- 取材記者(夕刊フジ)
- SATOSHI SASAMORI
- 笹森 倫
- 東京夕刊フジ編集局運動部
平成16年入社
大学在学中から漠然とマスコミ志望でしたが、手当たり次第に受けていたようなもので、媒体は絞り切れていませんでした。2年間の就職活動で内定はゼロ。学生時代からアルバイトしていた編集プロダクションで引き続き働かせてもらう中で、やはり自分は文字媒体が好きなんだという確信に至りました。
ただ下請けはあくまで発注側のリクエストに応えるのが仕事。自分がやりたいテーマを掘り下げるため、より主体性をもって仕事ができる出版社の編集者か、新聞社の記者への転職を考えました。新聞社でありがたかったのは、未経験者でも年齢制限が緩いことです。
記者といっても当時は報道寄りではなく、雑誌づくりに携わった経験を生かせる、いわゆる中面をゆくゆくは担当できればという思いでした。特に30代以上の男性向けグルメ雑誌のライターなどの実務経験は、サラリーマンを読者層とした夕刊紙で存分に発揮できると考え、夕刊フジの記者職を志望しました。
夕刊フジ東京編集局の報道部から、特に志望でもなかった運動部に異動して、はや12年。今日もスポーツの現場で取材中です。
おもな担当はプロ野球・巨人に張り付く「番記者」。春季キャンプやシーズン中はチームを追いかけ、全国を飛び回る生活です。
自分で取材テーマを設定し、首脳陣や選手、球団スタッフらに話を聞き、出勤日はほぼ毎日、記事を出稿しています。
巨人では昨秋から原辰徳監督が再々登板。報道陣とのつきあい方、メディアを使ったチームの盛り上げ方を熟知したスター監督の一挙手一投足を逃すまいと日々、多くの記者が張り付いています。
私は幸い、スポーツ紙の記者とは毛色の違う、夕刊紙記者らしい〝雑談力〟をおもしろがられて、顔と名前を認識されるようになりました。質問をするとありがたいことに、弊紙の特性を踏まえてあえてセンセーショナルなコメントをくれるので、大きな反響のある夕刊紙らしい記事を書くことができています。
その場限りのつきあいで終わるヒット&アウェーの取材と違い、同じ現場に通い詰める番記者はこうした関係構築がきわめて重要です。
入社前に勤めていた編集プロダクションでも取材経験はありましたが、夕刊フジ配属後は取材相手の対応がずいぶんよくなり、「勘違いしてはいけない。相手は自分ではなく、社名を見ている」と肝に銘じてきました。だからこそ逆に、社名ではなく自分という人間を見た上で信頼関係を築いてくれる取材対象は、何よりも大切にしていきたい存在です。
「日本で一番忙しい人たちこそ、日本で一番上質な情報を得るべきだ」
私はこんな生意気なことを夕刊フジの採用面接の場で訴えました。中心読者層は中年サラリーマン。実際に世の中を動かす中心世代に向けてニュースを届けることは、ごまかしの利かない真剣勝負であり、やりがいがある仕事と思ったのです。
当時より社会の複雑さや報道の裏表を知った今でも、本質的にこの考え方は変わりません。
また、弊紙は他の媒体に比べたら人員が少ない分、縦割り組織の弊害はなく、一兵卒から幅広いジャンルの現場が経験できます。ネット情報のコピペではなく、現場で生の声に接することが、記者の矜持でもあります。
記者にもいろいろなスタイルがあります。魚釣りのように定点観測で何かが起こるのを忍耐強く待つよりは、銛を持って自ら海に潜り魚を追うタイプの方が弊紙向きだと思います。どこを泳ごうが自由だが、〝漁場〟は自ら開拓するしかない。そこにやりがいを見いだしてくれる、狩猟民族の新戦力を待っています。