夢「…あ、でもこれ触ると……どうしよう」

　シャリアをよくみるといつも身に着けている長手袋をしていない
そうなると迂闊に結晶に触ればそこから蝋化してしまうかもしれない

夢「とりあえず一旦戻っ…れないんだよねそうだった、んー…」

　　ザバァッ

　一人自問自答している夢雪、再び水音が洞窟内に響く

夢「わっ、今度はなに！？…っさっきの水触手！」

　現れたのは先ほど凍らせたのと同様に水でできた触手

夢「何回きても同じなんだから[氷の槍]Ice Spear!」

　再びアイススピアで凍結させ砕いてく、しかし今度は一本砕けばまた新しく、砕けばまたと何本も襲い掛かってくる

夢「んっこの…っ、キリがない…もうこうなったらまとめて[ISCC4]Ice SpearContinuous casting４！これで…きゃっ！」

　アイススピアの４重詠唱でまとめて凍らせようとしたが、詠唱が長い多重詠唱の影響でスキができた夢雪は触手に弾き飛ばされ、川の中へと落とされてしまった




夢「っと、でも詠唱キャンセルされてないからこれでおわ…ぁあ！」

　４つの氷の槍を放とうとした時、自分が今いる場所の不味さに気がつく

夢「あ、あ…脚が蝋になって……ひゃあ！？」

　蝋化の水に膝から下が浸かってるのだからそのはず、夢雪の脚は服ごと真っ白な蝋と化していた
そして、その事に動揺している夢雪の右腕を触手が呑み込み、魔法を放つ瞬間の手つきのまま蝋に変えてしまった




夢「っ…でも撃てるだけ撃ってやるっ、いけぇ！」

　４つの氷槍はコントロールされることなくただ射出される、それは触手には当たらずにただ壁に突き刺さっただけに終わってしまう


夢「や…なに、何する気？」

　触手が動けない夢雪の服に触れると青い服は真っ白な蝋に変えられてしまった




夢「……ちょ、な！？」

　硬く蝋化した服が今度はドロドロと溶け出し、夢雪の体をコーティングするようにして再び固まった




夢「うぅ…こんな半端な格好で……え、うそ…そんな――」


・
・・
・・・




夢「………」

　身動きが取れない夢雪は体を水触手に弄繰り回され、全身が蝋になってしまった、そして


　バキ…バキバキッ




　ドロドロに固まった服が音を立てて砕け落ち、夢雪は裸の蝋人形となってしまった


　ピキィ…パキッパキキ


　蝋とは違う高い音が洞窟内に響く、それは夢雪が放った四つの氷の槍の影響によって凍りついていく湖から鳴り響いていた

水触手はそれに気がつき暴れるが、冷気によってだんだんと凍っていく


　バゴッ！


　暴れまわっていた触手のひとつが夢雪の体に直撃し、蝋の胴体はその衝撃で砕け散り川に落ちた上半身も衝撃で砕けてしまい、そのままゴロゴロと流れていく

　洞窟内には彩の蝋人形、川底に沈んだ夢雪の欠片、そして結晶に封入されたシャリアと巨大な氷の触手が静かに佇んでいる