マーケットの動きを日々追いかけ、
その「奥深さ」に肉薄する。

記者
記者

編集 金融・市場ユニット市場グループ
2011年入社
社会学研究科修了
※所属部局は取材時点のものです

CAREER STEP

2011年

入社 東京・編集局産業部(現・編集 ビジネス報道ユニットグローバル基幹産業グループ)

医療・介護業界を担当。少子高齢化の最前線で奮闘する企業を取材するなか、社会問題を掘り下げ世の中に発信する意義ややりがいを知る。

2012年

高松支局

地元企業や電力会社、地域交通、市政などを幅広く取材。瀬戸内海の離島取材が思い出。

2015年

東京・編集局経済部(現・編集 政策報道ユニット経済・社会保障グループ)

農水省や経産省、復興庁を担当し、環太平洋経済連携協定(TPP)などの通商協定やエネルギー政策、復興政策を取材。日経ヴェリタスを経て、日銀の金融政策や為替・金利の動き、国内景気の動向を追う。

2021年

編集 金融・市場ユニット市場グループ

株式市場や社債市場、グローバルなマネーの流れを取材。マーケットやマクロ経済と人々の日々の生活との接点を分かりやすく伝えたい。

なぜ就職先に日本経済新聞社を選んだのですか。

中学校のころまで、親の転勤で北は北海道から南は九州まで日本各地を転々としたことが原体験のような気がします。新しい場所で新しい友達に出会ったり、食べ物や気候などちょっとした文化の違いに驚いたりと、未知の世界に触れることが楽しかった記憶があります。

大学では都市社会学を専攻し、文献などで事前調査をした上で、実際に街に出て出会った人に話を聞いて論文を書いていました。大学卒業後には貿易会社で働いた経験もありますが、2年ほど勤務したのちに大学院に復帰しました。研究生活を送るなかで、調査・取材・執筆という新聞記者の仕事と似通っており記者の仕事が自分に合っているのではと思いました。

数あるメディアの中から日経を選んだのは、できるだけ丁寧・中立的に事実を報道しようとしていると思ったからです。数字が多く読みづらいなどと言われることも当時から多くありましたが、その裏にはできるだけ客観的な事実を見つめ描き出そうというこだわりを感じました。「数字に忠実に」。入社から10年がたった今も、そんな思いを胸に日々記事を書いています。

現在の仕事内容を教えてください。

株価をはじめマーケットの動きを日々追っています。所属する金融・市場ユニットは2021年4月、もともと経済部(為替・金利)、証券部(株式・社債)、商品部(商品市況)の3つの部署のマーケット担当機能を集めて新設されました。金融のグローバル化が進むなか、担当分野が細切れになっていたのではマネーの流れはつかめないとの判断からです。

朝一番には米国をはじめ海外の株価や金利、商品市況をチェックします。日中は証券会社や資産運用会社などに取材し、記事を書きます。夜は翌日以降のアイデアを練ったり取材先との懇談をしたり、早めに帰宅する日もあります。

今は、新型コロナ感染拡大を受けた各国政府の財政出動や中央銀行による金融緩和が転機に差し掛かり、中国の債務問題なども世界景気の下押し要因になっています。世界のマネーがどう動こうとしているのか、リスクはどこにあるのかなどを見極めいち早く報道することを心がけています。市場が複雑化するなか簡単なことではありませんが、日々奮闘しています。

この仕事ならではの難しさと
面白さを教えてください。

「株式市場は半年先を見る」。古くからマーケットで言われてきた言葉です。正直、2018年にマーケットの取材を始めたときは意味がよく分かりませんでした。経済官庁などでは経済統計をもとに景気や政策を判断することが多かったためです。

その後取材を通じてなんとなく分かってきたのは、マーケットの「素早さ」と「奥深さ」です。統計は経済分析に必要不可欠ですが、結果まで数週間や数カ月かかることも少なくありません。一方、マーケットは世界のどこかで24時間動いています。シビアに利潤を追求する人々が集まっており、地球の裏側での出来事や市況の変調、企業動向などあらゆることに敏感に反応します。政策決定や企業業績などをいち早く織り込むというわけです。

もちろん市場は万能ではありません。1990年ごろのバブル崩壊や2008年のリーマン危機は市場の機能不全が招きましたし、今はコロナ禍で余剰マネーがもたらしているひずみも無視できません。こうした問題の端緒をどう見つけ報道するかの難しさと面白さをいつも感じています。

今後のビジョンを教えてください。

これまで企業や地域経済、経済政策や金融政策など様々な分野を担当してきましたが、共通して重視してきたのは現場に足を運ぶことです。恥ずかしながら、入社間もないころ、企業の広報から聞いた話で原稿を書いたときに、あるデスクから「現場を実際に見たのならこんな記事にはならない」と突き返されたことがあります。自分が記事を書いていても楽しくないとも感じていたのも事実です。今は新型コロナウイルスの感染防止のためになかなか赴きづらいですが、伝聞ではなく現場を自分で見て聞いて感じたことを基に記事を書き続けていきたいと思います。

また、昨今の株価上昇で恩恵を受けた人もいる一方、マネーのひずみや格差拡大などの社会問題も世界的な課題になりつつあります。こうした問題に正面から取り組んでいきたいと考えています。

休日には友人とフットサルをしたりキャンプに行ったりするなどリフレッシュしています。こうした肩の力を抜ける時間と環境は、今後も仕事と同じくらい大切にしていきたいと思っています。