象徴的な一瞬とらえる、
地道な交渉でニュースの最前線へ。

記者
記者

編集 データビジュアルセンター写真映像グループ
2014年入社
外国語学部卒
※所属部局は取材時点のものです

CAREER STEP

2014年

入社 東京・編集局写真部(現・編集 データビジュアルセンター写真映像グループ)

政治、経済、事件、災害、スポーツ など、幅広い現場で写真の基礎を学ぶ。

2016年

大阪・編集局写真映像部(現・大阪・編集ユニットビジュアル報道グループ)

関西、中国、北陸地方などをカバー。ドローンの撮影を始める。2018年に1カ月の育休。

2019年

東京・編集局写真映像部(現・編集 データビジュアルセンター写真映像グループ)

映像も本格的に業務に。双子が生まれ、2回目の育休を取得。

2021年

編集 データビジュアルセンター写真映像グループ

東京五輪・パラリンピックを担当。

なぜ就職先に日本経済新聞社を選んだのですか。

2011年の東日本大震災が報道写真に興味を持つきっかけでした。大学2年生だった私は自動車運転免許の合宿で山形県にいました。電気やガスが止まり、東京の自宅に帰りたくても帰れない。そんな中、滞在していた宿に隣の福島県から多くの人が避難してきました。同じ屋根の下、同じ釜の飯を食べる2週間の生活で被災者の方々を撮影したことで、写真で何かを伝えることを仕事にしたいと思いました。

就職活動では全国紙、地方紙を問わずカメラマンを募集している新聞社に応募しました。幸いなことに複数内定をもらい、どうすべきか悩みましたが、デジタルに力を入れている点を理由に日経を選びました。スマホとSNSが急速に普及し始めていた当時、大学生の情報収集はスマホやパソコンが中心になっていて、電子版が充実している日経なら自分と同じ世代にも届くと思いました。震災では停電でテレビが見られなかったり、SNSのデマに惑わされたりする経験をしましたが、確かな情報をインターネットを通じて伝えられると考えました。

現在の仕事内容を教えてください。

世の中で起きるできごとを写真や映像を使って記録するのが主な仕事です。「今この位置からこの時間に撮影しているのは世界で一人だ」と自分に言い聞かせ、できごとを象徴する一瞬を撮り逃さないよう意識してシャッターを切っています。被写体は多種多様です。大きな事件や災害が起きれば現場に駆けつけ、経済ニュースなら社長交代の記者会見や新商品の発表会なども撮影します。

2021年は東京五輪・パラリンピックを担当し、勝敗が決まる瞬間やメダルを手に喜ぶ姿などスポーツ写真を撮影しました。開催直前にはエンジニアやデザイナーと一緒に「日経ビジュアルデータ」も作成しました。「パラ車いす その形にはワケがある」というタイトルで、陸上、テニス、バスケで使う車いすを私が撮影した画像から3D化して形状や機能を解説しました。

突発のニュースや記者の依頼にあわせて撮影するだけでなく、写真特集「IN FOCUS」や電子版向けに自分でテーマを設定して撮影と執筆を担当することもあります。

この仕事ならではの難しさと
面白さを教えてください。

最前線の現場に行けることが面白さであると同時に難しい点です。現場に入る交渉やハードルは、一般に立ち入りできない場所であるほど厳しくなります。例えば、新型コロナウイルスの感染が拡大する2020年、重症者の搬送現場を取材しました。徹底した感染対策が必要な医療現場の取材はほとんど断られ、心が折れそうになりましたが、半年かけて医師と関係性をつくり撮影の許可をもらえました。努力が報われやりがいを感じる瞬間でした。

海外の現場に行くこともあります。2018年に「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーで、農業の近代化に関わる日本企業を取材しました。

経済紙として、経済や最新テクノロジーを写真や映像で伝えることにも面白さを感じます。例えば量子コンピューターは黄金のシャンデリアのような希釈冷凍機が特徴ですが、その部品の製造元を調べてみると日本の町工場の職人が作っていることがわかります。専門家の分析やデータの解説が重要な経済ですが、こういった現場を探して表現することも日経のカメラマンの仕事です。

今後のビジョンを教えてください。

デジタルだからこそできる表現に挑戦したいです。1枚の写真が持つ力は重要ですが、Web上では映像、音声、グラフィック、3D画像など要素を組み合わせて表現できます。日経電子版以外にもSNSやYouTubeなど日経のコンテンツをビジュアルで届ける場は広がっています。

誰もがスマホで写真や映像を撮って編集できる時代になりました。現場を自分の目で見て撮影することはこの仕事の根幹ですが、災害や事件では現場に居合わせた人が最も強い写真を撮影できます。その写真が正しいものだとわかる場合には編集に生かすことも選択肢に入ります。

よく表現の参考にしているThe New York Timesは「Visual Investigations」シリーズで、SNS上の映像や衛星画像を駆使して隠された事実や当局の噓を暴く調査報道を行っています。インターネットにあふれる写真や映像をどう報道に生かすかは現代ならではの課題です。写真と映像が報道で新しい価値を発揮できるよう、海外メディアの研修を受け実践を重ねていきます。