柏木 凌真
編集 社会・調査報道ユニット社会報道グループ
2014年入社
文学部卒
※所属部局は取材時点のものです
入社 東京・編集局企業報道部(現・編集 ビジネス報道ユニットグローバル消費産業グループ)
自動車部品メーカーや町工場を取材した後、アパレル業界を担当しファッションブランドやトレンドの記事を執筆。
西部支社編集部(現・西部支社編集グループ)
福岡県警や裁判などを担当。出張先で遭遇した熊本地震など災害現場や、沖縄県の基地問題も取材。
東京・編集局企業報道部(現・ビジネス報道ユニットグローバル消費産業グループ)
食品や飲料メーカーを担当。
東京・編集局社会部(現・編集 社会・調査報道ユニット社会報道グループ)
警視庁と警察庁を担当。サイバー犯罪を主な取材テーマとするほか、東京五輪の警備などを取材。
就活で新聞社に興味を持ち始めた頃に図書館で全国紙や地方紙の読み比べをしており、日経の独自性が魅力的に思えたことが大きな理由です。新聞は各社の主張やニュース価値の判断が反映されるものですが、特に若い世代には日々の内容が似通って見えると思います。そうした中で、経済に焦点を当て他紙にはないニッチな記事や独自の視点、テーマを扱う日経は読み比べをしていて単純におもしろかったですし、新聞も商品なので特徴が差別化されていることで競争力があると感じました。
また記者として働くことについても、入社前はいわゆる社会部の仕事ではなく企業取材がしたいと考えていたので、新人のうちに警察取材をするほかの社ではなく日経を選んだという事情もあります。
ただ入社後はたまたま社会部の取材をする機会を得て魅力を知り、今は志望して現在の部署にきたので、結果論ですがこのような柔軟なチャレンジができるのも職場としての魅力と思います。
警視庁、警察庁の記者クラブに所属し事件や事故のニュースを追いかけたり、警察行政の取り組みを取材したりしています。サイバー犯罪が主なテーマで、金銭目的の事件から日本の機密情報を狙うサイバー攻撃まで幅広い対象です。取材するのも警察だけでなく、学者や弁護士、セキュリティー会社のエンジニア、ホワイトハッカーなど様々です。
2022年には警察庁がサイバー犯罪への対応に特化した部署を新設するなど大きな動きもあります。それぞれの事件を追うとともに、警察や関係機関が今後の対策や戦略をどう描くのか取材するのはやりがいがあります。
また社会報道グループがカバーする範囲は広いため、普段の担当に関係なく社会の大きな動きを総力取材することもあります。最近では新型コロナの暮らしへの影響や緊急事態宣言下の街を取材。21年10月の衆院選では選挙戦に絡んだ企画の一つで沖縄県の基地問題をテーマに記事を書きました。自分の担当にとどまらず様々な取材ができるのは刺激になります。
対応する仕事内容の幅広さが難しさであり、醍醐味でもあると思います。日々のニュースは想定外も多く、時には自分が全く知らない分野について短時間でも勉強して理解し、誰にでもわかるように文章で表現する必要があります。もちろん詳しい取材先に話を聞くのですが、理解が浅ければ的確な質問ができず、かみ砕いた説明も難しくなります。
自分の担当分野には詳しくなりますが、数年で変わることが多いためそのたびに学び直しです。苦労しつつも、専門家や業界人と対等に話せる知識を持ちながら「素人」としての視点を失わないバランス感覚と視野の広がりはこの仕事ならではだと感じます。
また社会報道は災害や事件、事故の遺族の方や、社会的に苦しい立場の方を取材することもあります。非常につらい局面もありますし、当事者をはじめ、マスコミに不信感を持つ方もいます。どういった言動が正しいのか、正解もノウハウもありません。仕事である以前に、まずは目の前の人に誠実に向き合うことが何より求められることもあると感じています。
21年から社内の組織が変わり、新聞社には伝統の「社会部」の呼称がなくなりました。マスコミ業界には社内外ともに独自の慣例が多いですが、今後は大きく変化していくと感じます。例えば少し前まで記者は電子版に書いた記事のアクセス数を気にする必要はなく、そういった評価に左右されない姿勢が求められましたが、現在はいかに読まれるかも大きな指標です。日経だけでなく、業界としてそうした変化があると聞きます。読者ニーズと向き合い柔軟に対応していきたいと考えています。
一方で、変化の中でも社会部が担ってきた報道を維持し、発展させることは必要です。若い世代を中心に新聞離れは進みますが、日経は企業の経営層や会社員に幅広く読まれる強みがあります。SDGsなどへの関心が高まり、企業も利益の追求ばかりでなく、投資家など様々な方面から社会課題の解決に関わっていくことが求められる時代です。時流をとらえ、事件・事故や災害、マイノリティー、社会で困っている人に目を向けるきっかけとなる報道の仕方を考えていきたいと思います。