初音島の悪虐皇帝


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悪虐皇帝と下準備


ギリギリ7月中に投稿できました。色々と立て込んでおり投稿が遅れました。


喫茶店で集まった日の夜、時刻は既に十一時を過ぎているが俺と茜と杏の三人は風見学園の校門前に立っていた。警察に見つかれば補導されるのは想像に難くない。

 

 

しかし、ここ初音島は犯罪計数が全国的に見ても極端に少ない。しかも、事件を起こす人物の大多数が外からの観光客などである。

 

 

初音島に住む人々の性格が温厚な為か、はたまた枯れない桜の効果なのか。何はともあれ犯罪が少ないというのは良い事だ。その為か警察官の補導なども比較的に緩いから適当に理由を言えば二、三注意を受けるが大体直ぐに解放してくれる。

 

 

「私達が一番みたいだね」

 

 

「そうね、杉並なんかが一番に来てると思ったけど・・・。」

 

 

「まあ、焦らなくとも直ぐに来るだろう。」

 

 

そう言って俺は時間を確認する、予定していた時刻よりはまだ余裕がある。他のメンバーも来るならそろそろだろうが・・・折角の機会だ色々と話を聞かせて貰うか。

 

 

「杏。」

 

 

「何かしら?」

 

 

「月島小恋、彼女はどうだ?」

 

 

「・・・そうね、素直すぎる子ね。素直すぎで逆にこっちが参っちゃったわ。私が失くしたものを目の前でまざまざと見せつけられた感じだわ。」

 

 

杏は元々実の両親に捨てられ施設にいた所を雪村 李『ゆきむら すもも』に引き取られた過去がある。捨てられた理由はわからなかったが杏を引き取った雪村 李に大切に育てられ、今から約三年ほど前にここ初音島にやって来た。

 

 

初めて杏を見た時は人形のようで何時も何処かをボッーと眺めていた事が多く余り接点は無かったが、次の年また同じクラスになったのを機に交友を持つようになった。

 

 

その時からあの驚異的な記憶力を有していた、初めて会った時とかなり印象が違っていたのはよく覚えている。当時の杏は何かを記憶するという事に夢中になっていた。そんな風に俺は感じた。

 

 

そんな杏に訪れた悲劇は俺たちが風見学園に入学する直前に起こった、養母であった李さんが亡くなったのだ。俺と茜は一度も会った事は無かったが杏は良く李さんの話をしていた。

 

 

李さんの話になると自然と頬を緩ませ嬉しそうに話す様子を見て俺たちもどれだけ杏が李さんを慕っているかがわかった。

 

 

唯一の肉親と呼べる李さんの死は杏にとって大きすぎるショックを与えた。しかし杏の不幸はこれだけでは無かった。

 

 

雪村の家はかなり大きな家らしく李さんは巨額の遺産を残しておりそれを巡り親戚同士が揉めたらしい、当然養子の杏にも遺産を相続する権利があったがそれに納得しなかった親族達から酷い言葉を浴びせられ続けたそうだ。

 

 

結果なんとか李さんと暮らしていた屋敷などは遺言の通りに杏の物になったそうだが、杏が負った心の傷は大きかった。

 

 

当時は俺たちと接する際にも何処か距離を置いていた、それと同時に今の様に毒を吐く様になった。

 

 

最初は戸惑ったが自然と以前の様に接する様になってから俺と茜は安堵したが、それ以外の人物には特に毒を吐く様になり他者との関わりを徹底的に無くしていった。

 

 

色々あって今は比較的に落ち着いているが人間不信に陥っているのは変わらずどうにかしなければならないと思っていた矢先に彼女、月島 小恋が現れた。

 

 

茜から色々と話を聞いたが、杏の冗談半分の告白計画などを流されつつもそれを実行したりと健気で素直な子と茜は常々口にしていた。

 

 

杏はどうかは知らないが茜は割と本気で応援していたらしいがついつい月島の困った顔がツボに嵌ったらしく弄り倒してしまうそうだ。

 

 

その後は杏と茜が計画を組みそれを月島が実行するということを数回行い、人なりを見た茜曰く月島は素直な良い子という結論に至った。

 

 

その結果は喫茶店に一緒に来た時に見た通りだ、表情があまり変わらない杏ではあるが付き合いが長い俺や茜にはわかった。

 

 

その表情はとてもリラックスしていた、何があったか知らないがあの表情から察するに杏は月島を認め受け入れた様だ。これを機にもっと交友を増やしていってほしいものだ。

 

 

「仲良くできそうか?」

 

 

