後がないんじゃ、後が…
組織の一員として勤め人生活を送り、このセリフがふいに口をつくような閉塞感に満ちた日々を送る人はいるだろうか?
かくいう俺がそうだ!
そんな俺みたいに日々苦虫を嚙み潰してる方におススメしたいのが「仁義なき戦い」だ!
今から47年前の映画であるが、キャストやスタッフのギラギラしたハングリー精神が生み出すパワーがフィルムに叩きつけられている作品である。
いわば俺は遅れてきた仁義世代。初めて本作をレンタルで観た際はネットも今ほど普及していなかった。
ましてや同年代で東映ヤクザ映画を観ている人間など周りにいるはずもなく、誰もいない壁に向かって「おい!凄えぞ!仁義!」と叫ぶしかなかったのを思い出す。
正直、至る所で語られている映画なので「オマエみたいなハンパ者が語る舌など持っちゃいねえだろ!」と言われるかもしれん。
だが、ここらで黙っちゃあ男になれんですけん!
…と反射的にニワカ広島弁で返したくなる。
…という訳で今回は刺し違える覚悟で『仁義なき戦い』について紹介しようと思います。
原爆が投下され終戦を迎えた広島。
暴力フェスが日夜開催される治安ゼロのストリートと化していた。そんな物騒極まりない土地にて、菅原文太扮する戦争帰りの広能昌三がひょんなことからボランティア精神で暴漢を射殺!
結果、度胸と心意気を買われ、山守組のヤクザとしてデビューを果たすのであった。
たまにパクられてはムショに放り込まれる昌三を尻目に、時代と共に組織としての勢力を拡大していく山守組。
だが、その代償としていつしか身内同士で抗争が勃発!
果たして誰が生き残るのか。そしてプチ浦島太郎状態で出所した昌三は仁義を貫き通せるのか。
裏切りと謀略に巻き込まれながら、仁義を見失いサバイバルに血道を上げる組員達の姿を描いている。
爆音と共に映し出されるキノコ雲、白昼堂々闇市でレイプを敢行する米軍相手に速攻で喧嘩を売る菅原文太、いきなりチンピラの腕を一刀両断する梅宮辰夫!!という、のっけからとんでもない引きをオープニングで炸裂させる本作。
序盤は指詰めギャグなど挟むものの、話が進むにつれギスギスした人間関係はエスカレート!
誰もが威勢よく散っていく『人が死ぬセンバツ高校野球』の様相を呈していく。
おかげさまで本作は土や泥が似合うメンツが顔を揃えている。
芸術的な角刈りの菅原文太。
無理がある学ランコスプレを披露する梅宮辰夫。
グラサンが体の一部になった松方弘樹。
潔いほどの狂犬ぶりを見せる渡瀬恒彦。
保身にかけては右に出る者のいない田中邦衛。
人徳ゼロだが抜け目のない策士中の策士の金子信雄。
そして、監督を務めるのは当時、撮る作品全てにアナーキーさが滲む『映画界の一人セックスピストルズ』の深作欣二。
こうして字にしてみても胸やけしそうなメンツであるが、上記に挙げたメンツ以外も脇役に至るまで、グイグイ画面の前に出てくる。
誰もが省エネ演技という言葉とは無縁な作品だ。火傷しそうなハイカロリー演技を画面に叩きつけてくる。
それでも熱は収まらず、撮影当時キャストスタッフ全員が元気過ぎて、早朝から深夜まで撮影。終わったら朝まで飲み会というハードなスケジュールで回し睡眠時間は全員30分。
次の日、監督はカメラを回しながら寝落ちしていたという壮絶なエピソードがある通り、画面から役者さんの迸るエネルギーをビシバシ感じることができる。
ヒットしたのもさることながら、これ一本で『仁義なき戦い』は収まらず以降、『広島死闘編』『代理戦争』と同年に2本公開(⁉︎)、翌年に『頂上作戦』『完結編』を2本公開という、2年で合計5本という異常ともいえるペースで続編を公開したのだった。
何というか、すげえサービス精神だな!東映!!
