今の子どもたちが大人になった時「昔は電車でめっちゃ痴漢に遭ったってマジ?」と言える社会にしたい。
これがJJ(熟女)の黄金のような夢である。
そんなわけで、今年の1月に「#共通テスト痴漢撲滅」のお手伝いをした。
これは神戸市民のノラさん、共産党の喜田結さん(兵庫県議)、松本のり子さん(神戸市議)が始めたアクションだ。
三人は兵庫県警と関西の鉄道会社に「共通テストの受験生を狙った加害が煽られている、痴漢対策を強化してほしい」と要請した。
それを受けて、県警と鉄道会社が対策強化に動いた。
私はツイッターで「#共通テスト痴漢撲滅」「#受験生を守ろう」と呼びかけた。それに多くの方が共感してくれて、拡散に力を貸してくださった。
このアクションは全国に広がり、警察や鉄道会社が対策強化に動いて、様々なメディアでも取り上げられた。
テスト前日に毎日新聞の記事が出たことで、「#痴漢祭り」がトレンド入りして、広く周知されることになった(詳細はこちら)
その後もアクションを続けていて、痴漢抑止活動センターが主催する「痴漢ゼロしゃべり場イベント」を手伝っている。
6月に開催した「痴漢ゼロしゃべり場3」では、共産党の田村智子さん、立憲民主党の打越さく良さん、社民党の大椿ゆうこさん、弁護士の太田啓子さんに出演いただき、不肖アルテイシアが司会をつとめた。
イベントでは「性暴力や性差別をなくすために何ができるか?」をテーマに語り合い、田村さんの「政治家自らがセクハラしていて、性暴力が何かもわかっていない」、打越さんの「クオータ制にすると優秀じゃない女性が入ってくる、と優秀じゃない男性から言われる」といった言葉に膝パーカッションを連打した。
シスターフッドが尊いので、よかったらアーカイブ(YouTube)をご覧ください。
ちなみに与党の議員さんにもオファーを出したけど断られた、なんでやねん。
なんでやねん~~♪(永田町に届け)
喜田さんと松本さんは議会でも痴漢撲滅を訴え続けて、神戸市交通局が「チカンに遭ったら見たら 迷わず110番」と通報を呼びかけるポスターを作るなど、対策強化が進んでいる。
神戸市民として、マンモスうれぴー。
この一連のアクションは、私のフェミ友のノラさんが関西の鉄道各社に痴漢対策強化を訴えたけれど、ゼロ回答だったことがキッカケだった。
その後、ノラさんはたまたま喜田さんと松本さんが街頭演説しているところに通りがかり、「鉄道会社がやる気なくて困っている」と相談した。
それを受けて、喜田さんたちは鉄道各社にアポを取って要請に行き、議会でも県警に対策強化を求めた。
それが大きな動きにつながって、しみじみ思ったのが「議員isすごい」
議員は力を持っているのだから、それを困っている人のために使ってもらわなきゃ困る。
というか、私たちがそういう政治家を選ばなきゃいけない。
また「困った時には共産党って、ほんまやな」とも思った。
DVや性被害やパワハラに遭った時、共産党の議員さんに助けてもらった、という話を何度か聞いたことがある。
共産党のフードバンクでボランティアをしている友人は「コロナ禍で困窮している学生やシングルマザーがめっちゃ来るよ。一日一食しか食べてないから本当に助かります、と泣きながらお礼を言われるんだよね」と話していた。
また、以前からツイッターで池内さおりさんや山添拓さんや池川友一さんらの活動を見て「推せる」と思っていた。
私のように「共産党を箱推しだったわけじゃないけど、推し議員がたまたま共産党だった」という人は多い。
一方で共産党アレルギーの人も多いと感じる。
私も政治批判をしただけで「パヨク」「共産党のスパイ」とかネットで書かれる。
スパイだったらもっと隠密活動するだろう。すごい変装をして七つ道具とか使うだろう。スパイを舐めるなと言いたい。
それに「YouTuber小池晃は愉快やな。アキラ、おもしれー奴」とか呼び捨てにしないだろう。
「共産党」が悪口になるように「フェミニスト」も悪口に使われがちなので、そこにもシンパシーを感じる。
というわけで、映画『百年と希望』のパンフレットに以下のコメントを寄せた。
