学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の決裁文書改ざんを苦に自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻が、改ざんを指示した佐川宣寿(のぶひさ)・元理財局長(64)に損害賠償を求めた訴訟は27日、大阪地裁(中尾彰裁判長)で結審した。この日行われた尋問で、妻雅子さん(51)は「私は真実が知りたい」と佐川氏らに改ざんの経緯を説明するよう求めた。判決は11月25日。
雅子さんは法廷で、改ざんを強いられた2017年2月26日以降、赤木さんが精神的に追い詰められていった様子を語った。赤木さんは「内閣が吹っ飛ぶようなことをした」などと後悔を口にし、日ごとに顔色が悪くなった。うつ病と診断され、自殺を止めようとする雅子さんに大声を出して抵抗した。「地獄のような日々だった」と振り返った。
国は21年12月、雅子さん側の賠償請求を全面的に認める「認諾」の手続きを取り、国に対する訴訟を終結させた。雅子さんは、この日も「不当な手口だ。夫は2度殺された」と国の対応を改めて批判。佐川氏本人に対する尋問を認めなかった中尾裁判長に対しても、「(森友学園問題の)『再調査の必要はない』と言う政治家と同じだ」と憤った。
佐川氏側は、最高裁の判例を挙げ、公務員個人は職務中の不法行為の責任を負わないと反論している。佐川氏はこれまで一度も出廷せず、雅子さんは「改ざんの経緯を話してほしかった。せめて夫に線香の一本でもあげてほしい」と訴えた。
さらに、参院選の街頭演説中に銃撃を受け死去した安倍晋三元首相の国会答弁が改ざんのきっかけになったと主張。「黒い疑惑のまま国葬にされるのは安倍氏本人も望んでいないと思う。私は真実が知りたいです」と尋問を締めくくった。
雅子さんは閉廷後、報道陣の取材に応じ「真実を知りたくて裁判を起こしたのに、残念でたまらない」と述べ、国や佐川氏に対し、訴訟以外の場で説明するよう求めた。【山本康介】