娘が
ケミカルウォッシュのジーンズを買ってきました。
ケミカルウォッシュ…。
なんでも10年くらい前から復活の兆しがあり、今ではアシッドデニムなどという言い方もするそうですが・・。
このまだらの濃淡を見れば、80年代後半に爆発的な人気を博した後、ほどなく凋落し、バブル後期には、「迫害」と言ってもいいほどの、徹底的な不人気アイテムに成り下がった、あの「ケミカルウォッシュ盛衰記」を思い浮かべないではいられません。
あれほど爆発的に売れたケミカルウォッシュのジーンズは、どうして一転、凄まじいまでの不人気アイテムに成り下がってしまったのでしょうか。
当時、ジーパン屋のバイトをしていましたので、その頃の記憶とカタログをまさぐりつつ、少し思うところを書いてみたいと思います。
そもそも、ケミカルウォッシュはジーンズの色落ち加工の一つ、つまりカラーバリエーションの一つに過ぎないのですから、人気がなくなればそのカラーだけ廃盤にすれば済むような気がします。
実際に、1989年頃のカタログに存在した「リーバイス502-XXのVS(ヴィンテージ・ストーン)」は、ヴィンテージ風アイテムとケミカルウォッシュ調の加工とのミスマッチにメーカーが気付いたためか、ほどなくワンウォッシュのみの展開に切り替わっています。
同時期にLeeが発売した「カウボーイジャケットの復刻版(401)」は、当初K-WASH※しか色を選べなかった(泣く泣く、これを買ったので覚えている)ものの、ほどなくワンウォッシュに切り替わったように記憶しています。
※ K-WASH(カンサスシティウォッシュ)は、通常のストーンウォッシュのことなのですが、どうしたわけか、この401ではケミカルウォッシュにしか見えない斑模様っぷりでした。
しかしながら、ケミカルウォッシュは、流行収束後も一部で根強い人気があり、特に広いワタリと狭い裾幅のモデル(リーバイスでいえば637など)では、その傾向が顕著でした。
BIG JOHNには、「スパナ」という"斬新かつ大胆"なデザイン・シルエットのみを展開するシリーズがあり、ここではウルトラロックウォッシュというケミカル系ウォッシュがカタログを埋め尽くしていたものです。
特に「ワイド・ボトル・ジーンズ」と銘打たれたU5040というモデルは、「大胆にも程がある」と言いたくなるような、極端に落差(ワタリと裾の)があるシルエットで、一度見たら忘れられません。
思うに、当時のケミカルウォッシュ叩きには、こうした「終焉したはずのケミカルウォッシュが施された、極端なシルエットのジーンズ」を積極的に着用する人々への敵愾心、のようなものが、潜んでいたのではないでしょうか。
こうして当時の記憶を辿っていて気付いたことは、
ファッションアイテムの流行には、特定のアイテムが人気を博す「正の流行」だけでなく、特定のアイテムが断じて人気商品とならない「負の流行」も存在するのだということです。
例えば、70年代に流行したベルボトムのジーンズ。
1990年代初頭から、リバイバルブームで人気を取り戻したと記憶していますが、1980年代においては過ぎ去りし70年代の反動か、「ラッパズボン、ダサい」というイメージが強く、一顧だにされなかったのではないでしょうか。
漫画「うる星やつら」で、ベルボトムを履いた70年代風ファッションの男性に言い寄られた女性が、「悪趣味なものを見ると悲鳴が出る」と言って拒絶反応を示す場面がありましたが、先鋭的なアイテムが一度大流行する(正の流行)と、その後の反動(負の流行)もまた大きくなるのに相違ありません。
そのせいかどうか分かりませんが、ケミカルウォッシュの復権には長い年月を有したようですし、現在売られている商品も、かつての「スパナ」に見られるようなアクの強いものではないようです。
とはいえ、なぜ「化学薬品をふんだんに使って色を抜く」加工法をわざわざ復権させる必要があったのか、この点だけはよく分かりません。
コストもかかるでしょうし(先述のリーバイス502-XXは、VS加工のものはワンウォッシュより2千円高額でした)、健康被害や環境問題の観点からも、しないに越したことはないように思うからです。
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コメント
お疲れ様です。僕も、積極的にケミカルウォッシュを履こうとは思いませんが、80年代のアイドル、渡辺美里さんとか、マドンナとか着ていて、女子が履くと可愛いなと思います←酷い差別ですね(笑)。
うーん、日本は501信仰が強すぎる気もします。買いませんでしたが、KAPITALの柿シブジーンズとかいろいろ楽しんで良いはずですよね。ではでは、失礼します。
しんのすけ
2021/08/08 21:07 URL 編集返信お疲れ様です。マドンナに渡辺美里の着用姿、見てみたいです。
柿渋染めジーンズ、検索してみました。トープ色の渋いジーンズの画像を見て、ああ、こういうのも面白いなぁ・・と感じました。
ヴィンテージに拘泥し過ぎずに、色々な製品に目を向けて、楽しんでいきたいな、と思います。
カッタウェイ
2021/08/08 22:01 URL 編集返信tei-g
2021/08/09 21:29 URL 編集返信凄まじい流行でしたものね。
とにかく、斬新でインパクト大でした。
カッタウェイ・カラー
2021/08/10 05:31 URL 編集返信1980年代当時、ジーンズのトレンドはリーバイス、リーといった米国老舗メーカーから、クローズド、ジルボー、ボールなどの欧州新興メーカーへシフトしていきました。ストーンウォッシュ加工はジルボーが最初だったかと。欧州メーカーの老舗?としては70年代からフィオルッチがありましたが。少し短めの裾が細いボールとか新鮮でしたよ。ペダルプッシャーとか。
80年代前半にはベルボトムというか、フレア系のパンツはファーラー以外にもリーバイスの517、646、コーデュロイ中心にブッシュパンツも人気ありました。ウエストコースト系というかライトニングボルト系というかサーファー中心ですが、その客層が欧州メーカーへ移って行った感じでした。
どちらかというと米国メーカーのウォッシュ系は最初からダサい感じだったと記憶しています。
あの頃、大学生協で5800円で売ってた66後期の501や1万円ちょいだったフランス製スタンスミス、タイムマシーンでまとめて買い付けに行きたいです。
ピロ吉
2021/08/16 21:31 URL 編集返信コメントありがとうございます。クローズド、ジルボー、ボール・・なるほど,
80年代のジーンズの変遷を理解するには、老舗米国系だけではなく、振興の欧州メーカーの存在が重要だったのですね。
ボールのひし形のマークは何となく覚えています。クローズド、ジルボーは知りませんでした。いただいたコメントから、ファッションはやはり文化の一部で、全体的なムーブメントのようなものを理解していないと分からないことが沢山あるのだな、と感じました。ありがとうございました。
カッタウェイ
2021/08/16 22:52 URL 編集返信