱気に唖然としました。