体力測定当日、俺たちは着替えを済ませ体育館にいた。体力測定は午前と午後分けられる。俺たち付属の一年は最初は体育館での体力測定だった。
俺としては幸運だった、もし午前の部で持久走が来ていれば午後の時点で俺は使い物にならなくなっているだろうしな。自分の体力の無さに呆れるがこれは仕方ない。
ざっと体育館内を見渡してみると長座体前屈や上体起こし握力測定や垂直跳びなど、多岐に渡る様だ。
本番は午後のグラウンドでの測定だ、ここは午後の為に出来るだけ体力を温存しておきたい。まあ、そこまで体力を削る競技はないが。
「よお、ルルーシュ。どうよ調子は」
「渉か、まあまあだな。競技はこれからだがお前はどうだ?」
「んあ、俺も今からだぜ一緒に回るか?」
「そうだな、特別先に終わらしておきたいものもないしな。」
「うっし、じゃあ先ずは握力測定からやるかすぐに終わりそうだし」
「そうだな、握力測定はあそこか。」
握力測定の場所にはそこそこ人が居たが直ぐに番が回ってきた、左右の握力を測ると俺たちは人混みから出る。
「なあ、ルルーシュ記録はどうだった?」
「まあまあ、だな。」
「なんだよ、まあまあってよ。いいじゃねぇかよ減るもんじゃねぇんだしよ見せてくれよ〜ルルーシュ。」
そう言って渉は俺の肩に腕を回しながら絡んできた、こうなったこいつは中々面倒くさい上にしつこい。まあ、別に見せても損することはない。
俺は渉に用紙を見せる。
「どれどれ、っと。ルルーシュお前握力弱いな。そんなんじゃいざって時大変だぜ?」
「俺は頭脳労働派なんだ、必要最低限の力さえあれば問題無い。」
「いや、けどよ。右の握力がよ17って弱いだろ?流石によしかも、左も16って。全然差がねぇじゃん」
「俺は両利きなんだ、握力に差が無いのは当然だ。」
因みにだが、中学一年生の握力の全国平均値は男子が約24キロで女子は約22キロと言われている。更に言うと俺の握力17キロは小学校の5年生の平均記録となっている。
いや、だからなんだという話なんだが他意は無い他意は。
そんなこんなで他の競技を淡々と消費していくとその途中で俺たちは義之と鉢合わせした。
「よー、親友!」
「板橋とルルーシュか。」
「なんだよ、俺のことは渉って呼んでいいんだぜ」
渉が義之に肩を組んで馴れ馴れしく接する。相手にもよるが渉のこういう接し方は嫌がる人もいる為少しは自重することを勧めるとしよう。
渉の提案で俺と渉、そして義之の三人で廻る事となった。そこで前屈をやっている杏の姿を目撃した。
「おっ、雪村の奴結構やるな。」
「ああ、20センチ位は行ってるなあれは」
義之と渉が杏の姿を見て意外そうに二人がそう言う、杏の運動能力はまあ、平均的なものだが小柄な為か低く見られがちだ。
そろそろ俺たちも測かるため移動しようとしたが何故か二人が杏をじっと見てその場から動かなかった。どうかしたのだろうか?
「な、なぁ。義之、ルルーシュ。」
「お、おう。」
「なんだ?」
「な、なんかよ。杏のあの姿を見てるとよ。な、なんかぞわぞわするよな。」
「あ、ああ。」
「?」
渉が何を言っているのかわからないが、改めて杏を見る。うん、別に何も感じない。というか義之までも同意するのか。
「おい、いつまでも油を売っていないで早く済ますぞ置いて行くぞ」
「お、おう。や、ヤバかったぜあのままだと俺の中の何かが大きく変わっちまう所だったぜ」
「何を言ってるんだお前は。」
訳のわからない事を言っている渉を尻目に俺たちは測定の列に並んだ、その渉の後ろでホッと息を吐いていた義之が見えたが・・・まあ、別に気にすることは無いか。
その後は問題なく競技を消化していった、最後反復横跳びの際義之と一緒にやったのだかその際何故か杏と茜が義之を挟むように義之の両端に居座っていた。
そのせいか義之の記録は芳しくなかった、実際杏と茜が線ギリギリの場所に居たため動きが制限され思うようにスピードが出せず記録が伸びなかった。
それは義之の表情から見て取れた、何故あの二人はあんな事をしでかしたのか俺にはわからなかった。杏と茜曰く義之に一位になってもらうと困るからだという。何が困るのだろうか?
そして無事午前の競技を消化し終えると昼休憩に入る、体力テストで丸一日使うとはイベント好きの風見学園らしいと言えばらしい。
昨日の話し合いで当日昼休憩の際花火を仕掛けた屋上に集まるように前日杉並から言われた、なのでこれから俺たちは可能な限り人に動きを悟られないように動かなければならない。特に生徒会の面々には。
教室に弁当を取りに行き、そのままその足で屋上に向かう。勿論周囲の警戒も怠らずにだ。
屋上に無事辿り着くと既に俺以外のメンバーが揃っていた。渉より遅かった事に少しショックを受けつつも俺は合流する。
「さて、ルルーシュも来たことだ。早々に昼食を済ませ細かな作戦会議といこうか。」
「んっ、まだ済ませてなかったのか?」
「ええ、私と茜と月島さんが皆の分のお弁当作ってきたのよ。」
「そうそう、皆の分を作ってきたのにルル君一人だけ仲間外れにするのは可哀想だったし待ってたんだよ」
「あはは、板橋君なんかずっとお腹鳴りっぱなしだもんね。」
「だってよ〜、こんな旨そうな飯が目の前に在るってのによお預け食らってるんだぜ。腹の虫の一つも鳴るってもんだ。」
「しかもよ〜、作ったのがこの美少女三人とくりゃも〜、男としては堪んないってわけよ、義之もそう思うよな!」
「まあ、作ってくれたのは有難いし。三人の腕前はこの前の調理実習で知ってるから楽しみではあるな」
「も〜、そんなことよりも早く食べようよ〜。私もうお腹ぺこぺこ〜。」
「あはは、そうだね。時間ももったい無いしね」
「ほら、ルルーシュあんたも座る」
杏に言われ俺は誰が用意したのと思われるレジャーシートに腰を下ろす。三者三様、それぞれの個性が出た弁当を見る。杏は中華風、茜は洋風。小恋は家庭的な料理となっている。
「では、本番である午後に備えて存分に英気を養うとしようか。」
「そうだな。」
「ああ。」
「うひょーどれも美味そうだぜ!」
「あはは、沢山あるからそんなにがっつかないでいいよ」
「どれもこれも自信作なんだ」
「ふふっ、味わって食べなさい」
がっつこうとする渉を窘めつつ、昼食を食べ始める。月並みにしか言えなかったが三人の料理はどれも絶品だった。渉は終始満足気な表情を浮かべていた。
さて、昼食も済ませた。本番も本番でである午後に向けて俺たちは最終確認と打ち合わせを始めた。
今回はここまで、あと少しでto youも終わりそうです。