安倍晋三元首相が奈良市で銃撃を受け殺害された事件で、安倍氏のそばに配置され、主に安倍氏の後方を警戒する役割だった警護員が事件直前に位置を変更し、後方を主に確認する態勢がとれなくなっていたことがわかった。配置の変更は現場の指揮官に報告されていなかったという。
当時の警護警備の問題点を検証している警察庁が5日、明らかにした。
警察庁から検証の報告を受けている国家公安委員会や同庁は、こうした後方警戒態勢の不備が山上徹也容疑者(41)の安倍氏への接近を許したと判断。同庁は、事件を招いたのは「現場というより、指揮など組織としての対応の問題だ」と指摘している。
安倍氏は7月8日午前11時半すぎ、奈良市の近鉄大和西大寺駅北側で演説中に銃撃された。当時、演説場所のガードレールの内側には警視庁のSP1人と奈良県警の警護員3人がいた。安倍氏の右後方には2人いたが、うち1人はもともとガードレールの外側の車道上におり、安倍氏の後方(南側)を主に警戒することになっていたという。
ところが、安倍氏が演説を始める直前、この警護員は別の警護員の指示で、ガードレールの中に位置を変更。安倍氏の右手(東側)の聴衆が増えてきたため、主にその方向を警戒していた。これにより、後方を主に警戒する要員はいない状態になったという。