「・・・そうね、そうしたいわね。月島さんもそうだけど他の三人とも茜やルルーシュみたいな関係を作りたいわ。」

 

 

「杏ちゃん・・・。」

 

 

「そうか、だが。そんなに構えずとも彼奴らとは良好な関係を築けそうだかな」

 

 

「ふふっ、そうね。杉並と桜内はどこかルルーシュに似てるし。渉は・・・まぁ、箸休め的なものにはなりそうね。」

 

 

「杉並はわかるが、俺が義之と何処か似ているところがあったか?」

 

 

どちらかと言えば正反対に近そうだが。そんな様子の俺を見て二人はやれやれといった感じの表情を浮かべた。心外だ。

 

 

「まあ、本人に自覚がないなら今はそれでいいわ」

 

 

「そうだねぇ〜。まあルル君だし、しょうがないよねぇ〜」

 

 

「しょうがないわね。」

 

 

二人は通じ合った様に言う、なんなんだろうかこの取り残された感は。当事者のみが話について行けていないというのは何か納得いかないものがあった。

 

 

そうこうしているうちに、校門前には夕方喫茶店にいたメンバーが勢揃いしていた。あの後渉が来てその後いつの間にか杉並が合流しており、その次に月島が。そして最後に義之がやって来た。

 

 

「全員揃ったな」

 

 

杉並が俺たちを見ながらそう言う。俺たちはそれぞれ短く返事をするが。

 

 

「念のため本当に揃っているか点呼を取るぞ」

 

 

「いや、どう見ても全員揃ってるだろ?」

 

 

「番号っ!!」

 

 

義之のツッコミを無視し杉並は叫んだ、なんだかんだ言ってもノリ良い連中なので。全員がしっかりと点呼を済ます。

 

 

点呼を済ましたところで俺たちは校舎へと侵入した。最初に訪れたのは体育館だった。そこで俺たちは二手に分かれることになった。

 

 

俺と杉並、月島、渉が屋上に設置する花火の打ち上げ装置の設置のため屋上に。義之と茜と杏が杉並が細工した小道具を持って体育倉庫へと向かった。

 

 

そして現在俺たちは花火装置の設置に取り掛かっていた。

 

 

「装置の設置ってなんか思ってたより簡単だな!」

 

 

「まあ、花火は本来もっと沢山の花火装置を使ってするからな。数が多い分設置に細心の注意を払う必要があるからな、一つだけならそんなに時間は掛からん。」

 

 

「ふーん、そんなもんか。」

 

 

「口を動かすのは結構だが設置はどうなっている?」

 

 

俺と渉が話をしていると杉並が注意してきた。

 

 

「安心しろ、不備は無い。」

 

 

「ふむ。」

 

 

杉並は静かに装置を細かく点検し、少しして顔を上げる。

 

 

「指定通りに出来ているな、完璧だ。」

 

 

満足げに杉並はそう言った。俺はその言葉に笑みを浮かべながらこう返した。

 

 

「当然だ、俺を誰だと思っている?」

 

 

花火の打ち上げ装置を設置し終え後は義之たちが来るのを待つだけとなり暇を持て余していると。

 

 

「あ、あの。ランペルージ君ちょっといいかな?」

 

 

「んっ、月島か。」

 

 

月島が俺に話しかけてきた、内容はまあ。十中八九杏のことだろうが。

 

 

「あの、ランペルージ君って雪村さんと友達なんだよね?」

 

 

「ああ、そうだな。そう言える仲ではあるな。それと俺の事はルルーシュでいい。ファミリーネームは言いづらいだろ?」

 

 

「ええっと、その、ルルーシュ君?」

 

 

「ああ、それでいい。俺も名前の方が呼ばれ慣れているしな、それと俺も小恋と呼ばせて貰うぞ。」

 

 

「ふぇ?!ああ、あの。その。よ、よろしくお願いします。」

 

 

顔を真っ赤にし驚いた後照れながら言葉を紡ぐ、成る程なあの二人が気に入るのがわかるような気がした。

 

 

「それでその、ルルーシュ君私ね、雪村さんと友達になれたんだ。それでねその、ルルーシュ君とも友達になりたいな。なんて思ってね、そのルルーシュ君はどうかな?」

 

 

なんと言うか律儀なのか天然なのやら、恐らくは後者なんだろうな。友達になりたい。そういう事を臆面もなく言えるのはとても勇気のいる事だ。

 

 

月島 小恋。彼女は思ったよりも強い人間のようだ。

 

 

「俺なんかで良ければ喜んで。」

 

 

その後義之と合流し明日の打ち合わせを軽く済ましその日は解散した、明日の本番が今から楽しみだ。

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