旧統一教会の信者だったライターが語る 教団の実態と脱会できた理由
街頭や電話など悪質商法の勧誘に意図的に乗り、潜入して取材を重ねるルポライター多田文明さん(57)は1987年から約10年間、旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)の信者だった。脱会後に教団相手に裁判を起こしたこともある。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多額の献金などの問題点が指摘されている教団の当時の実態はどうだったのか。自身の経験をもとに語った。
きっかけは大学4年
旧統一教会は80年代以降、不安をあおって高額商品を販売する「霊感商法」などが社会問題化した。2009年、関連会社が霊感商法に関わったとして社長らが逮捕された事件を受け、教団は同年、責任をもって会員を指導するとの「コンプライアンス宣言」をしたとしている。ただ、教団の問題に取り組む弁護士たちは「その後もトラブルは続いている」と指摘している。
現在、悪質商法などの実態を体当たりで取材する多田さん。そんな仕事を始めた原点は、1996年まで教団で活動した経験だった。「人をだましてお金をむしり取る行為は許されない。まずは身の回りの悪質商法の手口を明かし、知ってもらって身を守ってもらいたい」。そんな思いが出発点だった。
ただ・ふみあき
詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリスト。「キャッチセールス評論家」「悪質商法コラムニスト」などの肩書もある。2001~02年、潜入ルポを雑誌に連載し、05年に著書「ついていったらこうなった」を出版。同名のテレビ特番はシリーズ化され、バラエティーや情報番組などに出演している。
信者になったのは87年、大学4年の時だった。友人からバレーボールに誘われたのがきっかけだった。その後、自己啓発の勉強を紹介され、「世界で最も読まれている本は聖書」「世界情勢も知るべきだ」「就職活動に有利になる」などと言われ、納得してしまった。聖書の勉強と思わされたままビデオを見せられ、カウンセリングを受けながら、少しずつ教義を刷り込まれた。
「この世の人たちはすべて堕落人間で、『神の子』にならないと地獄へ落ちるという恐怖心を教え込まれた」
その正体が「統一教会」と聞かされても、もはや拒むことを考えられない心理状況になっていたという。その後、泊まりがけの合宿に参加して、信者への道を歩み出した。
研修で講師役に
信者になってから睡眠時間を削って精を出したのが街頭での勧誘活動だった。
人通りの多い駅前などで「姓名判断をしてみませんか」との誘い文句で声をかけ、部屋の一室で待機している占師役の信者まで誘導する。時には、指示役の信者から「『もっとお金のある人を連れてきなさいよ』と怒られることもあった」と振り返る。
記事の後半では、多田さんが脱会したきっかけや問題の根深さについて語ります。
大学卒業後は企業に就職した…
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