それは、今の超競争社会の中国で暮らすのはあまりにも過酷で、プレッシャーが大きすぎるからだ。
がんばったって、どうせ報われない
日本でもよく知られているように、中国では生まれた瞬間から「高考」(大学入試)の戦いが始まり、都市部では、子どもの頃から毎晩夜中まで勉強するのが当たり前で、それが大学まで続く。有名大学を卒業したら、次は就職だ。
就職後も996(朝9時から夜9時まで週6日勤務)を強いられ、次はいつ結婚するのかと親たちから急かされる。しかし、結婚するためには、男性は高額な不動産を購入しなければならない。やっと結婚できても、30年以上の住宅ローンを抱えることになり、その次はいつ子どもを産むのか、という親たちからの矢のような催促に悩まされる……。
そんな強いプレッシャーがある環境下でも、若者たちはこれまで周囲の期待に応えようと一生懸命努力してきた。だが、当然ながら、すべての人が親の望むようなエリートコースを歩めるわけではない。受験も就職も結婚も、自分の思うようにはいかない。
そんな閉塞感が漂う中でずっと過ごしてきたからこそ、彼らは「タンピン主義」という言葉に飛びつき、「そうか。そういう仙人みたいな生き方もあるんだ」「無気力でもいいんだ」と共感を寄せたのだ。
中国のSNSには、「タンピン主義」に対する若者たちの肯定的なコメントが大量に書き込まれている。
「がんばったって、どうせ報われない。社会の階層はすでに固定化されていて、ちょっとやそっとでは変わらないのだから。一生働いても家を買えないのなら、最初から買わないほうがいい。そうだろう? タンピン主義に大賛成だ!」