「党に対する批判も映しているのが推せる。『批判されたら訴訟や!』みたいなどこかの政党とは大違い。『共産党って、どうなの?』という人にこそ見てほしい、とっても面白くて泣ける映画。池内さおりさんの言葉に全アルテイシアが号泣しました」
7月には元町映画館で、西原孝至監督とのトークイベントにも出演した。
西原監督は「もちろん共産党から映画を作ってくれと言われたわけじゃない。
2015年に安保法案に抗議デモをする若者たちのドキュメンタリー『わたしの自由について~SEALDs 2015~』を撮る中で、共産党はもっとも市民に寄り添った議員がいる党だと感じた。
一方、世間は共産党アレルギーが根強く、この社会との乖離は何だろう? と考えて、それを解きほぐすような映画を作りたいと思った」と話していた。
今回、統一教会と勝共連合の報道を見て「察し」となった人も多いだろう。共産党はむしろ隠密活動のノウハウを教わってはどうか。
私がこの映画を見ていいなと思ったのは、ジェンダーの問題を真正面から描いているところだ。
たとえば、映画『香川一区』も面白かったけど、ジェンダーのジェの字もないのが不満だった。
性差別や性暴力の問題は、男性中心社会でずっと後回しにされてきた。
『百年と希望』では冒頭から池内さおりさんが出てきて、性差別や性暴力について訴える。
全アルテイシアが号泣したのは、彼女が過去を振り返る場面だ。
池内さんは四国の田舎に生まれて、親せきの集まりではお母さんがいつもこき使われていた。
「あれを買ってこい」「酒をとってこい」と命じるおじさんに、小学生の池内さんは「自分でとりにいけばいい」と言う。すると「さおり、こういうものなんや」とおじさんに諭される。
これはつまり「女は奴隷なんや」という意味だ。
奴隷のようにこき使われて、1人でこっそり泣く母を見て育った彼女は「この空間を変えたいと思った、母の居場所にしたかった」と振り返る。
池内さんは自身のラジオで「母がへそくりをこつこつ貯めて、東京の大学に行かせてくれた」と話していた。
大学に進学して、理不尽な社会を変えたいと共産党に入った娘に「あんたをアカにするために産んだんじゃない」「地元に帰ってこい」と母は言う。
この話に「おまえは俺か!!」と号泣膝パーカッションした女性は多いだろう。
家父長制のもと、女は経済力を奪われて、家という檻に閉じ込められ、自分で立つための足を奪われてきた。
母親世代は、男に養われて「主人」に尽くす以外の選択肢がなかった。
そんな母たちは娘に「あなたはこの檻から出ていきなさい」「仕事を持って自立しなさい」と希望を託す。
にもかかわらず、娘が社会で働いていると「そんな仕事ばっかりだと結婚できない」「そろそろ孫の顔が見たい」とか言うてくる。
どっちやねんな。
奴隷になるな、自由に生きろ。そう言って私を育てたのはあなたじゃないか。なのに、やっぱり奴隷になれと? 女が自由に生きるなんて許さないと?
こうしたダブルバインドに引き裂かれる、池内さんの痛みは私たちの痛みだから、私たちの声を届ける代弁者だと思えるのだ。
衆院選の応援演説では、町田彩夏さん、仁藤夢乃さん、北原みのりさん、小川たまかさんらが街頭でスピーチをして、女たちの膝パーカッションでクイーンのライブ会場みたくなっていた。
たくさんの女性が池内さんを応援して、ともに選挙を戦っていた。
私の周りでも「共産党推しじゃないけど、サオリン推しだから投票した」という女性が多かった。
にもかかわらず、彼女は落選してしまう。
落選を知った女性たちは「またがんばりましょう」「次はもっとうまくやります」と泣きながら池内さんを抱きしめる。
その場面を見て、私も泣きながら思った。
「なんで惜敗率1位なのに落ちるの? おかしいやないか共産党」
前回も今回も池内さんは惜敗率1位だったのに、党のルールによって比例順位が3位だったため落選したのだ。
それって民意を無視してるよね?「女性議員を増やそう」といくらブチアゲても、現職のおじさんが優先されたら女性議員は増えないよね?