ともあれ当時の落ち気味だった任侠映画人気や時代への閉塞感を、新進気鋭の監督と役者で風穴をブチ開けた掟破りの本作。
当時は勿論、今なおヤクザ映画の金字塔として時代を超えて支持されるのは、役者たちが刹那に見せるハイカロリー演技もさることながら、やはり時代を問わずに明日から使いたくなるパンチラインおよびムーヴがオンパレードなのが大きな要因なのではなかろうか。
例えば、こうだ。
松方弘樹が煮え切らない金子信雄に放つ「アンタ最初からワシらが担いどる神輿じゃないの!神輿が勝手に歩ける言うんなら歩いてみないや、おぉ!?」は人生で一度は上司に放ちたいセリフだ。
使うタイミングを間違ったら確実にクビになるとしてもだ!
更に「狙われるもんより狙うもんのほうが強いんじゃ」という菅原文太のセリフはリスクを恐れる上司ないし同僚に放ちたい。もちろん、髪型は芸術的な鋭角の角刈りと薄紫のスーツで!
あるいは菅原文太と梅宮辰夫のリストカット盃。
これは「信用出来る」と判断した野郎と交わしたくなるムーヴだ。
そして松方弘樹の気合の入ったグラサン着用のサグい遺影である。
俺も同じ構図で、この遺影を自らの葬式で飾ってほしいと思わせてくれる。
…とまあ、上記以外にも日常で思わず使いたくなるセリフやムーヴが盛りだくさん。中には記事を読んでいる人で「あれないじゃん!」という人もいるかもしれん。
そんな人に対しては「さあ…やれやぁ…」と劇中のベッドに寝転ぶ菅原文太のモノマネで対応させて頂きます。
ともあれ、大なり小なり組織に生きるものには葛藤がつきまとうものだが、それはヤクザも同じ!
カタギだろうがヤクザだろうが揺るがない縦社会の構造。
社会のルール外にいるはずのアウトロー達が結局、トップダウンの指揮命令や政治的な思惑による手のひら返しに巻き込まれ翻弄されていくのが実に皮肉だ。
本作における上意下達によっておきる抗争と悲劇を見るにつけ、今も昔も構造は変わらないというのが伺える。
何なら昔よりタチが悪くなっているフシすらある。そんな構造にあって、仁義を通そうとすればイモを引くか、死ぬか。
見苦しいほどに保身に走る奴ほど生き残っていく。
生きるというのは必ずしもカッコいいことばかりではない。
不様な奴ほど生き残るというシビアな教訓を残してくれる。
おかげさまで本作はどこまでもヒーローが不在。
だからこそ菅原文太がラストの葬式で銃を乱射し「山守さん、弾はまだ残っとるがよぉ…」と凄むのが精いっぱいなのがやるせない。
終戦後でありながら、戦時中同様右も左も分からない若者たちが権力者に信念や理想を利用され命を散らせていく本作。
違いがあるとするならば、国同士か組同士位だ。
このようにタダのヤクザ映画と一言で終わらせないテーマを内包している。
本作を鑑賞すると常に文太的にありたいと思いながらも、「汚いなあ!」と思われる金子信雄や田中邦衛的な側面が自分の中にあるのを否定できない。
どう見てもウソ泣きな演技で許される邦衛力、自らのプライドをかなぐり捨ててでも権力の頂点に固執する金子信雄力も、あれはあれでサバイバルの術だと今になると思う。
本作を見た後、是非一旦周りを見渡してほしい。
自分であれ他人であれ、本作のキャストの中に身の回りの誰かに似ている人を見つけられるだろう。
いずれにせよオッサンの映画ファンだけの専売特許にするには勿体ない本作。
悪い大人に利用されない為の教材として道徳の授業でも流して欲しい、ヤクザ映画の枠だけでは収まらないストリート系の映画ですよ。
文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot・狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド
©︎東映
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