1980年代後半、学生時代の仲間内
のある飲み会のパーティーがあっ
た。六本木。
後輩にあたる人という初対面の男の
子がいた。帰国子女だという。今
日本の大学に編入で通っていると。
後輩です、と。
撞球の話になったら、The U.S
ではかなり撞いていて自分は相当
な腕だと豪語する。
ふーんと聞いていたが、私が飲み
会後に女性を連れて玉撞きに行こ
うとしたら自分も行くと言う。
日本に20年ぶり帰国してからはビ
リヤードやってないから、と。
いいよ、と言って一緒に新宿の店
に行った。
向こうではハイスクールでもカレ
ッジでもプール三昧だった、とか
言っていた。

でも、こんな感じのファミリービリ
でも、こんな感じのファミリービリ
ヤードだったのだろう。
ヘイ!カマン!
オー!ディナイ!ダム!
てな感じで明るく騒ぐ。
その男の子、我々の日本式撞球
に直面して言葉を無くしていた。
私たちは全くプレー中は言葉を
発せず、顔色も変えない。
私も彼女もだ。(この彼女とは
28時間の撞き通し稽古をした事
もあった。撃剣の立ち切り稽古
のようなもの)
これが日本式。
剣士の果たし合いのようなものが
日本の撞球なのである。
フレンドリーさも敵意さえもない。
そういうのは超えたところに心が
ある。
深淵にして、静寂の中に動あり。
ザ・日本。
その男の子、玉撞き勝負で私に
スボコにやられただけでなく、
私の彼女にもボコボコにやられ
た。
金など賭けなくとも、キュー取る
ならば真剣勝負だ。
何だかシュンとなって途中で帰っ
て行ったので可愛そうにも思った
が、またねと見送った。
日本式果たし合いでの武士の情け
とは、どんな相手であろうと手心
加えず本気でやる事であり、死活
を覚悟する者への認知と認容の事
だ。
介錯こそが「武士の情け」の最た
るものである。
帰国子女だろうが、日本人ならば
知っておくべきだ。
心得の条として。
これは今でもその境地は変わらない。
ビリヤードって楽しいよぉ〜、
みんなで仲良くオッパッピー(古)♪
みたいなのは、私からしたら興味
のない世界の事なのである。