「女たちの汗と涙の票をおじさんたちがかっさらっていく」という仁藤夢乃さんの言葉を、党の偉い人たちは真摯に受け止めてほしい。
こうした批判をちゃんと描いているところも、この映画の推せる点である。
男性党員が「おじさんの党になってるんじゃないか」と内省する場面もある。
「維新のふり見て我がふり直せ」ということわざがあるように、おじさん中心になると感覚がバグる。閲覧注意なセクハラ画像を党の公式YouTubeで流してしまったりする。
一方、西原監督によると『百年と希望』は「おじさん社会を批判しているのに、おじさんが出てこない」とおじさん評論家から酷評されたそうだ。
たしかに私も「アキラ不足やな」と一抹の寂しさは感じた。
けれども、これまで政治をテーマにしたドキュメンタリーは、おじさんとおじいさんしかいなかったじゃないか。
クセの強い昭和の大物政治家がわんさか出てきて、妖怪大戦争みたいだった。
つまり、今までがおじさん中心に偏っていたのだ。
『百年と希望』は若手の議員や候補者たちが出てきて、性暴力や性搾取、選択的夫婦別姓、LGBTQ、生理の貧困、ブラック校則、自殺率の高さ、気候変動……など、今まで“争点じゃない”とされてきた問題を訴えている。
そしてそれを若い人たちが応援している。
「あなたの“困った”という声から始める。それが政治です」と訴える池川友一さんに対する、20代の人気美容師・米田星慧さんのスピーチが最高だった。
「誰かがいじめられてます。じゃあ、手を挙げるのって『僕いじめられてます』って人が手を挙げるんすか? それとも『僕いじめてます』って人が手を挙げるんですか?
違うんすよ。見てるやつがおかしいと言わなきゃダメなんすよ、世の中って」
米田さんは池川さんに出会って、初めて政治を近いと感じたそうだ。また「べつにどの党がどうとかはない」とも話していた。
若い人の方がネガティブなレッテルに左右されず、フラットに政治を見ている。そこに次世代の希望を感じた。
私の親せきに40代のネトウヨおじさんがいて、その父親は80代の反共おじいさんである。
この親子は政治思想も男尊女卑も連鎖していて、とってもウザい。
私は子どもの頃から「おまえ、左巻きだけにはなるなよ」とか言われて「誰がおまえじゃジジイ!!」と内心バチギレていた。
「そんなデブだと嫁の貰い手がない」とディスられたことも、ひたむきに呪っている。
なので近寄らないようにしていたが、ひさびさに暑中見舞いでも出してみようか。
「お元気ですか? わたしは今フェミニストとして、共産党の議員さんと痴漢撲滅アクションをしています。敬具」と書いてみよう。
本音は敬具じゃなくFUCKと結びたいところだが、このおじいさんも商売が傾いて生活が苦しいようだ。うちの父親が貧困に陥って自殺したことも知っている。
それでも「左翼が嫌い」という理由で自民党に投票しているらしい。
思考停止にもほどがあるぞと言いたいが、もうすぐ死ぬしな……と思うと詰める気にもならない。
だけど私たちはちゃんと知るべきだし、考えるべきだろう。
若者の投票率の低さがやり玉にあげられるが、40代だって半分近くが投票に行っていない。
また「自民党に投票した理由は?」というアンケートに「自民以外知らない」「頭に浮かんだのが自民」という回答が多かったそうだ。
野党のことをよく知らない、なんとなく共産党アレルギーがある。
そんな人たちに『百年と希望』を見てほしい。そして自分たちが生きる社会をどんな社会にしたいか、ひとりひとり考えてほしい。
この映画は魑魅魍魎のバトルシーンも出てこないし、淡々と地味な映像が続く。それを見て「よし、またがんばりましょう」と私は思った。
でも西原監督が撮った妖怪大戦争も見たい気がする。
* * *
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